クランクケース

 フルフロー2U用クランクケースはパーシャルフロー2U用クランクケースを改造してフルフロー用として使っているものと思われます。
 フルフロー2Uのクランクケースのオイルパン部分横にクランクケースの品番が浮き彫りになっています。これを読むと−11021という品番。−11021という品番のクランクケースはミニエースが生産されるようになって、ミニエースのエンジンマウントのボルトが入るように改造されたクランクケースで、ミニエース、昭和43年頃のUP20パブリカ用の品番です。後半のパーシャルフロー2Uのクランクケースも実は同じ品番が浮き彫りになっていまのす。と言うことは、この−11021というクランクケースに2Uの油温計のゲージが入る穴の加工が成されているクランクケースが部品番号上は−11012という品番の2U用クランクケースであるということになります。
オイル穴 このパーシャルフロー2U用のクランクケースを更にフルフロー用に改造したために、−11021という品番はそのままでフルフロー2Uのクランクケースとして使用されているのだと推測できます。パーシャルフロー用からフルフロー用への改造と言ってもクランクケースだけで見ると簡単です。両者の違いはタイミングギアカバーから流入するオイルのオイル穴があるか無いかの差です。クランクケースを正面から見て、向って左側にオイル穴をあけて側面の穴をプラグで塞げばフルフロー用のクランクケースとなるのです。この位の改造ならメーカーに取って造作も無いことで、折角2U用として作った(つまり油温計のゲージの入る穴のある)クランクケースは有効に使えることとなります。
クランクケース ミニエース、UP30の極初期フルフロー2Uエンジンの、パーツリスト上での品番は−11040となっています。クランクケースの下、オイルパン部分に浮き彫りになっている品番もこれと同じです。このクランクケースをベースに2U用としたエンジンにはいまだお目にかかったことはありません。

  タイミングギアカバー

 補機編のオイルフィルターケースと同じく、ここに入るオイルパイプを止めるユニオンボルトのネジピッチが違うために、全年式を見てみると、同じフルフローのエンジンでありながら−11010と−11011という2種類のタイミングギアカバーが存在します。フルフロー2Uエンジン用は極初期のものとなりますから、−11010というタイミングギアカバーです。それぞれ互換性はありますが、タイミングギアカバーとユニオンボルトは組で使用しないといけません。もちろん、ここで使うユニオンボルトは補給打切ですので絶対に捨ててはいけません。

  クランクシャフト

 UP30とミニエースのパーツリストを見比べてみると、UP30は全年式(1969年4月から発売)を通じて−11012という品番のクランクシャフトだけを使用しています。それに対してミニエースは1969年9月まで−11011という品番のクランクシャフトを使用していて、その後同じ物を使用していることになっています。なお、これら2つの互換性はあります。ではこの二つのクランクシャフトの違いは何かというと、クランクピン上に開いているオイル穴の数が、−11011が1つなのに対して−11012が2つになっている点です。ここでは便宜上−11011を1穴クランクピンクランク、−11012を2穴クランクピンクランクと呼ぶことにします。これによって2穴クランクピンクランクはクランクピン、コンロッドメタルへオイルを供給する機会が増えることになります。ここで注意しなければならないのは、オイルポンプが同じ以上オイルの供給される量は同じなので、飽くまでも供給される機会が増えた…という事なのです。これにより、クランクピン、コンロッドメタルの油膜切れが比較的少なくなリ、耐久性が向上したと思われます。
 さて、問題なのはフルフロー2Uの場合1穴か2穴、どちらのクランクシャフトが使われたかということです。希望的観測も含めて推察するに、随所にUP30の2Uの特徴を有するのと比較的高速型のエンジンであるUP30用の2Uエンジンに使われていたぐらいだから、いわんや2Uをや…。という事でこの2穴クランクピンクランクが使われているものと信じたいところです。これについては未確認ですので、確認された方からの情報をお待ちしています。

  シリンダー

 44年式の謎の一つがこのシリンダーです。何故か、フルフロー2Uのシリンダーには−11020というミニエース、UP30パブリカと同じ品番の打刻のあるシリンダーが使われている個体が多いのです。額面どおり受け取ると、これでは2Uの9:1という圧縮比は出ないことになります。しかし、実物はパーシャルフロー2Uの音と遜色のない、十分圧縮の出ているエキゾーストノートなのです。
 これについて立てられる仮説としては、
1.鋳造の部品番号上そうなっているだけで、実は2U用になっている。
2.シリンダーはパブリカ用でもコンプレッションが出る特製ピストンが使われている。
3.正真正銘パブリカ、ミニエース用である。
これについても目下研究途中であります。可能性が低い順でいくと、2.1.3という順番でしょう。実際に自分の目で見た限りでは2の選択肢はなしです。