釧路南東部の短時間強雨(2006/6/18)

茶内原野の降水の経過
 6月18日夜、釧路地方など北海道東部は大気の状態が不安定となり、 激しい雨に見舞われた。中でも釧路南東部には発達した雲が入り続け、 浜中町・茶内原野では21時・22時・23時までの1時間降水量がそれぞれ 39.5ミリ、51.5ミリ、28ミリを記録、3時間降水量は119ミリに達した。 21時30分までの1時間降水量は58ミリと観測史上1位の記録を更新した ほか(これまでの記録は35ミリ)、日降水量も138ミリに達し、5月の 1位の記録を更新した。また、厚岸町・太田でも21時40分までの1時間 降水量が観測史上1位となる38ミリを記録した。  ・18日の雨の記録(気象庁HPより引用)・釧路地方の観測ポイント(気象庁HP)  下の図は18日21時の地上と850hPa天気図、さらにこの時間を対象とし た850hPaの予想天気図(JMA/RSM・18日9時初期値の12時間後)である。 地上天気図では北海道の南東海上に低気圧が解析されている。  850hPa天気図を見ると、Lマークはその南の低気圧に対応したものに しか打たれていないが、高度の低い部分(低気圧に相当)が北海道地方 にのびている。また、稚内・札幌・秋田・根室の風向は北海道を中心と した低気圧性循環を示している。そして、この図で注目されるのは根室 の風が南南東で17ktを観測していることである。  RSMの850hPa予想図では釧路沖〜知床半島方面に南よりの風と北よりの風のシアが見られるが、いずれも弱く、収束はそれほど 大きくない。しかし、根室の観測データからこの周辺の収束量が予想よりも大きく、雨雲の発達しやすい場だったと推測できる。   6月18日21時・地上天気図         6月18日21時・850hPa天気図        6月18日21時対象・850hPa予想天気図    
根室のエマグラム・6月18日21時
 右は21時の根室のエマグラム。これを見ると930hPa付近に強い逆転層 があることが分かる。この時点で根室の風は東よりだったが、道東は全 般的に北よりの風で、気温は10度以下の所が多かった。こんなに低い気 温でも激しい雨が降りうるのか? ただ、本事例においては地上の気温 はまったく参考にならない。問題は逆転層の上の成層状態にあるのだ。  逆転層の上を見てみると、830hPa〜550hPaでは気温減率が比較的大き く、条件付不安定な気層である。すなわち飽和した空気は上昇していく。 そして、気温と露点温度の線が重なっていることから一目で分かるよう に760hPa付近から下はほぼ全層にわたって湿度100%。飽和している。  飽和していても持ち上げる仕組みがなければ・・・、と望み(?)を かけてみても、850hPa天気図で見たようにこのエリアでは収束が強い、 ということはぶつかった空気は持ち上がっていく。  下層が湿潤で、条件付不安定で、大気を持ち上げる仕組みがある、と これだけ条件がそろっているのだから、対流雲が発達するのも当然! と後からは言える・・・・。しかし、収束がもう少し強いと考えても、 あのRSMから強雨のシグナルを読み取ることが出来ただろうか。 ・根室の高層データ(エマグラムとあわせ、ワイオミング大学のHPより) ・レーダーエコー図