44年式を大きく分類する

フルフロー2Uエンジン 44年式スポーツ800と他の年式との差異で最も大きいのは、サイドマーカーやヘッドレストと言った内外装での装備部品であることは今までご説明してきた通りです。しかし、その44年式の中でも大きく差異のある部分、それがこのエンジンとリアアクスルの組み合わせです。残念ながら一見しただけではこれを全て見分けるのは不可能ですが、研究により大体のところは判明しました。只でさえ少ない44年式ですが、エンジンとリアアクスルとの組み合わせによって、実は大きく三つに分類することが出来るのです。
 ここでは便宜上、その三つを11型12型22型と種類分けします。説明するにあたって旧海軍機の型式の表記例がわかりやすいのでこうさせていただきました。前の数字はシャーシの、後ろの数字はエンジンを表し、改変されれば数字が進みます。もちろん正式なものではありませんのでご承知おきください。尚、それらに付随するトランスミッション、ディファレンシャルは42年末期のスポーツ800用をそのまま使用しているので、ここでは説明を省きます。

各型の解説

44年式 11型 

甲型 エンジンはパーシャルフローの2Uエンジンを装備。エンジンナンバー 2U−619494までのエンジンです。とかく希少と言われる44年式ですが、こと44年式のみで考えると、パーシャルフローエンジン装備車の方が希少です。ただ、生産されたスポーツ800全部の中でのフルフローエンジン搭載車が希少なことに変わりはありません。
 リアアクスルはデフキャリアまで含めて42年末期と同じものを装備しています。言ってみれば、車体は44年式になってはいるが、中身は43年式という車です。この傾向は装備品などにも随所に見られ、近代化改装した44年式とは言ってもそれ以前のスポーツ800同様、部分的にクラシカルな雰囲気を醸し出しています。44年2月から4月生産のスポーツ800に多く見られますが一部にこれより後に生産された車両にもこの仕様のものを散見します。44シリーズ中、最も生産台数が少ないモデルです。

44年式 12型

乙型 エンジンはフルフローの2Uエンジンを装備。エンジンbQU−619495からのものである。ラインオフ時からフルフローエンジンを装備しているスポーツ800が44年式には存在します。このエンジンは同じフルフロー仕様のミニエースやUP30パブリカのエンジンとも仕様が異なり、カムシャフト等スポーツ800用専用パーツの一部はそのままで、オイルラインがフルフローになったエンジンです。ヒストリックカーレースに出るスポーツ800のチューンド2Uエンジンの基礎としてお手本のような仕様になっています。まさに「究極の量産2Uエンジン」と言えます。しかし、実はそんなに気合いを入れて作ったのではなく、部品の都合でたまたまそうなってしまったと言うところがすごいです。
 リアアクスルは基本的に42年末期からの構造を踏襲。この型の44年式は44年5,6月生産のスポーツ800に多く見られます。余談ですが、筆者の所有するスポーツ800はここに属します。

44年式 22型

丙型 エンジンは12型と同じくフルフロー2Uエンジン。リアアクスルのドライブシャフトにはラインオフ時から同時期のミニエースのものを使用しています。ブレーキ関係の部品、デフのリングギア、ピニオンギアなどの専用部品はスポーツ800と同じですが、サイドピニオンはスプライン径の大きいミニエースと同じものを使用しているために生じた変更です。
 リアアクスルハウジングはそのままトヨタスポーツ800用ですが、デフのサイドピニオンをミニエースに使用されているものに換えられているために太くなったスプライン径に合わせてドライブシャフトが同時期のミニエース用のものに交換されています。それに伴って、リテーナーもミニエース用に変更。オイルシールは従来のトヨタスポーツ800用と同じ。ホイールベアリングもミニエースの径が大きいものを使用されていると思われましたが従来品と同じものです。修理などの際の部品調達には若干注意が必要となります。これはそうしたかったからではなく、部品の都合でたまたまそうなってしまいましたものと思われます。尚、この22型が44年式シリーズ中、一番多いモデルです。44年7月以降生産終了までのスポーツ800に多く見られますが一部それ以前に生産された車両にもこの仕様が散見されます。