ミニエース用パーシャルフローエンジンの苦悩
「実用的で、使いやすく、親しめる車、言い換えれば、パブリカクラスの車で、十分かさも積め、しかも機動性に富み、経済的で、ほのぼのとした愛情をおぼえるような車」トヨタ技術昭和42年12月号にあるトヨタミニエースの紹介です。「パブリカクラスの車で十分かさも積め」というのがポイント。簡単に言えばパブリカのコンポーネント(主に26パブリカバン、トラック)をそのまま使用し、実用的なトラックとする。これがミニエースの設計コンセプトです。それが証拠に極初期のミニエースのパーツリストを見て、ことエンジンだけを例に取ると20パブリカと違う所と言えば、オイルレベルゲージが別のものになっているという点だけで、後のミニエース用2Uと判断する大きいポイントであるベンチレーションチューブに至ってもこの時は20パブリカと同じです。
同じくトヨタ技術にミニエースのエンジンについてこんな記述があります。「キャブオーバートラックには不利なエンジン過熱が生じないよう各部の温度測定を繰り返してエンジンルームの通風を改良した。この結果、油温、プラグシート温度など最高速でいずれも120℃、210℃とUP20とほぼ同じ温度におさめることができた。」つまり空冷エンジンに限らずエンジンをキャビン下にレイアウトすれば、温度で悩まされることは当然わかっていたのです。ここで大きい間違えにお気付きでしょうか?油温、プラグシートの温度を最高速度での走行時を想定して計測し大丈夫と言っている点です。最高速度時とはつまり、絶えず冷却風が十分に送られている状態で、という意味です。走れば分かることですが最高速度で走っている、しかもトラックが、という使用状況は希で、想定した速度以下で走っていることの方が、車の性格上多いと思われます。エンジンでみれば、十分な走行風が来ない。しかもキャビン下にエンジンを置いたためにエンジンの過熱が起こる、これは必然と言えるでしょう。ここから始まったのです。ミニエース用2Uエンジンは冷却性能改良の歴史です。
早くも発売後3か月で最初の改良の手が入ります。強制冷却ファンの大きさを変え、クーリングシュラウドを見直して大型化しました。しかし、オーバーヒート傾向は治まりません。フルフロー化された後もクーリングシュラウドの見直しをしたのですが、補機での冷却効率のアップに限りがあるとわかり、抜本的な改良を加えたないといけない…。これによってフルフローエンジンの誕生となった訳です。