検問が終了して、アリオスたちは、宇宙船から出しておいたエア・カーに乗り込んだ。 「どこに行く?」 「この先の湖へ。ナビゲーションするわ」 「頼んだ」 「あの白い山を目指して走って」 「オッケ」 アリオスは、ハンドルを切ると、そのまま山に向かって進み始める。 彼は、ナビゲーションパネルを見ながら、少し難しい顔をした。 「・・・バレたみてえだな? おまえが”女王”なこと。追っ手が来てやがる」 「うん。遅かれ早かればれることだもん」 「だな」 追っ手といっても、歴戦の覇者であるアリオスたちには何でもなく、誰もが落ち着いていた。 アルフォンシア、待っていてね? あなたを助けたら、レイチェルをすぐに助けに行きましょう・・・。 白い山は神聖なる山。 惑星の守り神である聖獣アルフォンシアの眠る場所。 彼が反応しない限りは、惑星の”王”だとは認められない。 そうである以上、彼女の叔父はまだ”王”ではなかった。 眼前に白い雪を抱いた山が見えてきた。 「そろそろこれを降りなくちゃいけないわ。徒歩でしかいけないから」 「停めるところを教えてくれ」 「うん」 アンジェリークはアリオスに裏道を教える。 そこは、アルフォンシアに認められたものしか入ることが出来ない場所だった。 何ごともないかのように、彼らを乗せたエア・カーはその結界を通り抜けたが、彼らを追っていた者は、通り抜けることは出来なかった。 ぎりぎりのところ迄でエア・カーで乗り込むと、そこで停めて、彼らは山に降り立った。 「ここはまだ、冒されてはいないのね。よかった・・・。空気が澄んでるわ」 アンジェリークは、ほっとしたように呟くと、空気を胸いっぱいに吸い込む。 アリオスも、先程とは違う空気であることを感じていた。 「ここまではまだ邪気が来ていないのね。良かった」 その空気の美味しさを感じながら、安堵する。 「確かにここの空気は清々しい。詞を作るのには最適だね」 セイランも納得の清々しさだった。 「おまえの毒気がそれで浄化されればいいがな」 オスカーは、セイランに負けずとも劣らない言葉で応戦する。 「君の煩悩もね?」 それ以上の毒を吐かれてしまい、オスカーは言葉を失った。 やっぱりこの雰囲気は楽しいな・・・。 アンジェリークは微笑ましそうに穏やかな表情をし、彼らを見つめている。 「ここからは歩きます。もっと澄んだ場所なんですよ?」 「益々おまえらの毒気が抜けていいだろ?」 アリ オスもさらりとある意味愛の籠った言葉を呟いた。 「さあ、行こか〜! ハイキングはええもんな〜」 チャーリーのいつものような元気な声に、誰もが頷いて先に進み始める。 「ハイキングじゃねえだろ?」 ぜフェルが笑いながらチャーリーの後を追う。 「アンジェリーク、この先にはお宝はあるのか?」 「残念ながら、ゼフェルさん。私の聖獣がいます」 くすりと笑いながらアンジェリークは答えた。 この先何が待っているかは判らないが、彼らの明るく前向きな姿勢に、彼女は励まされる。 「アンジェ、行くぜ?」 「うん」 堂々と手を繋いでくれるアリオスの手から、温かいものを感じ、彼女は安堵する。 一行は、山道を歩き始めた。 なだらかな道は、それほど苦にならない。 アルフォンシア、どうか無事でいてね? アンジェリークをナビゲーションに、アリオスたちは先を急いだ。 どれ程歩いたことだろうか。 曲がりくねっていた道がまっすぐになり、白い光る石が敷き詰められている。 「もうすぐよ」 アンジェリークの言葉に、誰もが嬉しさと緊張感を感じていた。 その時である。 信じられないような美しい光景が眼前に広がる。 「あれは・・・!!!」 エルンストは、眼鏡をずり下げながら、目の前に広がる景色を指差す。 そこは幻だと覚えるかのような、美しい場所だった。 空は茜色に染まり、湖は七色に輝いている。 誰もがその場で心が洗われるように思え、動くことができない。「 この湖は、心が強き澄んだ者にしか見えないと言われているけど、あなたたちはそうなのね」 しみじみと呟くと、アンジェリークは感慨深げに彼らを見た。 「もっと近付かなきゃ」 アンジェリークはゆっくりと慎重に進む。 近づくにつれ羽音が聴こえ始め、風を切っているのが判る。 アルフォンシアだわ!!! 近くに、近くにいるのね!!!! 「アルフォンシア!!」 宇宙の意志である聖獣の名前を感きわまった声で叫ぶと、彼女はそのまま音にむかっと駈けていく。 その後を、アリオスたちは追いかけていった。 「アルフォンシア!!」 再び大きな声で答ると、白い霧の中、アルフォンシアはようやく姿を現した。 深い霧が晴れるとともに、アンジェリークはアルフォンシアの姿に目を疑う。 「アルフォンシア!!!!!」 姿を現したアルフォンシアは脚に鎖につながれて、自由に身動きが出来ない様子だった。 お帰りなさい女王…。 わたしにとっては主人は貴女だけです・・・。 だが、貴女の叔父が”ラガを使い、私をこのような姿にしてしまいました・・・。 鎖は…。 伝説の騎士にしか斬ることは出来ないのです・・・ 「伝説の騎士・・・」 アンジェリークにとって、思い浮かぶのは一人しかいやしなかった。 アリオス、アリオスにしか出来ないわ!! 「俺にやらしてもらえねえか? 鎖を斬るのを」 アンジェリークが頼む前に、アリオスが声をあげてくれた。 「アリオス…、あなたアルフォンシアの声が・・・。 私以外には聴こえないはずなのに・・・」 驚いているアンジェリークに、アリオスは僅かに口角を上げた微笑みかけると、真顔でアルフォンシアに向き直る。 「------おれがおまえの鎖を斬る!」 アリオスはレーザーソードを抜くと、アルフォンシアに向かって突進をし始めた。 神様!! どうか、アリオスとアルフォンシアにご加護を!!!! アンジェリークは祈ることしか出来なかった------ |