
二人は互いの手をしっかりと握り締めながら、中庭から出て行く。夫の暗い影を払拭してあげたくて、アンジェリークは彼を優しいまなざしで包みこんでやる。 「アンジェ、心配すんな・・・。おまえを抱き締めたら癒された」 「うん・・・」 別荘の前までやってきた。そこには温かなまなざしの仲間たちが待っていてくれている。 アリオスとアンジェリークに負けないほどしっかりと身体を密着させている、オスカーとリモージュ。ルウ゛ァ、オリウ゛ィエ、ウ゛ィクトール、ランディ。 そして・・・。 「レウ゛ィアス!!」 リモージュに抱かれている、アリオスとアンジェリークの愛の結実、レウ゛ィアス。 アリオスの手を引っ張り、アンジェリークは息子の元に向かう。 「陛下、レウ゛ィアス様です」 さっとリモージュが彼を渡してくれ、アンジェリークは我が子を腕の中で、しっかりと抱き締めた。「レウ゛ィアス、ごめんね・・・。今度こそママンは離れないから」 「アンジェ・・・」 息子を抱くアンジェリークの肩を、アリオスはそっと包みこんでやる。 「オリウ゛ィエ、ウ゛ィクトール、後始末を頼む。ルウ゛ァはジュリアス長官に連絡を、ランディはオスカーとリモージュをホテルまで送り届けてやってくれ」 それぞれが頷き、職務を遂行する中で、オスカーは困惑する。 「俺も手伝わせて下さい」 「いや・・・。おまえには”婚約者”殿を癒すという職務が残されているからな?」 ニヤリと微笑んで、アリオスはふたりを見つめた。 「ランディ、二人をホテルまで送ってやれ・・・」 「はいっ!」 ランディは嬉しそうに、オスカーとリモージュの前にやってきた。 「お二人とも、さあ、どうぞ!」 ランディに爽やかに促されて、オスカーとリモージュは戸惑いながらも、車に乗り込む。 「ふたりとも、ゆっくり楽しめよ?」 ニヤリとアリオスに笑われて、リモージュは真っ赤になった。 「大公!」 はにかんでいる婚約者が可愛いと思いつつ、オスカーはアリオスを窘めた。 「子供を作るのは、いいことだぜ? うちもそうだしな?」 懲りないアリオスに、アンジェリークまでが真っ赤になる。 「もう・・・バカ…」 リモージュは、”大公が結婚前から女王陛下とあつあつで、手を出していたらしい”という噂が、肯定されたような気がした。 「またな?」 幸せな二人を見送った後、アリオスは、子供を抱くアンジェリークを抱き寄せ、頬にキスをした。 「よく頑張ったな、おまえもレウ゛ィアスも」 「アリオスが頑張ってくれたからよ。あなたがいたから、私もレウ゛ィアスも頑張れたの」 信頼が含まれた熱いまなざしで見つめられて、アリオスは優しい笑みを浮かべた。 「アリオス、長官がお呼びですよ〜」 「判った」 ルウ゛ァに呼ばれて、アリオスは彼の車に向かい、通信機の前に立つ。 「長官。”デスペラード”です」 画面に映る長官ジュリアスは、アリオスの姿を見るなり、満足げに頷いた。 「ご苦労だった。詳しい話は明日訊かせてもらうから、今夜は家族でゆっくりしてくれ」 「有難うございます!」 横にいたルヴァもうんうんといいながら頷いてくれている。 「後のことは私たちに任せてくださいね〜」 「サンキュ」 アリオスは麗を言うと、再び妻子が待つところへと戻っていった。 妻と子供が待ち受けてくれてる。 「アリオス!」 「ホテルに帰るぞ?」 「うん」 アンジェリークの肩を抱いて、車に乗り込む。 助手席には愛する妻子がいて、いつもは叶わないドライヴにアリオスは優しい気持ちになる。 いつもなら、運転手が必ずつくからだ。 「行くぜ?」 「うん、アリオス」 三人はようやく少し安心して、ホテルまでのドライヴを楽しんだ。 -------------------- ホテルに帰って、アンジェリークは息子とのスキンシップを楽しんだ。 風呂に自ら入れてやり、オムツを替えて、着替えさせてやる。 最後の仕上げは、母乳である。 「レヴィアス…、いっぱい飲むのよ?」 手馴れた手つきでレヴィアスにおっぱいをやるアンジェリークを、アリオスは包み込んでやる。 彼は、一生懸命母の母乳を飲んでいる、レヴィアスの頬に指を這わせていた。 「良く頑張ったな? レヴィアス。パパは鼻が高いぞ?」 レヴィアスが少し笑っている。 「アリオス、レヴィアスが嬉しいって言ってるわ?」 「おまえは立派な男だもんな、レヴィアス」 夫の嬉しそうな表情に、アンジェリークはくすりと笑った。 やがて、レヴィアスは満足したのが、母乳を飲みながらうとうとしだし、とうとう眠ってしまった。 「アリオス…、眠ったわ…」 「俺にベッドまで連れて行かせてもらえねえか?」 「うん」 アンジェリークの腕からレヴィアスを抱き取って、アリオスは愛しげに柔らかな頬ニキスをする。 「お休み、レヴィアス…」 ベッドにレヴィアスを寝かせ、宇和掛けを掛けてやると、アリオスはすぐさま妻の傍にいき、その甘い身体を抱きしめた。 「アンジェ…、おまえを抱いて寝たら、きっと安心して眠れる…」 彼は既にアンジェリークの豊かな胸に顔を埋めている。 「・・・うん・・・」 二人はそのままベッドに倒れこみ、息子が戻ったことを喜びながら、しっかりと抱き合い、愛し合った。 情熱的な夜が更けて行く----- ------------------------- 翌朝、女王一家は、帰国の前に、CIA長官ジュリアスの下を訪ねた。 そこでアリオスは事件の報告を何ももらさず完璧に行った。 「有難う。では、IDカードをこちらに、"デスぺラード”」 「はい」 アリオスは自分が持つIDカードをジュリアスに渡すと、敬礼する。 「”DESPERADO”アリオス---- CIA長官の名のもとに、たった今、"特別監察官"の任を解く!」 その瞬間----- アリオスは再び、アルカディア大公"レヴィアス・ラグナ・アルヴィース1世”に戻った。 「陛下、大公、残りのアメリカの日々のご健勝を申し上げます」 「はい、有難うございます!」 二人は微笑んで、ジュリアスに礼を言った後、長官室から立ち去る。 何度もの閉口するセキュリティを超えて、ようやくロビーにたどり着いた。 二人はどちらからともなく、あの碑文に近づいて、心に刻む。 汝は真理を知らん。真理は汝に自由を得さすべし この言葉は永遠に忘れないだろう…。 そう思いながら------ ------------------------ アランの亡骸はアルカディアに移送され、静かな墓地でひっそりと埋葬された。 彼の死因は"自殺"とされ、彼が起こした悪事は、オリヴィエによって総て解明され、反王室派の暴力的な地下組織の壊滅に、一役買うこととなった。 誰もが彼の名を記憶から忘れ去っていった----- 3ヵ月後---- 「まあ、とっても綺麗だわ、リモージュさん! ネ、アリオス」 「ああ」 アンジェリークとアリオスは、主賓としてオスカーとリモージュの結婚式に参加していた。 アンジェリークの膝の上には、レヴィアスがちょこんと座っている。 「ぱーぱ。ママンレーヌ」 この言葉が、彼が好んで使う言葉。 式の間も、両親に何度も呼びかけている。 「レヴィアス・・・・・っ!」 急に吐き気を覚え、アンジェリークはアリオスにもたれかかる。 「アンジェ!?」 顔色が優れなくなった妻に、アリオスは顔を覗き込む。 「どうした・・・?」 「…うん…ちょっと、戻しそう…」 そういいかけて、アンジェリークははっとして息を飲んだ。 「どうした!?」 急に息を飲んだ妻に、アリオスは心配そうに肩を抱き寄せる。 「-----赤ちゃんが…、出来たかも・…」 「え!?」 二人は互いの顔を見合わせて微笑みあう。 その会話を後ろから聞いていた、列席者オリヴィエは、ほくそえんでしまう。 ッたく…。 陛下夫妻は、結婚式に、子供が出来たと判るみたいだね〜。 レヴィアス様も、結婚式で出来たのが判ったんだもんね〜、ホントは〜! また、新たな幸せが女王一家には訪れようとしていた----- |
ハードボイルドとわし
Lynne Sawamura様の『BAGDAD CAFE』開設記念のお祝いです。
リクエストは、「DESPERADO」の続編で、アリオスが、愛する妻子を護る為、
再び、ヴィクトール、オスカーたちと戦いに挑んでいく…。
をテーマにしたものの完結編です。
「DESPERADO」の続編ということで書かせていただいた物語は、
ラヴラヴだけれども、お互いに支えあって、決して依存はしない関係を描きたかったので、
アリオスの活躍が二の次になってしまったことをお詫びします。
この二人に関しては、計画として、この話の前に当たるものを、ハードボイルドは抜きで書きたいと思っています。
リクエストを頂いていた「マタニティーブルー」「出産編」
この二人は、私にとっても「宝物」のようなものです。
再びかけてよかったと、今は痛切にそう思っています。
作品の順番には、空山樹様の「DESPERADO〜ANOTHER〜」「DESPERADO」「I WON’T LAST A DAY WITHOUT YOU」
「ALWAYS」
そしてこの「ACE OF SPADE」となります。
さらに近日発刊予定の同人誌「DESPERADO〜完全版」にて、アリオスの監察官になる前夜の話が掲載予定となっております。
あわせて読んでくださると、幸いです。
ここまでお読みくださいました皆様、リクエストをしてくださいました
Lynne Sawamura様に心からの御礼を申し上げます。
有難うございました!!
2001年8月23日 木曜日 21:02:03、雪野ちんく拝(tink)