1972年5月、無鉛化対策開始
白金触媒を侵さない無鉛化したガソリンの普及に伴って、ミニエースのエンジンにも無鉛化対策がなされました。といっても、バルブシートの材質が変更になっただけです。バルブガイドの方の材質変更があってもよさそうですが、結局最後までそのまま終っています。エンジンナンバーは2U−690741からです。
しかし無鉛化よりもミニエース用2Uエンジンにとってもっとも大きい進化は工作精度が飛躍的に上がったことです。それが証拠に実はクランクケースに付くカムシャフトベアリングが廃止になり、クランクケースを形作るアルミ合金がそのままカムシャフトを支えています。
それまではホワイトメタル製のカムシャフトベアリングが別につきました。(写真参照)このベアリング、コンロッドのベアリングと比べれば比較にならないほど受け持つ面圧は少ないのです。素材の面ではクランクケースのアルミ合金で十分支えられるほど。ならばなぜ必要だったかというと、それまでの量産用の工作機械では一〇〇分の一ミリ単位の精度が出ずらく、精度だけは必要なこの部分はわざわざ別に作って精度を保っていたのです。それがこの時期からは必要な精度が出たという訳です。昭和46年頃からトヨタの部品は精度を上げてきたのですが、その流れがようやくミニエースとして用エンジンにまで及んだのです。
他に変更されたところは30パブリカに搭載する際に必要なエンジンスタビライザーの取り付け穴が埋められたこと。クランクケースの品番も変更されていて、−11041という番号に変更されています。このクランクケースを見分ける方法としては、クランクケースの左側に新しく「2U」と書いてある浮き彫りが増えています。これを俗に「浮き彫り2U」エンジンといって、性能が安定しているエンジンとしてファンの一部では重宝がられています。ただし、このエンジンをパブリカ、スポーツ800に搭載する際には注意が必要です。前述の通り、スタビライザーを付けないように加工されていますから、そのままエンジンを搭載すると振動が大きいままどうにもならなくなります。
従来、六角ナットが頭についたオイルフィラーキャップがあればそのエンジンは無鉛化シリンダーヘッド装備の車とされていました。しかし、これはミニエースに搭載したときに、オイルフィラーキャップを開けやすくするための処置なので、必ずしもそうでありません。むしろ、この「浮き彫り2U」であるかどうかがはっきりとした判断材料であるとここに明言しましょう。尚、六角ナットのあるオイルフィラーキャップが使われ始めた時期については現在不明です。
