「アンジェ、”シエスタ”の時間はおしまいだぜ」 艶やかな声に導かれて目を開けると、既に夕日が差し込んできていた。 アリオスはシャワーを浴びて来たばかりのようだ。 沈む夕日に肌を晒したくなくて、アンジェリークは肌をシーツで隠すようにして躰を起こした。 「少し昼寝をするのもいいもんだろ?」 「うん。午後までの疲れと眠気を取ってくれるものね」 アンジェリークは柔らかく笑うと、ベッドからそのまま出た。 「島の夜は長いんだからな。たっぷりと楽しもうぜ」 「もう・・・」 艶やかな返事をした後、アンジェリークはバスルームへと飛び込む。 まんざらではないと思いながら、アリオスの手によって艶やかに光る肌をシャワーによって更に磨きをかけた。 夕方のディナー用に買ったサマードレスを身に纏い、栗色の髪を簡単に上げる。 色付きのリップで仕上げれば、艶やかに仕上がった。 「アリオス、準備出来たよ」 アリオスの視線が全身をゆっくりと彷徨う。 そのクールな眼差しには情熱が深く宿っていることを、アンジェリークは知っている。 「今夜はフラメンコが楽しめるレストランに連れて行ってやるよ」 「うん! 有り難う」 アリオスの視線が、品よくセクシーに開いた背中に注がれる。 「あっ!」 一瞬、アリオスの唇がアンジェリークの背中をかすめた。 「行こうぜ」 「・・・うん」 これみよがしに腰を抱かれて、アンジェリークは恥ずかしがりながら、アリオスの横をゆっくりと歩き始めた。 連れていってもらったレストランはホテルの中にあり、ロマンティックな雰囲気のテラス席もある。 案内して貰ったテラス席は、風がとても心地良くて、アンジェリークはうっとりした雰囲気になる。 席に着くまで女性たちの熱い視線を感じた。 横にいるアリオスの雰囲気が素晴らしく素敵で、アンジェリークは少しやきもちを妬いた。 男達の視線もアンジェリークに相当注がれていたのだが、もちろん彼女は気付かない。 アリオスが腰に回す腕の力が強くなったとしてもである。 「・・・みんな女の人はアリオスを見てるわ」 「んなもんはどうでもいい。俺はおまえに見られたらそれでいい。おまえこそ、くそいやらしい男にいっぱい見られているんだからな。俺のもんだって誇示しねえとな」 アリオスは更に強く腰を抱きながら、予約席に向かった。 出される料理はどれも美味しい。やはり新鮮な魚介類のせいだろう。肉もまた豊潤な味わいだ。 ステージらしき場所にスポットライトがついた。 「フラメンコショーだぜ」 「うん。本格的なやつね」 アンジェリークは楽しみとばかりに、ステージに注目をしている。 ステージが始まり、アンジェリークは意識をステージに移していく。 情熱的なダンスに心が熱くなるような気がした。 ダンサーは客席に下りてきて、絡んでくる。 「こっち来るよ」 「あ〜?」 艶やかなダンサーはアリオスだけを見つめ、まっすぐとやって来た。 「あのダンサー、アリオスだけを見てる」 「関係ねえ」 アリオスは情熱的な視線にも、あくまでクールだ。 だが、アンジェリークは気が気でなかった。 ダンサーはアリオスの前までやってくると、躰を擦りあわせるように踊っている。 アンジェリークはそれがとても嫌で堪らなくて、無視するように食事をし続けた。 曲が終わった後も、ダンサーはずっとアリオスのそばにいる。 「次の曲、ご一緒にいかがですか?」 ダンサーは艶やかな笑みを浮かべながら、アリオスの席にすり寄るようにして言う。 ちらりと交戦的な眼差しをアンジェリークに送るので、彼女は憤慨した。 アリオス、どうか彼女の申し出を受けないで・・・。 そう思わずにはいられない。アリオスの口角が僅かに上がる。 「・・・悪ィが、俺はこいつ以外の女とは、何も踊る気にならねえんでな」 アリオスはあっさりきっぱりと言うと、アンジェリークを抱き寄せた。 「あっ・」 ダンサーの顔色が明らかに変わる。 強張るダンサーに、アリオスは目線で指示をした。 ”向こうに行け”と。 ダンサーはしょうがないとばかりに一礼をすると、次のターゲットに向かっていった。 アンジェリークは飛び上がるほど正直嬉しい。 「アリオス、良かったの?」 「ああ。構わねえ」 アリオスはアンジェリークを見つめると、そっと耳打ちをした。 「”情熱のダンス”フラメンコは、おまえとなら踊ってもかまわねえぜ?」 「アリオス・・・」 真っ赤になりながらもアンジェリークは頷く。 「デザート、食っちまったらとっとと部屋に戻るからな」 「どうして?」 「おまえとフラメンコを踊るためだ」 アリオスは艶やかに微笑むと、アンジェリークの手をそっと握った。 デザートも早々に食べ、第二部のショーの前にふたりはレストランを出る。 「予定変更だ。おまえとダンスを楽しまねえといけねえからな」 手をしっかりと繋いで、ふたりはホテルの部屋に戻った。 部屋に入るなり、アンジェリークは背後から抱きすくめられる。 「あっ、アリ・・・」 「おまえのやきもちなんて可愛いもん見せてもらったからな。たまらなくなっちまったぜ」 アリオスは首筋に唇を宛てながら、アンジェリークを抱き締めて放さない。 少し開いた背中に、アリオスは唇を丹念に這わせてきた。 「あっ・・・、フラメンコを踊るって言ったじゃない…」 「”腰のフラメンコ”だぜ、アンジェ。俺と一緒に情熱的にダンスしようぜ?」 「あっ、ああんっ!」 ドレスをこのまま破いてしまいたくなるほどの欲望を感じながら、アリオスはなんとかそれを抑え込む。 ドレスを脱がす度に、白く艶やかな肌が露出し、アリオスは欲望をひどく感じた。 「アリオス・・・っ!!」 むき出しになった胸を背後から揉みこまれて、アンジェリークはとうとう躰をアリオスに預ける。 「すげえいろっぽいぜ・・・。我慢出来ねえぜ・・・」 アリオスは息を乱しながら、アンジェリークのドレスを脱がせた。 はらりと床に落ちる姿は本当に美しい。 「綺麗だぜ、アンジェ。おまえは宇宙一のダンサーだ」 「あっ、んんっ!!」 アリオスの指が下着をかき分けて、熱い場所に触れる。 甘い恍惚としたダンスのプロローグが始まった。 |
コメント 「ラブ通」最終号の表紙から生まれたエロです。 アリオスさん(笑) あんた「フラメンコ」と決め込んで、何やってるんだ!? まだ甘い婚前旅行は続く(笑) |