朝、戦争が終わった後。 恋人たちの甘いひと時が始まる。 朝食を食べながら、キスをしたり、 食べさせあったりする。 アンジェリークはこの時間が何よりも好きで、同時に、何よりも満ち足りた思いになる。 「・・・んっ!!」 アリオスは食べる合間にも、何度も彼女にくちづける。 そうしないと、午後からは邪魔者だらけで、何も出来ないのだ。 「はあ…、アリオス…」 彼だけの天使の甘い声。。 いつのまにか、口付けは深くなる。 互いに思いを伝え合って、いつしか朝食を食べることすら忘れてしまう。 いつもとても近い距離で朝食を食べるのだが、最後は二人でひとつの椅子に座っている。 アリオスがアンジェリークを膝に乗せてしまうからなのだ。 何度か唇を重ねた後、ようやく離せば、潤んだ瞳で彼女は彼を見つめていた。 「愛してる」 「うん。私もアリオス」 二人は抱き合って、アリオスはそのままアンジェリークの髪を撫でた。 うっとりと、彼の腕の中で満足げに瞳を閉じるアンジェリークとは違って、アリオスは内心複雑な思いがする。 身体の奥深くから欲望が突き上げてくる。 それを何とか理性で押さえているが。 もう限界に近かった。 くそお…。 あいつらさえいなかったら、アンジェをベットに連れ込むのに…。 ホントにどうかしちまわないと、アンジェを襲っちまいそうだ・…。 ----もう、襲うしかねえかな…。 などと、アリオスが葛藤をしていることを、もちろんこの少し鈍感な天使は知らない---- -------------------------------- もう…限界だ… アリオスはかなり思いつめていた。 彼は愛してやまない天使が欲しくてたまらなかった。 欲望が全身を突き上げ、もうどうしようもないほどに狂いそうだった。 当然、仕事にも手はつかない。 思いつめた眼差しで、彼はバスルームへと向かった。 頭を冷やすためである。 「アリオス!?」 彼の思いつめている理由がまさか自分だとは思わないアンジェリークは、彼の切ない表情に、心配そうな眼差しを向ける。 その眼差しが、あまりにも可愛くて、彼をさらにその気にさせていることを勿論彼女が知るはずなくて…。 ふと彼女を一瞬見つめて、アリオスはそのままバスルームに入った。 そのまま、脱衣室の洗面化粧台のハンドシャワーから大量のお湯を出し、それを頭に浴びせる。 頭を冷やさなきゃな…。 突然襲って、あいつを驚かせたくねえし…。 くそ!! どうすりゃいいんだよ!? 不安そうにアリオスが入っていったバスルームの扉を見つめるアンジェリークが可愛くて、レイチェルは思わず声をかけた。 「どうしたの?」 「…うん…、アリオスが苦しそうで…、もう、私のこと嫌なのかなって…」 あまりにもの鈍感さに、レイチェルは呆れてしまう。 確かに、アリオスははたから見ても苦悩に満ちている。 だが、それはこの天使が欲しくてたまらないから。 別にアリオスが苦しそうにするのは、レイチェルにも構わない。 しかし、それで、この天使が苦しそうになるのは話が別だ。 アリオスをいじめすぎたかな… 少し苦笑するレイチェルである。 「大丈夫よ、アンジェ? アリオスはあなたのせいであんなふうになっているんじゃないから」 「うん、うん・・・」 そっと栗色の髪を撫でれば、アンジェリークはレイチェルに甘える。 彼女はほんの少しその状況に優越感を感じたのは言うまでもなかった。 バスルームが開く音がして、アリオスが濡れた髪のまま出てきた。 思いつめた異色の眼差し。 水が滴る銀色の髪。 艶やかな男の魅力に、アンジェリークはドキリとした。 同時に胸が高まって、自分がどれほど彼を愛しているかを悟る。 私…、アリオスのこと、こんなに好きなんだ… 「アンジェ」 潤んだ眼差しで彼を見つめていたが、急に声を掛けられて、彼女はびくりと身体を動かした。 「メシ食って、片づけが終わったら、俺の部屋に来い」 決意に秘められた彼の言葉。 その言葉の調子があまりにも強くて、彼女は思わず、うなずくことしか出来なかった。 「はい」 どうしよう…。 私…。 飽きられたのかな… アンジェリークは勘違いも甚だしく肩を落とした。 その様子を見ていた、レイチェル、オスカー、セイラン、ゼフェル、そしてマルセルは、ぴんと来る。 俺のお嬢ちゃんに手を出すのか!? 邪魔するぜ? アンジェリークの美しい芸術品を見つめるのはぼくだと決まっているんだ。 アリオスにはそうはさせない・・・ ケッ、そうはいかねーぜ? 兄貴!! ベットに花粉を蒔いちゃうもんね ”アンジェの純潔を守る会”の会長のワタシをさしおいてそんなことは許さないんだから!! 彼らは、今夜もまた、互いの利益を一致させて、団結をするのだ。 アリオスはこのこともちゃんと覚悟している。 やれるもんならやってみろ!! 再びゴングが鳴る。 知らないのは彼らの天使だけ----- アリオス…。 どうしても好きなのに… -------------------------------------------- さて、夕食も終わり、片付けも終り、アンジェリークはいつものようにコーヒーを持ってアリオスのところへと向かった。 「アリオス?」 「ああ、入れ」 躊躇いがちのノックが彼女らしさを表している。 そのまま部屋の中に入ると、アンジェリークはコーヒーを彼の前に置いた。 「サンキュ」 そういって立ち上がると、アリオスはいきなり部屋の鍵を閉めた。 今までになかったこと。 彼女はその音にびくりとしてしまう…。 「アンジェ…」 低くくぐもった声…。 いつもよりも艶やかで色っぽい。 その甘さによっていると、いきなり、彼に抱きすくめられてしまった。 「え!?」 「今夜は…、おまえを部屋に帰したくない…。 -----いやか?」 耳元で浅さやかれる甘い声。 そのテノールは、彼女から全ての抵抗する力を奪った。 彼女はやっとのことで首を振る。 「サンキュ。 もう…、おまえが欲しくて限界だったんだ…」 彼の苦悩の理由がようやく判り、その腕の中で一息ついたときだった。 「そうはいかないぜ?」 次男オスカーの声が響き、二人が慌てて振り返ると、そこには、意地悪にも部屋の鍵を掌でお手玉しているオスカーがいた。 「”アンジェの純潔を守る会”が、そうはさせないぜ?」 目を凝らせば、他のメンバーも後ろにはべっている。 ニヤリと微笑みながら。 くそ〜、こいつら〜!! |
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コメント
翡翠様へのお礼リクエストで「一つ屋根の下に住むアンジェリークを、アリオスと男性陣が取り合う」話の続編です。
書いてて楽しかったです。
今回は、「やりたくてもやれない」(笑)をテーマに頑張ってみました(大笑)
ですから最後は自然と…
だと思います…。