「も〜いくつ寝ると〜、クリスマス〜」 音を外して歌うアンジェリークに、アリオスは苦笑する。 「そんな歌聞かされちゃ、モミの木も萎えるぜ?」 「もう! せっかく良い気持ちで歌ってたのに〜!!」 頬を膨らませて怒る姿は、とてもではないが新宇宙の女王だとは思えない。 可愛いと、アリオスは思う。 まったくメロメロである。 沢山の男達が彼女を良く思っていた中で、アリオスはがっちりとアンジェリークの心を奪い、ついでに身体も(笑)奪って、今や、新宇宙の女王の旦那になってしまった。 アンジェリーク争奪戦は激戦だったこともあり、彼は彼女へをとても大切に思っている。 それもメロメロを助長させている原因だが。 彼女があまりにも可愛いので、からかってしまうどうしようもないところもある。 「ま、俺は萎えねえけどな? おまえの歌を聞けば、元気満開! 楽しませてやれるぜ?」 ニヤリとアリオスは良くない笑みを浮かべると、アンジェリークは途端に真っ赤になった。 「アリオスのバカ〜!!!」 宥めるように掠めるキスを与えられて、アンジェリークは怒るのを止めた。 「アリオス」 アリオスはやっぱり可愛いと思う。 「クリスマスの準備に、アルカディアに行ってくるな?」 「え!? 先週も一緒に行ったじゃない〜!!!」 アンジェリークは、自分も行きたいとせがんだ。 「先週頼んでおいたのを取りに行くだけだ。クリスマスの間だけ、時間軸が一緒だからな?」 「どこ行くの?」 「”例の店”!」 途端にアンジェリークは耳まで赤くする。 そこは、ふたりがまだアルカディアにいて「秘密な関係」だった頃、良く通っていた、天使の広場の路地裏にある店である。 「ちゃんと良いコにしてたら、ちゃーんと可愛がってやるからな!」 ニヤリと微笑まれて、アンジェリークは真っ赤になって俯いてしまう。 「可愛がる」というのは、何かと判っているからである。 「いってくる」 「いってらっしゃい!」 アンジェリークはアリオスを見送った後、恥ずかしそうに微笑む。 どんなクリスマスグッズが待っているかしら? 実は期待している天使なのであった。 「嫌も嫌よも良いのうち」を地で行く天使なのであった。 アリオスは空間移動を終えて、アルカディアへとやってきた。 行き先はもう決まっている。 かつては行きつけだった「大人のお店」。 今は、代替わりもして、すっかり「老舗」となっている。 まさか、この宇宙の守護聖が頻繁に通っているとは、誰も知るよしもない。 この広い宇宙で、神聖なる女王が唯一肌を許している男性。 彼が率先して、この店のグッズを作っていることは、誰も知らない。 アリオスは、店に入るなり、予約カウンターに向かった。 「予約していたアリオスだが」 アリオスが言うと、すぐに店員が出してくれた。 「25日のサプライズプレゼントも入れておきましたので」 「サンキュ」 アリオスは綺麗に包装されたものを受け取った。 守護聖の給料の五日分をつぎこんだものを、満足そうに持つ。 アリオスはすぐに帰ろうとしたが、露店に出てるイヤリングについ目がいった。 これ、アンジェに似合いそうだな・・・。 買っておいてやろうかな・・・。 「これ、包んでくれねえか?」 「はい、あんちゃん! 恋人へのプレゼントかい?」 「いや、俺の嫁さんにだ。綺麗に包めよ」 アリオスは視線で威嚇している。 その視線に負けて露店店主は、出来る限りに丁寧に、包みアリオスに手渡した。 「はい、どうぞ!」 「サンキュ!」 受け取ると、アリオスは大事そうにそれをジャケットに直した。 ガラスで出来た美しい羽をモチーフにしたイヤリングをした彼女を見たくて、アリオスは家路に急ぐ。 力を使い、いち早く天使に逢うために。 聖地の宮殿に戻るなり、アンジェリークは笑顔で出迎えてくれた。 「おかえり」 「ただいま」 甘いキスを交わして、二人は手を繋いでダイニングへと向う。 「今夜のおかずはね、アリオスの好きなラムシチューよ」 「サンキュ」 彼のキスを、アンジェリークは笑いながら受ける。 普段は女王としての責務が忙しいせいか、彼には何もして上げられない。 だったらせめて、休みの日ぐらいはと、休みの日だけは、アンジェリークはアリオスのおさな妻に変身する。 「あ、おみやげだ」 「何?」 期待に胸を膨らませる彼女に、アリオスは嬉しそうに笑った。 「露天で買ってきた。おまえに似合うと想って」 掌に、丁寧に包まれた包み紙を載せられて、アンジェリーク溢れ視差のあまり潤んだ瞳を彼に向ける。 「開けていい?」 「もちろんだ」 まるで子供のようにアンジェリークは包み紙をはがし、その中から現れた可憐なイヤリングに、思わず息を呑んだ。 藍rしいガラスで出来た羽根のイヤリング。 「可愛い…」 「だろ? おまえに似合うと想ってな。付けてくれよ?」 嬉しくて、アンジェリークは少し涙ぐみながら頷くと、イヤリングをつけてみた。 「似合う」 「ああ、最高だ」 「アリオスが選んでくれたからだわ…」 二人は笑いあって、再び唇を重ねあう。 何度も何度も、愛を確かめ合うようにキスを交し合った。 夕食、おふろと済ませて、二人はベッドへと入った。 二人だけのひめやかな時間が始まる。 「アンジェ、今日はこれを買いに行った」 そういって、アリオスはたくさん扉がある箱を枕元においた。 それは日付がうってあり、一日ごとに扉を開けるようになっている。 「何これ?」 「ああ、”アヴェント・カレンダー“といって、この日にちを書いてある所の窓に小さなプレゼントがを入っていて、毎日一つずつ明けていって、25日にはいいことがある」 アリオスの説明を耳にしながら、アンジェリークは興味深そうに箱を見ている。 「これ何入ってるの?」 「あ、見たいか?」 「うん!」 天使は何か楽しいものだろうと想像して、 期待に胸を膨らませる。 「これだ」 アリオスが扉を開けて取り出したのは、なんと超薄型スキンだった。 ……!!!!! 呆然として、アンジェリークはそれを見ている。 「これで毎晩やれるぜ?」 暫く、アンジェリークはそのスキンを見つめることしか出来なかった。 |