FAMILY TIES EXTRA8

Meet The Surgeon


「もうレウ゛ィアス!!! 心配したでしょう!!!」
 診察室に入るなり、アンジェリークはわが子レウ゛ィアスを強く抱き締めた。
 その声に、同じ名前を持つ外科医はびくりとする。
「アンジェリーク・・・」
 足は痛むのだが、アンジェリークの抱かれ心地に、レウ゛ィアスはうっとりとした気分になる。

 アンジェのおっぱい柔らかくて、最高・・・。我だけの、我だけのもの。

「心配掛けたな、アンジェリーク・・・。そんなに取り乱して、かわいいな」

 何だこのガキ・・・!

 じっと見つめる外科医レウ゛ィアスに、同じ顔を持つ少年が、挑戦的なまなざしを向けた。

 ・・・さっきの撤回。こいつには、俺のアンジェを逢わせない!!!

 この同じ顔をした不敵なガキ(笑)に、新米ママアンジェリークとの愛のひとときを邪魔されたかと思うと、いやおうのない理不尽な怒りが込み上げてきた。
 それを何とか理性で押さえる、大人のレヴィアスである。
「診察します」
「あ、はい、先生、宜しくお願いします・・・」
 アンジェリークは涙を拭いながら、わが子から離れると、外科医レウ゛ィアスに一礼をした。
 その姿が妙に微笑ましく、医師は微笑みを浮かべている。
 その微笑みが、ちびっこには気にいらないらしく、むっとしてしまう。

 この医者、我のアンジェを狙っている!

 ぎろりと医者を睨めば、医者は子供相手とばかりに、無視を決め込んだ。
「足出して」
 仕方なく、ちびっこレウ゛ィアスは足を医師に差し出す。
「少し痛いかもしれんが、我慢しろ」
 一応は警告を発する。外科医であるレウ゛ィアスは、小一にして貫禄が充分な子供の触診を開始した。
「ここは?」
「大丈夫だ」
 ゆっくりと足を触って、左足の足首にかかった時、レウ゛ィアスは僅かに顔をしかめた。
「ここだな?」
 余りにもの痛みに、尊大なるちびすけは、頷くことしか出来なかった。

 泣かないか・・・。いい根性している・・・。

「左足首のレントゲンと、念のために全身のMRIを撮っておいてくれ」
「はい」
 レウ゛ィアスがてきぱきと指示をすると、看護婦はレウ゛ィアスの車椅子の後ろに立った。
「レントゲン撮りに行きましょうか! お母様も先生も付いてきて下さい」
 看護婦が車椅子を引き、その後をアンジェリークとロザリアが続く。
 三人は、レントゲン室に向かった。
「まるで豆台風だ」
 賑やかな集団が去った後、静かになった診察室で、レウ゛ィアスは苦笑いしていた。


 アンジェリークから、半ばパニックった電話をもらったアリオスは、仕事を切り上げて、スモルニィ大学付属病院にやってきた。
「外科だと聞いてたが、この病院判りにくいな」
 いつも喧嘩ばかりしているが、いざという時は、このように駆け付けるところが、アリオスの父親としての良いところでもあった。
 だが、半ばパニック状態のアンジェリークが心配だというのも大きいのだが。
 表示を見ながら歩いているアリオスを、新米ママのアンジェリークが、見掛けた。
 彼女は丁度、娘を抱いて軽い散歩をしようとしていたところだった。
「あの・・・、どうかされましたか?」
 優しい聞き覚えのある声に、アリオスは目を凝らした。

 アンジェ!?

 だがよく見ると、彼女の髪は肩まで揃えられ、腕の中には赤ん坊を抱いている。
 本当に、アリオスの妻であるアンジェリークに良く似ている。
 新米ママであるアンジェリークもまた、アリオスを見て驚きを隠せない。

 レウ゛ィアスと双子みたい・・・。髪の色を除けば、本当に良く似ている。

「あ、息子が怪我をしてここに運ばれたと聞いたので」
「息子さんは、スモルニィの生徒さんですか?」
「そうです」
 その一言で、アンジェリークはレウ゛ィアスの患者の父親だと悟った。
「どこか判りますから、ご案内します」
「ああ、どうも」
 何だか奇妙な気分になりながら、アリオスは新米ママに着いて行く。
 しばらく歩いて、彼女の顔が少し明るくなる。
「こちらです」
 ノックの音と共に、軽やかな声が響き、レウ゛ィアスは頭を捻る。

 アンジェ・・・が、なぜ?

「入ってくれ」
「はい」
 赤ん坊を抱く新米ママのアンジェリークに気を遣って、アリオスはドアを開けた。
「すみません、こちらにレウ゛ィアスという男の子が・・・」
「アリオス!!」
 後ろから彼の妻のアンジェリークが、声を掛けてきた。
「アンジェ!!」
「アリオス、有り難う来てくれたの!」
 夫のとなりにいる、赤ん坊を抱えた、自分とよく似た女性に、アンジェリークは目を丸くする。
 そして、大きな瞳に涙を浮かべて、アリオスをにらんだ。
「アリオスの浮気者〜!」
 その表情にぎょっとして、アリオスはすぐさま、彼女の視線を追う。
 その先は、新米ママの腕の中にいる、赤ん坊。
「違う俺の子じゃねえ!」
「だったらどうして!」
 始まってしまった夫婦の修羅場に、新米ママはおろおろするばかりだ。
 妻を見兼ねたのと、診察室前のごたごたに、外科医レウ゛ィアスは、立ち上がった。
「その子は俺の子だ。そして抱いている女性は、俺の妻だ」
「レウ゛ィアス・・・」
「とにかく、診察室に。息子さんを診ますから」
 アンジェリークは真っ赤になって頭を下げた。

 早とちりしちゃった…

 アンジェの嫉妬か…。
 良いもんだな何だか…

「すみません」
「じゃあ私はこれで。子供たちを待たせていますので。足の様子はまたお知らせください。」
 担任のロザリアは、そう言うと颯爽と立ち去る。
「有り難うございました!」
 アリオスとアンジェリークは、深々と頭を下げて、挨拶をした。
「じゃあ私も部屋に戻りますね」
 新米ママもそう言うと、踵を変えそうとした。
 その時。
「うわああああん!!」
 腕の中にいた赤ん坊が、大きな声を出してくずりはじめる。
「ね、どうしたの? エリス!?」
 慌てふためく新米ママに、アンジェリークは優しく微笑みながらアドバイスをした。
「おっぱいを上げたら? きっとおなかが空いているのよ」
「はい・・・」
 母親の先輩の言葉に、新米ママは素直に頷いた。
 そのタイミングで、看護婦がちびレウ゛ィアスのレントゲンとMRIの解析結果を持ってきた。
「診察をしますから、息子さんをこちらへ。アンジェ、奥の控え室を、エリスの授乳に使え」
「うん…」
 アリオスがレヴィアスの車椅子を、診察椅子の近くまでひいてやる。
 その後を二人のアンジェリークが続いた。
「じゃあ、レヴィアス、おっぱい上げてみるね?」
「ああ」
 新米ママは奥の控え室に、ぐずる赤ん坊とともに消える。
「さてと」
 視線で妻を見送った後、レヴィアスは、レントゲンをレントゲン大に移し、先ずはMRIの解析結果を見た。
「先生!?」
 アンジェリークは母親特有のいいようのない不安にさいなまれて、心配そうにおろおろとしている。
「「アンジェ…」」
 余りにもの彼女の心細そうな態度に、アリオスとちびレヴィアスの親子は同時に、アンジェリークの名を呼び、彼女の身体に手を回す。
 本当に同じタイミングだったので、レヴィアスは思わず笑ってしまった。
「他の個所の問題はないです…。
 足首も、折れてない…。
 これだと、捻挫の少し重いやつでしょう」
 奥の部屋から聞こえる我が子の声をBGMに、レヴィアスは淡々と話をする。
 その瞬間。
 アンジェリークとそしてアリオスの表情にも安堵感が広がる。
「湿布をしておきます。当分の間は歩くのが難しいでしょうから、支えの松葉杖、それと湿布薬も投薬しておきます。後、今夜熱が出るかもしれませんから、解熱剤も出しておきますから」
「有難うございます」
 ほっとしたのか、アンジェリークは大きな溜息を付いて、ふっとアリオスの肩に凭れた。
「良かった…」
 同時にレヴィアスの娘も泣き止んだ。
 新米ママのアンジェリークは、奥の控え室から出てきて、嬉しそうにアンジェリークに頭を下げる。
「有難うございました! おなかがすいていたみたいで、すっかり泣き止みました」
「良かった…」
 アンジェリークも自分のことのように嬉しくなる。
「本当に、有難うございます」
「少し抱かせてもらえますか?」
「ええ、どうぞ」
 新米ママからアンジェリークの腕にやって来たエリスは、まだ生まれたばかりで、柔らかくて、そして小さい「可愛い〜」
 アンジェリークが嬉しそうに目を細めるものだから、アリオストちびレヴィアスもうっとりと彼女の笑顔を見つめる。
 レヴィアスは思う。

 この手の顔は、皆、あの手の顔がすきなのか…。
 まあ、俺のアンジェが世界で一番可愛いが…

「本当に有難う…」
 名残惜しげに、アンジェリークは新米ママにエリスを手渡した----



 病院で手続きなどを済ませ、三人は、車で岐路に着いた。
「良かったね、レヴィアス。
もう危ないことはしないでね!」
「判ってる…」
 今回の母親の取り乱しようが可愛くて、ほんの少し"美味しい"思いをしたと感じたとは、口に出してもいえないレヴィアスである。
「でも可愛かったな〜、赤ちゃん!!」
「クッ、おまえ凄く嬉しそうだったからな? 作るか? だったら全面的に協力するぜ」
 アリオスの甘い言葉に、アンジェリークは真っ赤になる。
「・・・も・・・ばか!」
「アンジェ!! 今度は俺の子を産むんだろ! こんな耄碌止めて、俺にしろ? 俺の将来は、今日の外科医みたいになるぞ? 招来有望だ」
 レヴィアスは言葉をもって、父に対抗した。
 だが、大人も彼は余裕で…。
「種もねえくせに、そんなことをいううんじゃねえぜ」
「何!?」
 車内はいつものバトルモードに突入する。
「もう!!! 二人とも止めなさい!!!」
 アンジェリークのいつもの怒鳴り声が車内に響き、バトルを止めさせる魔法の威力を発揮するのであった。



「今日の親子連れ、おもしろかったわね」
「ああ」
 診療がすんで、レヴィアスは妻のいる病室に戻った。
 シャワーつきのこの病室は、彼女が退院するまでは、レヴィアスの"家"と化している。
「憧れちゃうな、あんなうるさい家族」
 アンジェリークはふふっと思い出し笑いをしながら、夫に甘えて凭れる。
「・・だったら、たくさん子供を作らないとな?」
 艶やかな微笑を浮かべながら静かに話す夫に、アンジェリークはそっと定番の言葉を囁いた。
「…バカ…」 

コメント

40000番のキリ番を踏まれた海乃のり様のリクエストで、
「ちびレヴィと外科医レヴィの対面」です。
後半はママのお話になってしまった…。
この家族の夏祭りとか地蔵盆書きたい…。