1973年8月、ミニエース用2U最終進化へ
この時、ミニエースのエンジンに現行の車と同じ形式のダイヤフラム式のクラッチカバーが搭載されました。このクラッチカバーはそれまでのレバー式クラッチカバーに比べて、重量は軽いのに圧着力は高く、しかもクラッチディスクが大きくなっています。フルフローのオイル経路、高い工作精度、性能の向上したクラッチ。これらをもってミニエース用2Uエンジンは最終進化を遂げたのです。
ミニエースの苦悩は実はエンジンだけでなく、このクラッチを含む駆動系にもあったのです。もとが乗用車の駆動系の上に初期の設計以上の重量を積むことになり、クラッチ焼けなどのトラブルが出ています。これの対策として圧着力の高いスポーツ800用のスプリングを付けたり、クラッチディスクのフェイスの材質を換えたり、フライホイールを換えてみたりといろいろ手を尽くしましたが抜本的な対策にはならず、結局ダイヤフラムのクラッチカバーにしています。これのための代償は大きく、これに前後してフライホイール、クラッチディスク、クラッチレリースベアリンク、レリースベアリングハブなども変更となっています。
ところがこれが幸いして、現在ではヒストリックカーレース用の車両にはこのクラッチカバーを装備するのがスポーツ800のチューニングのセオリーとなっています。クラッチを操作するときの踏力が少なくなることからレース用車両だけではなく、街乗り仕様の車にも十分使える重宝なものです。ただし、装備する際には前述の通りかなりの部品が交換されているので部品集めにはかなりの注意が必要です。
エンジンが「浮き彫り2U」であればこのダイヤフラムクラッチ装備であると一部では言われていましたが、必ずしもそうではないことがこれでわかります。
ミニエース2Uエンジンのその後
1975年11月、在庫整理のための1カ月を残して遂にミニエースはその生産を終えました。ライトエースやハイエースなど同じような用途の車種が大して変わらない値段で手に入る中、昭和51年の排気ガス規制はもとより通るはずもなく、そのぎりぎりまで生産されていただけでも奇跡に近いことでしょう。しかし、ここでその命を絶ってしまうほど、われらがフラットツインエンジンは柔ではなかったのです…。
この後は「クーラー駆動用サブエンジンの系譜」をご覧ください
