冷たい炎の激しさをもったアリオスおにいちゃん・・・。 暖かで穏やかな光を持ったオリウ゛ィエおにいちゃん・・・。 どちらも反対の性質だからこそ、私は好きなの・・・。 そのふたつが、ぶつかって、今、私は、選ばなくちゃいけなくなっている・・・。 どうして今のままでいられないんだろう… アンジェリークはベッドで横になって天井を見上げる。 私は・・・、気付いてしまったから・・・。 アリオスおにいちゃんをより好きだってことを・・・。 オリウ゛ィエおにいちゃんに明日話しに行こう・・・。 ------------------ 翌日、学校が終わった後、アンジェリークは、オリウ゛ィエの元に向かった。 昨日確認をして、午後には帰っているとのことだったのだ。 やはり、少なくてもオリウ゛ィエにとっては、あまり良くない話をしにいくのだ。 少しの罪悪感と緊張感が走る。 深呼吸をして、アンジェリークは、インターホンのボタンに指を置いた。 「はい」 「アンジェリークです。オリウ゛ィエおにいちゃん」 「アンジェちゃん、待っていたよ〜」 明るく嬉しそうにオリウ゛ィエは応え、いそいそと玄関ドアを開けてくれた。 「はろ〜アンジェちゃん。おいしいケーキがあるよ!」 「うん。有り難う、オリウ゛ィエおにいちゃん」 いつもと違って空元気な彼女に、オリウ゛ィエは景気づけに背中を優しく叩く。 リビングに入ると、そこにはケーキが準備がしてあった。 オリヴィエがすぐにお茶を用意する。 「ミルクティでいいよね」 「うん。有り難う」 リビングのソファに腰掛けても、いごこちがどこか悪い。 落ち着かなくてそわそわしていると、オリウ゛ィエがミルクティを片手にやってきた。 「ほら、これ飲んで、落ち着いて」 「うん、有り難う」 アンジェリークは、カップに口付けながら、紅茶をゆっくり飲む。 ひとくち、ふたくち紅茶を飲むと、アンジェリークはカップに置いた。 少しは落ち着きを取り戻す。 「落ち着いた?」 「うん」 優しく微笑みかけると、オリウ゛ィエは、その前に腰掛けた。 「話があるから来たんでしょ? だったら、言ってみなさいよ?」 オリウ゛ィエは優しい雰囲気で、アンジェリークを話し易くさせる。 苦しげな横顔に、オリウ゛ィエは彼女の悩みの深さを知る。 そして、その美しさに、はっとした。 こんなに綺麗になったんだね・・・。 「私・・・、オリウ゛ィエおにいちゃんが大好きよ」 ぽつりとアンジェリークは囁く。 それが嘘でないことぐらいオリウ゛ィエには判った。 彼はじっとまっすぐアンジェリークを見つめ、口を開く。 「だったらどうして?」 それは責めるようなものではなく、穏やかな色を帯びていた。 「私・・・、昨日、アリオスおにいちゃんのところにいって、相談して・・・、一晩ゆっくり考えた・・・」 「うん」 彼女の目の下のくまを見れば、それは一目瞭然だった。 「ごめんなさい!」 アンジェリークは、深々と頭を下げると、謝る。 「私・・・、アリオスおにいちゃんが・・・」 「ストップ」 突然、人差し指で唇を押さえられると、彼女は驚いて、少し哀しげな表情をした。 「これ以上、言わないで・・・。続きはアリオスに言ってあげて。いい? 判った?」 「うん」 オリウ゛ィエは栗色の髪をくしゃりと撫でる。 アンジェリークはその暖かさが嬉しかった。 「有り難う」 自然と涙が零れてしまう。 「有難う…、本当に」 「ほら泣かないの?」 オリヴィエは、近くのティッシュを取ってやると、それでアンジェリークの涙を拭いてやる。 「-----私とアリオスはね、あんたが誰を選んでも、祝福するって昔から決めてた」 ピくりとアンジェリークの動きが止まった。 「そりゃあ、あんたが、自分を選んでくれるのが、一番嬉しいよ。 だけどね。 あんたが幸せであれば、誰を選んだって構わないって、私たちは結局のところは思ってる…」 「オリヴィエおにいちゃん…」 オリヴィエは、見守るかのようにアンジェリークを見つめると、フッと笑う。 「例えばね、小川があって、あんたが渡らなければならないとする。あんたは、凄い荷物で、しかも小川が滑りやすくて大変。 私だったら、先に渡って、あんたの荷物を持って手を差し伸べて渡らせる。だけど、アリオスは、荷物ごとあんたを抱えて、一緒に渡る」 同意を求めるかのようにオリヴィエが見れば、アンジェリークもその通りだとばかりに頷いた。 「その違いかな、私の敗因」 さらりと言うと、オリヴィはは真っ直ぐに立ち上がり、アンジェリークに手を差し出す。 それを見ていた彼女も立ち上がる。 「二人でパリに遊びにおいで」 「うん」 しっかりと手が握られて、二人は固い握手を交わす。 これからも揺るぎのない、”友情”の為に---- 「有難う」 「アリオス嫌になったらいつでもおいで」 アンジェリークは泣き笑いの表情を浮かべると、オリヴィエから手を離した----- この手のぬくもり、私一生忘れない… --------------------------- オリヴィエの出発の日、アンジェリークはアリオスと一緒に、見送りに来ていた。 「アリオス、アンジェちゃんを不幸にしたら承知しないからね?」 「不幸にするわけねえだろ?」 アリオスはアンジェリークの腰をエわざと抱いて、オリヴィエに見せ付ければ、オリヴィエは、少し引き攣った笑顔をみせる。 「ホントに不幸にしたらその時は、パリからアンジェちゃんを連れ去りにいくからね?」 「ああ、覚悟してるぜ」 憎らしいほど良い笑顔をすると、オリヴィエは思う。 「オリヴィエおにいちゃん、身体に気をつけてね? 辛くなったらいつでも帰ってきてね?」 泣きそうに言う彼女が、オリヴィエは可愛いと思う。 「サンキュ アンジェちゃん。 アンジェちゃんもアリオスが嫌になったら、直ぐにパリにおいで」 その言葉に、アリオスはつかさずアンジェリークをこれ見よがしに抱きしめた。 「アリオス…恥ずかしい…」 「いいんだ」 ”アリオス” アンジェリークは、恋人となった彼に、もう”おにいちゃん”とつけてはいない。 当然といえば、当然だが、それがオリヴィエには少し切ない。 「エールフランスパリ行きは…」 登場の最終案内がかかり始める。 「さてと。そろそろ行くよ。ふたりとも元気で!」 「ああ、元気でな?」 「気をつけてね?」 二人に見送られながらオリヴィエは歩き出す。 エスカレーターに飛び乗ったとき、彼は振り返る。 「アリオス! やっぱり、私は、アンジェリークを諦めないからね〜」 「望む所だ!」 二人の男たちの姿を見つめながら、アンジェリークは幸せに浸る。 私は凄く幸せもの…。 こんなに素敵な二人がいるんだから…。 これからもずっと、わたしは二人が大好きだわ。 友愛をオリヴィエおにいちゃんに…。 そして、愛情をアリオスに… 「行くか?」 「うん!」 アリオスとアンジェリークは手をしっかりと握って歩き出す。 アリオスとアンジェリーク。 そしてオリヴィエ・・・。 進む道は分かれたが、これからもずっと、危うくも温かな関係でいるために。 三人は、新たな道を歩き出した----- |
コメント
帰蝶様の「新春初カキコキリ番」のリクエストで、
「アンジェの気持ちは二者に対して均等な三角関係」です。
結局アンジェはお約束どおりにアリオスを選びましたが、
三人の三角関係はま脱図供養ない実を含めての簡潔です。
やっぱり力量不足。
帰蝶様、ごめんなさい…
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