BE MY WIFE

Chapter17


 体の奥までじんわりと熱くて、アンジェリークは目を覚ました。
 手首のネクタイは外されて、愛するアリオスがしっかりと抱き締めてくれている。

 確かに、”愛している”って言ってくれた・・・。
 信じていいの? アリオス・・・。

 喉が少し乾いた。水を飲むためにベッドから降りようと思い、ふとその周りを見る。
 アリオスの手によって無残な姿になったワンピース、アリオスのスーツなど、あらゆる場所に衣類が散っている。
 激しさを象徴しているかのようで、苦笑してしまう。
 衣類の片付けも兼ねて、ベッドから降りようと身動ぎすると、アリオスに強く抱きすくめられた。
「あっ、アリオス」
「どこにも行くな」
「服を拾ってハンガーに掛けようと思っただけなの・・・。少し喉乾いたし」
 アリオスは少しだけ腕の力を緩め、アンジェリークの首筋に口づける。
「んっ、アリオスっ・・・」
「俺も手伝ってやる」
 ふたりでベッドを降り、アンジェリークがローブに手を掛けようとしたものの、アリオスに制された。
「ふたりきりだから、いらねえだろ?」
「…あっ、うん・・・」
 本当は恥かしいけれども、アリオスなら恥じらいの中にも姿を晒せる。
 生まれたままの姿で、衣類を拾い上げ、アリオスのスーツをクロゼットに掛ける。
 後のものはランドリーケースに入れて、部屋を出て左手の脱衣室にあるランドリー籠に入れた。
 裸のまま、キッチンに入るのは恥ずかしかったが、アリオスと一緒に冷たい飲み物を取って、部屋に戻った。
 手を引かれて再びベッドの中に潜り込む。
「後でシャワーを一緒に浴びような?」
「うん・・・」
 少し喉を冷たいもので潤す。
 アンジェリークはミネラルウォーター、アリオスはビールである。
「アンジェ、判ってると思うが、俺はおまえを離さねえからな。ずっとそばに置いておく」
「うん・・・」
 恥ずかしそうにアンジェリークは、頷くとアリオスの体に小さなぬくもりをすりつけた。
「俺にはもうおまえ以外はいらねえからな。おまえは俺の唯一無二の女だ」
 ぎゅっと肩を抱かれ、アンジェリークはこくりと頷いた。
「大好きよ」
「”大好き”か・・・。俺なら”愛している”だぜ?」
「アリオス」
 広い胸に顔を埋めながら、アンジェリークは甘えるように囁く。
「さっきね、言ってくれた言葉は本当?」
「ああ。本当だ。もう一度言って欲しいか?」
「うん」
 素直にこくりと頷く彼女が可愛くて、アリオスは再び押し倒したい衝動に駆られる。
 だがお互いに飲み物を持っているので、何とかしなければならなかった。
 取りあえず、アンジェリークの飲み物を取り上げる。
「あっ・・・」
 ぎゅっと強く抱き締めた後、そのままアリオスはアンジェリークをベッドに押し倒す。
 組み敷いたところで、アリオスは情熱的な眼差しで、アンジェリークを見つめた。
 それだけでもアンジェリークの瞳は潤む。
「愛してる、おまえだけだ、アンジェ・・・」
「アリオスっ!」
 嬉しくて泣き出したくなる。
 涙がこぼれ落ちるほど、アリオスを愛している。
 そのまま深くくちづけられて、アンジェリークはそれに応えた。
 甘くも激しいキスの後は、強い抱擁が待っている。
「おまえを一目ボレだったんだ。レイチェルの家に遊びにきていたおまえをな。すげー可愛かった」
「アリオス・・・」
 恥ずかしそうにした後、ぎゅっとアリオスに抱き付く。
 「私もあなたに夢中だもの・・・。一目ボレだったもの・・・」
 最後の声が甘く消え、アリオスはくすりと笑った。
「おまえは最高に可愛いぜ?」
「あっ・・・」
 ぎゅっと抱き締めた時、不意に苦しげな顔をアンジェリークはした。
「アンジェ?」
「アリオス、ちょっと気持ち悪い・・・」
 少し息を荒くしている彼女を、アリオスは慌てて体を離す。
「大丈夫か!?」
「うん、何だかへんなの」
 彼は、顔色の悪いアンジェリークを抱きおこして、アリオスは額をつけてみる。
「ねつっぽいみてえだな? 少し横になれ?」
「うん」
 アリオスはベッドから出ると、アンジェリークの下着とネグリジェをクロゼットから出し、妻に差し出す。
「これを着ておけ。すぐに医者を呼んでやる」
「うん、有り難う」
 素直に受け取ると、アンジェリークは袖を通し始め、アリオスも手早く服を着る。
 本当はある理由から体を離すのは辛かったが、アンジェリークの身体のためなら、我慢できるような気がした。
 電話をしてかかりつけの医者を呼ぶ。
 アンジェリークの主治医は女医で、これは、アリオスがアンジェリークの肌をどんな男にも晒したくは無かったからだ。
 医者が来る間、愛し合った痕跡を無くすために、アリオスはシーツなどをきれいに替える
「ごめんね、アリオス」
「大丈夫だ。おまえの躰のほうが心配だからな?」
「うん、有難う・・・」
 ”雨降って地固まる”-------
 ことわざどおりに、以前よりも仲良くなったふたりであった。

 暫くして、主治医がやってきた。
 彼女は、寝室でアンジェリークにこと細かく診察と問診した後、納得したとばかりに頷く。
「明日正確に検査をしますから、朝一番に産婦人科に来てくださいね」
「おい、アンジェはどこか悪いのか!?」
 心配の余り表情を曇らせるアリオスに、医師は穏やかな微笑を浮かべた。
「いいえ、ただちゃんと検査してみないといえませんが、
恐らく、奥様、妊娠されていますよ」

 赤ちゃん…

 アリオスとアンジェリークはお互いの顔を見合す。
 次の瞬間、ふたりは、医者の前にも拘らず、しっかりと抱き合った。
「よかったな? 嬉しいぜ? おまえの子供なんて最高だ」
「アリオス、私も嬉しい・・・」
 もう既に二人だけの世界。
 ”二人のために世界がある”。
 医師は苦笑すると、「明日の検査の結果がでないとわかりませんよ?」と、笑っていた。

 赤ちゃん・・・。
 本当だったら、これ以上に幸せなことは無いわ・・・

TO BE CONTINUED…

コメント

「顔を知らないままに、アリオスと結婚をしたアンジェリークの物語です」
もう少しです!!!