突然、控え室に連れていかれ、サラは何が起こったか判らずにいた。 アンジェリークはただニコニコと笑っているだけで、サラは不安そうに彼女を見つめる。 「心配しないでね? 私に任せて」 力強い言葉と笑顔に、サラは頷かずにはいられなかった。 「じゃあ、皆様よろしくお願いします」 アンジェリークの合図に、ひとりの美容師が入ってくる。 彼女はサラも良く知っている美容師だった。 「よろしくお願いします」 アンジェリークが言うと、本当に嬉しそうに美容師は頷いた。 「はい。サラ、あなたを最高に綺麗にするからね」 「あ、はい」 何が起こっているか判らず、サラは任せられるだけ任せることにした。 まずは汚れを綺麗に取られた後、ふっくらと肌がなるように、マッサージなどが施される。 アロママッサージのせいか、とても心地好い。 気持ち良さに浸った後は、今度は念入りに基礎化粧を施され、髪のセットに入った。 ここまでくると流石のサラも何をされているか、ピンとくる。 「まさか、アンジェリーク」 「いいから、今日は綺麗にしましょうね?」 アンジェリークの言葉に、ただサラは頷くしかなかった。 髪のセットと化粧が終わると、今度は、奥の部屋に連れていかれる。 そこには、純白のウェディングドレスが置かれ、サラは言葉がないままアンジェリークを見つめた。 その頃、アリオスは、ミッチェルの運転手であるパトリックを控え室に呼び、タキシードに着替えさせていた。 「このまま俺が合図をしたら出てきてくれ?」 「はい」 パトリックは緊張した面持ちで直立不動になっている姿は、「七五三」のようである。 それに微笑ましく笑いながら、アリオスは時計をじっと見つめた。 アリオスとアンジェリークは上手くしてくれるんだろうか・・・。 ほんの少し不安になるのを感じながら、リックはそわそわとしていた。 時計を見るとそろそろ時間である。 運命を告げるノックが部屋に響き渡った。 「時間です、リックさま」 メイドが呼びにきて、タイムリミットであることを告げた。 結婚式は予定通りに計画的に始まってしまった。 リックもミッチェルも嬉しそうには決して見えなかった。 リックは、父親と共にやってきたミッチェルの腕を取り、祭壇へと進む。 牧師はゆっくりと頷くと、参列者を見つめる。 「リック、ミッチェル、両名の婚姻に付いて意義のある方は、神の御前で申し立てて下さい」 水を打ったような静けさに、机を叩く音が響き渡った。 音を立てたのはアリオス。 誰もが彼を注目し、少し驚いているようだ。 だが流石の牧師は少しも驚いてはいなかった。 「そこの銀色の髪の方、何かございますか?」 「ああ」 牧師に指名されて、アリオスはしっかりと頷く。 「このふたりは愛し合っちゃいねえ・・・。お互いに違う奴を愛してる」 アリオスの良く通る精悍な声がホールに響き渡る。 リックとミッチェルは一瞬表情を切なく曇らせていた。 「それは本当なのですか?」 牧師のゆったりとした言葉に二人は顔を見合わせた後、頷いた。 教会じゅうがどよめきに包まれていく。 特にふたりの両親は卒倒しそうな勢いだ。 「アンジェ!」ア リオスが合図を送ると、ゆっくりと重厚な扉が開いた。 そこにいたのは、美しい花嫁姿のサラと精悍なタキシード姿のパトリックだった。 リックとミッチェルはお互いに息を呑んだ後、意中の相手を見つめる。 「サラ・・・、綺麗だ」 「パトリック・・・」 サラは意を決したようにアンジェリークに頷くと、勇気をかき集めて愛する男性を見つめた。 「リック! まだ私はあなたを愛しているの・・・! もし、許されるなら・・・」 サラは大きな声で思いの丈をただ一途に伝えている。 「許すもなにも、サラ!」 泣きそうな表情の彼女に頷くと、リックはサラに向かって駆ける。 「愛してる、サラ!」 「私もリック!!」 二人はしっかりと抱き合い愛を確かめあった。 「ミッチェル!! 身分なんて何も関係ねえんだ! 俺はおまえを愛してる。それだけだ!」 今度はパトリックの番だ。 彼もサラに負けないように、大きな声を張り上げた。 気が弱くてそんなことが出来る彼ではなかったのに、今、ただミッチェルのためだけに勇気をふり絞ってくれている。 それが彼女には堪らなく嬉しかった。 「パトリック・・・! 私も愛しているわ!」 泣きながらミッチェルはに近付き、彼もまた駆け寄ってくる。 ふたりもまたしっかりと強く抱き合った。 「以上、二組の結ばれなければならないカップルです」 アンジェリークは女王らしく凛と宣言する。 其の神々しさに誰もが圧倒され、教会は荘厳な雰囲気に包まれる。 「------異存のある方はいらっしゃいますか?」 穏やかに微笑みながら牧師は言い、誰も異存を唱えるものはもういなかった。 リックとミッチェルの両親ですらもである。 完全に女王アンジェリークの聖なる威厳に飲み込まれた形となった。 「-------では、結婚式の再会を、牧師様?」 アンジェリークの言葉を受けて、牧師は穏やかに微笑んだ。 「-------では、リックとサラ、パトリックとミッチェルの結婚式を始めます------」 アリオスとアンジェリークは微笑みあうと、後ろでじっと結婚式を眺める。 「よかったわね?」 「ああ」 二人は顔を見合わせて笑いあう。 二組のカップルが誓いのキスをした瞬間、二人も愛が籠ったキスを深く交わした------- フラワーシャワーにも参加し、二人は、素晴らしい二人のカップルの門出を見送った。 結婚式終了後の二組のカップルが、本当に幸せそうに二人の元を尋ねてくる。 「本当にどうも有難うございました!!」 代表してサラは礼を言い、ミッチェルと二人でアンジェリークにブーケを差し出す。 「さっき二人で、花束を半分にして作ったんです。 「どうも有り難う…」 アンジェリークは幸せそうに花束を受け取ると、其の花の香りを幸せそうにかいだ。 「とってもいいにおいだわ・・・。 本当にどうも有り難う・・・」 「あなたたちのような素敵な夫婦に、俺たちもなって見せます」 今度はリックが幸せそうに、そして決意を秘めるように二人を見つめてしっかりと言った。 「期待してるぜ? まあ、俺たちの年季にはかまわねえだろうけど?」 「もう、アリオスってば」 彼女は真っ赤になりながら、そのツッコミを入れる。 二人のアツアツぶりに、新婚の二組ですら当てられそうだ。 「じじゃあ、そろそろ行きますね! 皆様お幸せに…!!」 「幸せにな!!」 「はい!!」 アリオスとアンジェリークは、二組のカップルを幸せそうに見つめた後、手を繋ぎながら、自室へと戻る。 「今回の視察、たのしかったね?」 「ああ。ったく、コレで運命の片棒をおまえと一緒に担がされるのは何度目だ?」 彼女は嬉しそうに笑うと、強くアリオスの腕に手を絡める。 アリオスとアンジェリーくは清々しい気分になりながら、海岸に向かった------ 二人の、素敵なキューピットを見送った後、牧師が挨拶にきた。 「皆様おそろいで」 彼は幸せそうに四人を見つめ、何度も頷く。 「あのお二人に感謝しなければいけませんなあ・・・。 お友達ですか?」 「ええ」 嬉しそうにサラは言うと、しっかりと頷いた。 「ええ。不思議なお友達でしたわ…。 アリオスとアンジェリーク…。何だか、私たちと違った”力”を持っていたわ…」 その言葉に牧師ははっとしたような表情をする。 「-------アリオス、アンジェリーク!!! それは尊い女王陛下と守護聖様のお名前ですよ!!!」 そういえば・・・ 誰もが驚いたように顔を見合わせた後、吹き出した。 「そうだわ…。きっと、あのお二人は本物だわ…」 四人は空を見上げると、すがすがしい気分で、女王と守護聖に向かって、祈りを捧げる。 有難うございます… その後、無事に視察も終わり、アリオスとアンジェリークは聖地に戻った。 二人は時折、二組のカップルが幸せであるか、確認しているのだという------- |
コメント 110000のキリ番を踏んでくださいました、 照元悠音様のリクエストで 「アリアン黄門ちゃま」 完結です。 ア〜、へぼくって申しわけありません・・・ |