アリオスと肌を重ね合ったことを、アンジェリークはまだ信じられなかった。 横に彼がいることを、彼女はかけがえのない幸せに感じる。 「アンジェ・・・、もう絶対におまえを離さない。おまえとなら、どんなことでも平気だ・・・」 「アリオス、放さないでね、絶対に・・・。誰に何を言われても、私はあなたのことを愛しているから・・・」 ぎゅっと強く抱き合い、ふたりは再び激しく愛し合う。 永遠に私はあなたのものです・・・。 アリオス・・・。 何度か愛し合った後、アンジェリークは不意に時計を見た。 すでに、真夜中を過ぎている。 「いけないっ!」 必至になって飛び起きると、アリオスにベッドの中に引きずり込まれた。 「あっ!」 「どうした?」 「もう真夜中に・・・」 「構うもんか」 アリオスはそれだけを言うと、更に放さないとばかりに、力を込めてぎゅっと抱き締めた。 「そんなこと気にすんな。朝までここにいろ。もう離さない」 「アリオス・・・」 彼の想いが涙が出るほど嬉しい。 アンジェリークは、熱っぽい瞳でアリオスを上目遣いに見つめた。 「いいの・・・?」 その一言にどのような意味が込められているか、アリオスは十二分に判っている。 彼女の相手だと知られれば、彼がどんな目に合うかを心配していることを。 「おまえはあいつのもんじゃねえ! 俺のもんだからな?」 「アリオス・・・」何 よりもの”愛の証”とばかりに、アリオスは強く彼女を抱き締めた。 「アンジェ・・・、少し待ってろ」 彼は慰めるように瞼にキスをすると、ベッドから出ていく。 「あっ・・・」 寂しげな声を上げると、アリオスは柔らかに笑った。 「すぐに戻ってくるからな?」 「うん・・・」 まるで子供のように膝を抱えて座ると、アンジェリークは星空を眺める。 遠い昔に死んでしまったママ・・・。 アンジェは、今、愛する人と一緒にいることを選びたいです・・・。 それは許されないことなのでしょうか・・・。 寝室のドアが開いて、アリオスが入ってきた。 裸の彼を見るのは妙に照れくさい。 グラス二つに、ペリエの瓶をお盆の上に乗せている。 それをサイドテーブルに乗せると、ベッドの中に入ってきて、抱き締めてくれた。 「あいつがおまえと結婚を急ぐんだったら、俺も先手を打つまでだ。一緒になろう・・・」 真摯に光るアリオスの異色の瞳を見れば、彼が真剣であることは判る。 「アリオス・・・!」 嬉しくて涙が出てくる。 アンジェリークはぎゅっとアリオスに抱き付くと、肩を震わせる。 「泣くなよ・・・」 「嬉しいの・・・」 「これから、凄く辛くなるかもしれないが、構わねえか」 栗色の髪を撫でられながら、アンジェリークはそんなことはどうでもいいとばかりに、頭を振る。 「アリオスのそばにいるだけでいいの。それだけで、幸せだから」 「これ、おまえにやる。おまえのために作った」 「アリオス・・・」 左手を取られると、薬指に指輪を填める。シルバーのリングの中央には、アンジェリークの瞳と同じ宝石が散らばらせている。 「アリオス、これは婚約指輪?」 「ああ。約束じゃねえ。ちゃんと俺たちは一緒になるんだ、今すぐな?」 アリオスは誓いを立てる為に、アンジェリークをきつく抱き締めると、甘く囁く。 「愛している、結婚しよう」 「はい、はいっ!」 強く抱き締めた後、アリオスはアンジェリークの唇に誓いのキスを送る。 「んっ・・・」 今までのキスの中で、最も神聖で想いが籠ったキスのように、ふたりは感じた。 夜が白むまで、ふたりは色々と語りあう。。 時には愛し合い、思いを深めていく。 ふたりは今、神の元で結ばれた-------- ------------------------------- 朝早く、アリオスは全ての準備を整え、ふたりで手を取り合って、この街を離れようとしていた。 マンションの駐車場の前に差し掛かると、そこには、アリオスの父と兄、そしてアンジェリークの両親が待ち構えていた。 その姿に、アンジェリークは息を呑んだ。 全身が震える。 「お父さん・・・」 「この野郎・・・・!」 アロイスはいきなりアリオスに殴りかかってきた。 アリオスはそれを素早く交わすと、逆にアロイスに殴りかかっていく。 「うわっ!!」 アリオスの拳は簡単に命中し、アロイスはその場に音を立てて倒れた。 「何をする! 俺の人形を汚しやがって!」 「人形? こいつは意思を持った人間だ! それを覚えておけ!」 アリオスはぎゅっとアンジェリークを腕の中に引き寄せると、アロイスを背中が凍り付くまなざしで睨みつける。 「・・・アロイス、おまえはこのお嬢さんから手を引きなさい。アリオス、おまえもだ。婚礼はなかったことに。だが業務提携は行うから心配なさらないでください」 アリオスの父がそう言った瞬間、アンジェリークは父親と運転手に動かないようにされる。 「いやっ! 放して! 放して!!」 アンジェリークが暴れるものの、力は適わない。 「アリオス!!」 「アンジェ!!」 アリオスが駆け寄ろうとすると、アロイスにはがいじめにされる。 「はなさねえか!!!」 アリオスが暴れてアロイスの腕から逃れたが、アンジェリークはそのまま車に乗せられる。 「アンジェ!!!」 アリオスはその後を追い駆けていったが、もう追いつくことは出来なかった。 「おまえも、あの娘のことは諦めろ…」 アンジェリーク… アリオスは拳を握り締め、決意を秘めたように唇を噛締めた。 ------------------------------ 家に戻り、アンジェリークは自分の部屋にこもっていた。 真夜中になっても、アンジェリークは眠れない。 アリオス・・・。 またあなたに会える日がやってくるの・・・? 不意に窓が揺れる音がし、アンジェリークはベッドから飛び起きた。 その瞬間------- 月の光に照らされたアリオスの銀色の髪がふわりと浮かび上がる。 彼は窓からアンジェリークの部屋に入ってくると、愛しい彼女に手を差し伸べた。 「-------行こう」 「アリオス…っ!!」 ふたりはそのまま抱き合うと、夜の闇に溶けて行く------- もう二度と離れないために。 1年後------- ふたりの実家に一枚のはがきが届いた。 そこには、アリオスとアンジェリークとふたりの生まれたばかりの子供が、写真に写っていた------ 元気にやっています・・・。 そのはがきは、彼らの両親の心の氷を溶かすには充分だった---- 彼らははがきを見るなり、返事を書き始める。 逢いたいと------- 春はもう目の前に来ている------- |
コメント 『愛した人には決まった相手がいた」シリーズです。 今度はアンジェに決まった相手がいた場合です。 ラストシーンが書きたかったんです(笑) |