Ashes To Ashes

Chapter2


 アンジェリークは背筋を伸ばして歩いた。
 かすんで見える、魔王の城は近くも遠くもあるような気がする。
 彼女は、気が遠くなりそうな自分を何とか抑えながら、一歩、一歩踏みしめるように歩いた。
 暫く歩くと大きな門が見えた。
 そこは、立派な木で出来ていて、どこか重厚な雰囲気がある。
「何か文字が書いてあるわ…」
 彼女は門の横にある石に文字の形跡を見つけ、埃を指で払ってみた。
 『皇帝の聖地はこちら』-------
「ここからメルのいる場所に繋がっているのね…」
 彼女は頷くと、意を決したように門を押してみることにする。
「あ、開かない…」
 いくら力を加えても、扉は全くといっていいほどびくりともしなかった。
「こんどこそ…!」
 体当たりを覚悟の上、アンジェリークは助走を取る。
 そのときである。
「あんたか、アンジェリークとやらは」
 少年の声が聞こえて、彼女は思わず振り返った。
「あなたは…」
 そこにいたのは、銀の髪をした少しふてくされ気味な少年。
 彼は何もかもおもしろくないようなそんな表情をしている。
「乱暴にすんな。あんたをこの門に通してやれと、レヴィアスのおっさんから訊いてる」
「レヴィアスのおっさん?」
 少年が誰のことを言っているか判らず、アンジェリークは小首を傾げた。
「この”魔の国”の皇帝さ」
「皇帝ってそんな名前なの」
 少年は腰にいくつもの鍵をぶら下げながら、門を指差す。
「ここからはあんたの意思で選ぶんだ。
 この門を通って皇帝のところに行くか、それとも門を潜らずに、そのまま安住の世界に帰るか
 二者択一だぜ?」
 アンジェリークは迷うはずはないと思った。
 彼女は真っ直ぐと少年の瞳を見つめると、決意を秘めた真摯な光を彼に送る。
「選択するまでもないわ。私はこの門の置くに行く。それだけだもの」
 自分の使命はそれだけなのだと言いたげに、彼女は迷いひとつ見せなかった。
 それが少年には新鮮だった。
 彼はほんの少しだけ少女を羨ましく思う。
「-------判った。じゃあ、扉を開くぜ。後には引けないぜ」
「判ってるわ」
 凛とした声には強さすら感じられる。
 少年はそれにしっかりと頷くと、鍵の束からひとつ取り出して、門の錠を簡単に開けてくれた。
 ゆっくりと門が開き、先の光景が広がっていく。
 狭い路地しか見えない。

 私には行くしかないもの…!!!

 覚悟を決めると、アンジェリークは一歩中に踏み出した。
 不意に彼女は後ろを振り返る。
「ところで、あなたはなんていうの?」
「…ゼフェル…」
 少年がぶっきらぼうに名前を名乗ると、彼女は笑顔を彼に向ける。
「有難う、ゼフェル!!」
「…!!!」
 想像していなかった言葉にゼフェルは驚愕し、思わず少女に向かって振り向いた。
 だが、門はゆっくりと自動的に閉じられていき、もう、アンジェリークの姿を確認することが出来なくなっていた。
「-------”有難う”か…。最後に言われたのは、いつだったかな…」
 しみじみとゼフェルは呟くと、閉じられた門をじっと見つめていた-----

 あんたなら、皇帝を変えられるかも知れねえな…。


 大きな音を立てて、扉が閉じた。
 その音にアンジェリークは思わず肩を震わせてしまう。
 門の中は一本道が広がっていた。
 後ろに行っても前に行っても同じように思える。
「よし!!」
 アンジェリークは前を選択すると先に向かっては走り始めた。

 私は前を進むしかないもの・・・!!!

 アンジェリークはその気性と同じように、じっと真っ直ぐ見つめながら先に進む。
 残された時間は12時間と少し。
 急がなければならなかった。


「いったいどうなってるの!!」
 いくら走っても一向に進んでいないような気がする。
 いつまで経っても同じ景色で、アンジェリークは息を深く乱した。
 どこまで走っても狭い路地のまま。
 アンジェリークは壁に八つ当たりをするように叩くと、その場に崩れ落ちた。
「酷い…」
 何とか泣きそうのなりそうな自分を抑えて、疲れもあって、彼女は座り込む。
「どうしてこんなことができるのよ…」
 溜息を吐くと、アンジェリークは栗色の髪をかきあげ、溜息を吐いた。
「アロー」
 小さな声がして、アンジェリークは耳を疑った。
 声がする方向を見ると、そこには小さな”緑の妖精”がいた。
 金髪で目が大きくて愛らしい。
「ハローって言ったの?」
「うううん。”アロー”だよ。あんまり大差はないけどね?」
 妖精は笑うと、アンジェリークをじっと見つめた。
「あなたはアンジェリークだよね?」
「どうして私のことを? 風の噂でね? 僕は風の妖精と仲がいいんだ」
 妖精を見ると、アンジェリークは心が和むのを感じる。
「あなたのお名前は?」
「マルセル」
「ヘエ、いいお名前ね」
「有難う」
 緑の妖精は嬉しそうに、スキップしてみせる。
 それがまた愛らしかった。
「困っているようだね?」
「-----うん…。さっきから同じ所ばかり進んでいるような気がして・・・、道はどこにもないし…」
 アンジェリークの言葉に緑の精は不思議そうに頭を捻る。
「だって、あなたの前にも道はあるよ」
「ないわ…」
 逆にアンジェリークのほうが首を捻る。
「それはあなたが通れる道という意味?」
「違うよ。
 だって、”目で見れること全てが、本当ではないんだよ”。特にこの世界ではそうだよ。何事も目で見えること全てを信じちゃダメだ。心で感じなきゃ」
 確かに妖精の言うことは一理ある。
 アンジェリークは頷くと、立ち上がり、前の壁を通り抜けてみることにした。
「………!!!!!」
 すると、緑の妖精が言ったとおりに、壁の奥に道が開けた。
 そこは左右の路の分岐点になっている。
「ホントだわ…」
「でしょう!」
 緑の精は彼女の役に立てたのがとても嬉しいらしく、ころころと笑った。
「有難う!! あなたの言うとおりだったわ! これからはそうするね!」
 そう言って、アンジェリークは嬉しそうに右の道に行こうとした。
「あっ! 待って!!!」
 妖精に呼び止められて、アンジェリークは引き返す。
「何」
「そっちじゃないよ。左だよ!」
「あ、有難う!!!」
 アンジェリークは妖精に本当に感謝をしながら、左の道を進んだ。

 ”目に見えるものが全てじゃない…”
 確かにそうかもしれないわね…


「あ〜あ。よかった。右に行ったら、あの恐ろしい皇帝のところに、真っ直ぐ行っちゃう所だったよ! よかった!」
 事情を知らない緑の精マルセルは、ほっと胸を撫で下ろした。

 TO BE CONTINUED…


コメント

レヴィ×アンです。
先ずはマルセルとゼフェルです。
コレからばんばん出てきます!!



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