最強兵器・親父

前編


「お父さんに逢わせたい人がいるの・・・」
「なっ・・・!」
 はにかみながら話す娘アンジェリークに、レウ゛ィアスは言葉を失う。

 ”逢わせたい人”だと〜!!!
 アンジェの様子からして、男しか考えられん!!!
 男の影などないと思ってたのにぃぃぃ!!

 レウ゛ィアスの周りでブリザードと嵐が吹き荒れる。
「あの・・・お父さん?」
 アンジェリークが声を掛けようとしても、父はやさぐれモードが全開。
 いきなり仏壇にある、アンジェリークにそっくりな、今は亡き妻、エリスの遺影を抱き締めた。

 エリス、おまえがアンジェが産まれてすぐに亡くなってから十七年!!!
 ずっと男でひとつでアンジェを蝶よ花よと育ててきた!
 父一人娘一人で頑張ってきたのに〜!!!
 へんな虫がついては、困る!

「あ、あの〜、お父さん?」
 アンジェリークの何度かの呼び掛けで、レウ゛ィアスはようやく娘を見た。
「・・・担任のアリオス先生の家庭・・・訪問なんだけれど・・・」
 その瞬間、レウ゛ィアスの身体がぴくりと動いた。
「家庭訪問」
「うん。もうその時期よ」
 レウ゛ィアスは本当にほっとしたように、ようやく自分自身を取り戻た。
「一週間後だから、その日は開けておいてね?」
「ああ」
 ニッコリと微笑み、アンジェリークは父をとりあえずは安心させる。

 まさか・・・担任が恋人だってしれたら・・・、お父さんキレちゃうかも・・・。
 でもアリオスはお父さんに似て、とっても素敵な男性なのよ・・・。

 アンジェリークは、レウ゛ィアスとアリオスはきっとうまくいくと、甘い認識を持っていた。
 だがその甘さゆえに、大パニックが起こることなど、想像してはいなかった。

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 一週間後、アンジェリークは、担任であり恋人のアリオスを、自宅へと案内していた。
「父もあなたのこときっと気にいると思うの。あなたのことをきっと、弟か、息子だと思うわ」
「だったらいいがな」
 明るく話す恋人に、アリオスは本能で、違うと感じる。

 担任が手を出したって知ったら、普通、怒るって。

「あ、ここよ?」
 アンジェリークが指差した家に、アリオスは言葉を失う。

 お嬢だとは噂で聞いていたが、まさか、これほどだとはな・・・。

 アンジェリークの家は荘厳な造りになっており、門構えもしっかりとした豪邸だ。
 アンジェリークはインターホンを押して、誰か出るのを待つ。
 出たのは父レウ゛ィアス。
「おかえりアンジェ」
 以外にも若く魅力的な声に、アリオスは誰か屋敷の者だと思った。
「お父さん、先生がいらっしゃっているから・・・」
「判った、入ってもらえ!」
「うん」
 その瞬間、門が開く。

 父親だったのか。にしては若いな。

「行きましょう!」
「ああ」
 アンジェリークはアリオスの手を取ると、屋敷中へと導いて行く。
 それをモニターから見ていた父・レウ゛ィアスは、冷たい嫉妬で身体を燃やし尽くす。

 アンジェ!! 我以外の男と手を繋いでは行けないとあれほど、言っているのに!! アンジェ・・・!
 おむつも自ら変えてやり、熱が出れば看病をし、勉強もみてやったりした。我が全身全霊で育て上げた花だ。 あと最低10年は誰にもやらない!! アンジェと結婚するなら死ぬと言うなら、死ね!
 我のアンジェはへんなやつにはやらん!!

 父が一人エキサイトしているのを知らないアンジェリークは、アリオスを応接室に連れていった。
「お父さん」
「入れ」
 内心穏やかでないレウ゛ィアスであったが、そこは直隠しにして、娘を迎え入れる。
「先生も、入ってね」
「ああ」
 アンジェリークに促されて、部屋に入った瞬間、アリオスは表現しようのない悪寒を感じた。

 何だこの殺気!?

「お父さん、担任のアリオス先生!」
「ああ、ハジメマシテ」
「こちらこそハジメマシテ」
 二人はお互いの顔を見てはっとした。

 我の親戚でこんなヤツはいないが、似ているな・・・。

 アンジェのやつファザコン!?

「アンジェ、先生にお茶を出すように、ジョウ゛ァンニに言ってくれ」
 あくまで優しさと暖かさの含んだまなざしを、アンジェリークには向ける。
「判ったわ。先生もお父さんも待っててね! 」
 ニコッと愛らしく笑った彼女を、彼女を愛するふたりの男は、優しい表情で見送る。
 が、ドアが閉じられた瞬間、暖かな花園から荒野に世界は一転する。
 アリオスはレウ゛ィアスの冷たい視線にも、動揺しない。

 なんだこの親父・・・。人のこと威嚇しやがって。俺はそんなんじゃひるまねーよ。

「お嬢さんは学校でも大変優秀で、非の打ち所はありません」
「そうですか」
 返事をしつつも、レウ゛ィアスはあくまでも冷たい。

 あたりまえだ! 我が英才教育をしたんだ!! おまえなんかにアンジェは絶対に渡さない!

 そこはツンドラ気候。
 ブリザードが吹き荒れる。
「お待たせ〜」
 アンジェリークがやってきた瞬間、応接室は、地中海性気候にはや変わり。
「アンジェ、我の隣に座れ、ちゃんと先生の話を一緒に聞こう」
 "一緒に"という所を強調しながら、取りあえずアリオスが真面目に話をしている様子だったので、顔をしかめつつも、レヴィアスは話を聞いた。
「粗茶です〜」
 女装の家政婦ジョヴァンニがやってきて、アンジェリークの注文どおり、男性二人にはブラック、彼女にはミルクティを運んでくれる。

 何だ…。
 この化粧お化けは…

「有難うございます、ジョヴァンニさん」
 アンジェリークの例に、彼はウィンクをして戻っていった。
 アリオスの前に置かれたブラックコーヒーに、レヴィアスは目ざとくも気がついた。

 普通客が来ても、使う使わないにもかかわらず、ちゃんとシュガーとミルクは用意しているのに…。
 なぜない…
 ぐっとこみ上げてくる理不尽な嫉妬を押さえながら、レヴィアスは何とか娘に向き直る。
「アンジェ…、どうして、先生はブラックだと判ったのだ…?」
 その瞬間、娘の顔が一気に紅潮するのを、レヴィアスは見逃さなかった。
「…え…、あ・・・、私たちね…、付き合ってるの…」
 恥ずかしそうに言う、娘に、レヴィアスは心臓が止まる思いがする。

 何だとおおおおおおおおおおお!!!!!!!

 レヴィアスはその机をバンと叩き、アリオスの胸倉を掴み立ち上がらせる。
「おい!! 娘に手を出しやがって!」
 だがやられるだけのアリオスではない。
「突然、何をする!!! アンジェは俺と愛し合っている!!」
「何〜!!!」
 二人の自分が最も愛する男性二人が、戦争を起こそうとしている。
 アンジェリークは二人の顔を交互に見ておろおろするばかり。
「教師のくせに娘に手を出しおって!!!」
 レヴィアスの中で何かがはじける。
 彼はそのまま、星○徹よろしく、応接セットのテーブルを、一気にひっくり返す。
 その光景をみたアンジェリークの中の何かもはじける。
 親子だから当然といえば当然で。
「もう!!!!! 二人ともどうしてそうやって喧嘩するのよ!!! もう大嫌いよ〜!!!!!」
 アンジェリークが目いっぱいに叫ぶと、二人はぴたりと喧嘩を止める。
 だが、アンジェリークはそれだけでは収まらなくて。
「もう嫌い!!!」
 アンジェリークはそのまま泣きながら飛び出してゆき、似たものの男二人は呆然と部屋に残された-----

コメント

44444番のキリ番を踏まれたサミー様のリクエストで、
「レヴィアス父とアリオスのアンジェを取り合うバトルもの」です。
すみません、なんともヘボ衣装もないもんを書いてしまいました。
私はレヴィアス様大好きです!!!
信じてください!!!(切実)