上級者編

  チョークノブ


チョーク 43年式から数えると、チョークノブは3種類ある。絵と輪が入っていてなおかつ”CHOKE“の文字の入っているもの。絵と輪が入っているもの。そして絵のみのものがある。現在補給されているチョークノブは44年式用。部品番号は43年式と同じで出てきます。

  シガーライター

 スイッチノブに於いて43年式が輪付きなのに対して44年式は輪がなくなっていると前述しました。そして、特にシガーライターに於いては、描かれている煙草の向きが違います。(写真)確認した所ではミニエースに装備されている物と同じ物です。
44ライター43ライター左が44年式用、右が43年式用。タバコの煙が立ち上るようにみると、タバコの向きが違うことがわかる。


  ターンシグナルリレー

リレー30用 法令によりターンシグナルの点滅する速度が速くなるように変っています。これに対応するために、11型の初期にはそれ以前の年式と形は変わらないが、点滅するスピードが速くなっている従来型改造のターンシグナルリレーが装備されています。11型の後半から22型までは、KP30のターンシグナルリレー(写真)と同じものを使用しています。このスピードが速くなったことで、良く言えば近代的な感じに。悪く言えば、スポーツ800の持つクラシカルな感じは相当スポイルされています。それ以前の年式のリレーと互換性あり。しかし、現在は代替されており、今風のリレーになっています。動作は確実でいいが、雰囲気を重視する向きにはお勧めできないものです。

  インナーフェンダー

インナーフェンダー フロントアッパーアームのアッパーボールジョイントのグリースニップルの逃げ(写真)部分に違いがあります。インナーフェンダーとは別体のドーム状のパーツが溶接されているのが43年式の前半まで。43年式後半から44年式全てはこの逃げがインナーフェンダーと一体になっています。しかし、その逃げが充分でないのか、はたまた車高を低くして走った車だからなのか、この逃げにグリースニップルが当ってしまい変形している車が多い。中には明らかにぶち破っているものもあります。44年式はフロントサスペンションが底着きしやすいと言われ、44年式だけサスペンションの各種数値が違うという話も耳にしますが、この辺が原因なだけであると思われます。これはインナーフェンダーのプレス型を新たに作ったという事を物語るのか?

 ウインドシールドの年式

 スポーツ800には窓ガラスが6枚ある。そのガラスを良く見てみると、製造された年が西暦の下2桁で表記されています。この表記が44年式なら全て「69」と入っていてもおかしくないが、部分によっては「68」と入っています。なお、後から補給された窓ガラスにはこの年式は入っていません。

  タコメーターのデンソーマーク

 タコメーターの下の部分にトヨタの電装の会社として御馴染みのデンソーの古いCIが入っています。44年式以前ではここが筆記体のような字で「DENSO」となっているのに対して44年式は全てNDマークとなっています。厳密にいうと、このメーターを作った時期が43年10月のものからNDマークとなっています。
NDマーク これは日本電装が43年10月から、それまでメインに使っていたCIを「DENSO」としていたのから「NIPPON DENSO」と変えたために起ったものです。当然タコメーターの所に入るCIもこの例に倣って入るべきものですが、これをそのまま入れたのでは入り切らない。そのために別のCIであるNDマークを入れたということです。このNDマーク、「DENSO」のマークとは別に昭和36年ごろから使っているもので、社員のバッチなどに現在も使われているマークです。コンタクトブレーカーやワイパーブレードなど、主に小さい部品にメーカーの表記として使われていた。それがメインのCIが変ったことにより、その使用範囲が広がったためにこのような微細な仕様変更が起きたという訳です。ディストリビューターキャップやヒーターなどにも同じような例が見られます。どちらに価値を求めるかは人それぞれですが、部品の作られた時期を特定するために必要な知識のひとつです。

ヒーターハーネス 

 ヒューズボックス移設に伴い、ヒーターハーネスもそれ以前のものとは別設計になります。しかし、43年式のものを無理やり使っている例もあり、そこから数えると都合3種類存在することになります。
 44年式用として前半に生産されたものはそれ以前のものと違い、メインのヒューズボックス移設に伴ってヒーターハーネスの5Aのヒューズがキャビン内、丁度ステアリングコラムの上に移動されています。そしてパーツリストで見るもののように、途中でギポシを介して2分割できるものです。
 後半に生産されたものは5Aのヒューズボックスの位置は前半に生産されたものとそのまま同じですが、分割できない一本物のハーネスになっています。
 そして、43年式までのヒーターハーネスを無理やり使っているもの。このタイプは、44年式と同様、5Aのハーネスはエンジンルーム内にありしかしメインのヒューズボックスは車内にあるという変り種です。そして気をつけなければならないのは、このハーネスの違いは11型だから43年式までのもの22型だから44年式用後半のタイプを使用している、という訳では必ずしもないようです。 これはヒーターが当時限りなくディーラーオプションだったためにこうなったものと思われます。当時在庫していたものが、新しいものだったか古いものだったかという違いだけでこれだけの差異が出たものと思われます。
この5Aのヒューズは比較的切れ易く、全年式を通じてスポーツ800、パブリカの燃焼式ヒーターの泣き所となっています。だからと言ってヒューズ容量増しをすると本当に泣いてしまうことになりかねないのでお勧めできません。44年以前のスポーツ800はこのヒューズが切れた場合、一旦を降りて→ボンネットを開き→ヒューズボックスを開けて→ヒューズを交換する、というプロセスを踏まないと復旧しません。しかもこのヒューズが切れるヒーターは往々にしてメンテナンス(セーフティースイッチのポイントギャップ調整)が不備であることが多く、ヒューズを換えたところでまた切れることは必至。切れればまた再び同じことを繰り返すことになります。
 しかし、44年式は室内にヒューズボックスがあるので、室内にいながらにしてヒューズ交換ができます。例えば、信号待ちの程度の時間があればヒューズ交換ができ非常に便利です。これなら幾らヒューズが切れても怖くない。同じ事を繰り返してもいくらか手間は省けるようになっています。

  コーションプレート

コーションプレート 運転席のドア前側にコーションプレートが付いています。これは、昭和44年4月施行の保安基準に則った車であることを意味するものです。このコーションプレート、生存している例はほとんどありません。まず、オリジナルペイントであること。次に使用中剥がれることがなかったこと。この条件をクリアしても、色落ちしている場合がほとんどです。画像にあるコーションプレートは、筆者の44年式の塗装下から奇跡的に発掘したものである。少なくとも一度、右フロントフェンダーを塗りなおしているようで、手抜き作業のおかげで日の目を見ることが出来た。

ボルテージレギュレーター

ボルテージレギュレータ なぜか−33010という品番のボルテージレギュレータが44年式には多い。UP系車両のパーツリストを見ても、過去に使われていたという記録がありません。画像はワンオーナー車から撮ったもので、交換など一切していないとのことから、これがオリジナルであることがはっきりしている。