La Isla Bonita

3

「アンジェ、”シエスタ”の時間はおしまいだぜ」
 艶やかな声に導かれて目を開けると、既に夕日が差し込んできていた。
アリオスはシャワーを浴びて来たばかりのようだ。
 沈む夕日に肌を晒したくなくて、アンジェリークは肌をシーツで隠すようにして躰を起こした。
「少し昼寝をするのもいいもんだろ?」
「うん。午後までの疲れと眠気を取ってくれるものね」
 アンジェリークは柔らかく笑うと、ベッドからそのまま出た。
「島の夜は長いんだからな。たっぷりと楽しもうぜ」
「もう・・・」
 艶やかな返事をした後、アンジェリークはバスルームへと飛び込む。
 まんざらではないと思いながら、アリオスの手によって艶やかに光る肌をシャワーによって更に磨きをかけた。
 夕方のディナー用に買ったサマードレスを身に纏い、栗色の髪を簡単に上げる。
 色付きのリップで仕上げれば、艶やかに仕上がった。
「アリオス、準備出来たよ」
 アリオスの視線が全身をゆっくりと彷徨う。
 そのクールな眼差しには情熱が深く宿っていることを、アンジェリークは知っている。
「今夜はフラメンコが楽しめるレストランに連れて行ってやるよ」
「うん! 有り難う」
 アリオスの視線が、品よくセクシーに開いた背中に注がれる。
「あっ!」
 一瞬、アリオスの唇がアンジェリークの背中をかすめた。
「行こうぜ」
「・・・うん」
 これみよがしに腰を抱かれて、アンジェリークは恥ずかしがりながら、アリオスの横をゆっくりと歩き始めた。

 連れていってもらったレストランはホテルの中にあり、ロマンティックな雰囲気のテラス席もある。
 案内して貰ったテラス席は、風がとても心地良くて、アンジェリークはうっとりした雰囲気になる。
 席に着くまで女性たちの熱い視線を感じた。
 横にいるアリオスの雰囲気が素晴らしく素敵で、アンジェリークは少しやきもちを妬いた。
 男達の視線もアンジェリークに相当注がれていたのだが、もちろん彼女は気付かない。
 アリオスが腰に回す腕の力が強くなったとしてもである。
「・・・みんな女の人はアリオスを見てるわ」
「んなもんはどうでもいい。俺はおまえに見られたらそれでいい。おまえこそ、くそいやらしい男にいっぱい見られているんだからな。俺のもんだって誇示しねえとな」
 アリオスは更に強く腰を抱きながら、予約席に向かった。
 出される料理はどれも美味しい。やはり新鮮な魚介類のせいだろう。肉もまた豊潤な味わいだ。
 ステージらしき場所にスポットライトがついた。
「フラメンコショーだぜ」
「うん。本格的なやつね」
 アンジェリークは楽しみとばかりに、ステージに注目をしている。
 ステージが始まり、アンジェリークは意識をステージに移していく。
 情熱的なダンスに心が熱くなるような気がした。
 ダンサーは客席に下りてきて、絡んでくる。
「こっち来るよ」
「あ〜?」
 艶やかなダンサーはアリオスだけを見つめ、まっすぐとやって来た。
「あのダンサー、アリオスだけを見てる」
「関係ねえ」
 アリオスは情熱的な視線にも、あくまでクールだ。
 だが、アンジェリークは気が気でなかった。
 ダンサーはアリオスの前までやってくると、躰を擦りあわせるように踊っている。
 アンジェリークはそれがとても嫌で堪らなくて、無視するように食事をし続けた。
 曲が終わった後も、ダンサーはずっとアリオスのそばにいる。
「次の曲、ご一緒にいかがですか?」
 ダンサーは艶やかな笑みを浮かべながら、アリオスの席にすり寄るようにして言う。
 ちらりと交戦的な眼差しをアンジェリークに送るので、彼女は憤慨した。

 アリオス、どうか彼女の申し出を受けないで・・・。

そう思わずにはいられない。アリオスの口角が僅かに上がる。
「・・・悪ィが、俺はこいつ以外の女とは、何も踊る気にならねえんでな」
 アリオスはあっさりきっぱりと言うと、アンジェリークを抱き寄せた。
「あっ・」
 ダンサーの顔色が明らかに変わる。
 強張るダンサーに、アリオスは目線で指示をした。
 ”向こうに行け”と。
 ダンサーはしょうがないとばかりに一礼をすると、次のターゲットに向かっていった。
 アンジェリークは飛び上がるほど正直嬉しい。
「アリオス、良かったの?」
「ああ。構わねえ」
 アリオスはアンジェリークを見つめると、そっと耳打ちをした。
「”情熱のダンス”フラメンコは、おまえとなら踊ってもかまわねえぜ?」
「アリオス・・・」
 真っ赤になりながらもアンジェリークは頷く。
「デザート、食っちまったらとっとと部屋に戻るからな」
「どうして?」
「おまえとフラメンコを踊るためだ」
 アリオスは艶やかに微笑むと、アンジェリークの手をそっと握った。
 デザートも早々に食べ、第二部のショーの前にふたりはレストランを出る。
「予定変更だ。おまえとダンスを楽しまねえといけねえからな」
 手をしっかりと繋いで、ふたりはホテルの部屋に戻った。
 部屋に入るなり、アンジェリークは背後から抱きすくめられる。
「あっ、アリ・・・」
「おまえのやきもちなんて可愛いもん見せてもらったからな。たまらなくなっちまったぜ」
 アリオスは首筋に唇を宛てながら、アンジェリークを抱き締めて放さない。
 少し開いた背中に、アリオスは唇を丹念に這わせてきた。
「あっ・・・、フラメンコを踊るって言ったじゃない…」
「”腰のフラメンコ”だぜ、アンジェ。俺と一緒に情熱的にダンスしようぜ?」
「あっ、ああんっ!」
 ドレスをこのまま破いてしまいたくなるほどの欲望を感じながら、アリオスはなんとかそれを抑え込む。
 ドレスを脱がす度に、白く艶やかな肌が露出し、アリオスは欲望をひどく感じた。
「アリオス・・・っ!!」
 むき出しになった胸を背後から揉みこまれて、アンジェリークはとうとう躰をアリオスに預ける。
「すげえいろっぽいぜ・・・。我慢出来ねえぜ・・・」
 アリオスは息を乱しながら、アンジェリークのドレスを脱がせた。
 はらりと床に落ちる姿は本当に美しい。
「綺麗だぜ、アンジェ。おまえは宇宙一のダンサーだ」
「あっ、んんっ!!」
 アリオスの指が下着をかき分けて、熱い場所に触れる。
 甘い恍惚としたダンスのプロローグが始まった。
コメント

「ラブ通」最終号の表紙から生まれたエロです。
アリオスさん(笑)
あんた「フラメンコ」と決め込んで、何やってるんだ!?
まだ甘い婚前旅行は続く(笑)



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