住宅街から離れた所に存在するボロ小屋。この中に二人の男がいた。 「あ〜っ、悔しいでヤンス!!何でヤンスかね、あの草薙京とか言う奴 は!とっても生意気でヤンス!!」 片方は小柄でカギ爪をつけていた。以前、京の学校を襲ったチョイだ。 「まあ、気持ちはわかるがよ。そうカッカするんじゃねえぜ、チョイ」 大柄な男がチョイをなだめる。彼は常に黒く、大きい鉄球を持ち歩い ていた。 「チャンの旦那は奴に会ってないから、そんな事が言えるでヤンスよ」 チョイは完全にふて腐れてる。チャンと呼ばれた男がチョイの肩を叩 く。 「しっかりしろよ、俺達はタッグで闘って初めて真の実力を発揮するん だろうが…」 チョイがその言葉を聞き、チャンの顔を見る。 「そ、そうであったでヤンスね。チャンの旦那、今度はあっしらが奴ら を見返す番でヤンスね!!」 「そういうこった。おい、ちゃんとKOFレンジャーの事は調査済みな んだろうな」 「もちろんでヤンスよ。奴らの弱点はこのメモ帳に全て収められてるで ヤンス。チャンの旦那でもわかるように…」 チョイがメモ帳を取り出す。 「おお、ありがてえ。俺は頭が固いから…、って何言わすんだよ、チョ イ!!」 だが、チャンもまんざらでもない、という顔をしていた。 「クックック、KOFレンジャーめ。あっしを本気にさせた事、後悔さ せてやるでヤンス」 チョイの不気味な笑いがボロ小屋内に響き渡った。
「ここが基地か。意外と地味だな」 キム達に連れられ、KOFレンジャーの基地にやってきた京。 外観は4・5階立てのオフィスビルそのものであった。 「あのなぁ、京。これは敵に本拠地を見つけられないようにする為にわ ざと地味な場所を選んどんのや。そんなTVに出てくる派手派手な基地 じゃ、すぐに見つかって周りの人間に迷惑をかけるのがオチやないか」 拳崇が自慢気に言う。 「あら、拳崇。あなたも入りたての頃は京さんと同じこと言って、キム さんにそう教えられたじゃない」 アテナがクスッと笑う。 「な、んなこと…あらへん……よ」 拳崇が今度は自信無さげに言う。 「ハハハ、無理すんなよ。拳崇」 京が拳崇の肩をポンポンと叩きながら笑う。 「くぉら、京。お前は後輩やろが。先輩には敬語を使わんかい!!」 「るせぇ、面倒くさいんだよ。第一、お前だってここに向かう間、キムに 敬語使ってなかったぜ」 拳崇の注意に反論する京。 「ええい!ああいえばこういうのう、お前は!!」 「ほら、二人とも行くぞ!」 二人の言い合いをキムが制す。 「さあ、中に入りましょう」 アテナの言葉で中に入る4人。 エレベーターに乗り、そのまま地下へと向かった。 エレベーターを降りると、暗い廊下が待っていた。 「な、なんだよ、ここは!?薄気味悪い場所だな」 京が驚く。 「ここに来た一般人の興味をなるべく削ぐように、あえて恐怖心を仰ぐ廊 下にしている。もっとも、部屋はもうちょっと奥だがね」 キムが答える。 少し先に進むと、つきあたりに一つのドアが見える。 「ここが司令官の部屋になっている」 キムが部屋を紹介する。 「司令官?」 「…失礼します」 キムがドアをノックし、部屋の中に入る。キムが入るように手で誘い、 後に続く三人。 部屋はさっきの廊下とうってかわって、かなり明るかった。 コンピューターや電話といった機器もあり、普通のオフィスと変わらな い。 司令官の席には緑のベレー帽をかぶった中年の男がいた。右目の方には 眼帯をしている。 「お伝えしたレッドレンジャーの草薙京君です」 キムが京を紹介する。 「…なるほど。話はキム君から聞いているよ、草薙君」 ベレー帽の司令官は静かに口を開く。彼が喋るごとに周りになぜか緊張 が走る。 「私の名はハイデルンだ。よろしく…」 「あ、よろしく…お願いします」 さすがの京もハイデルンの前では萎縮してしまうようだ。 「できれば今すぐにでも草薙君に今回の任務を話したいが、どうやら五人 目もこっちに向かっているようだ」 「五人目!?」 「見つかったのですか?」 皆、このハイデルンの発言に驚いた。 「うむ。今、レオナが連れてきている」 その時だった。廊下の方から低く通った男の叫び声が聞こえた。 「ええい、離せ!俺はこんな下らん話にはつきあわんぞ!!さっさと言う 事を聞かんと殺すぞ!!」 「あなたを連れてくるのが私の任務。命を賭けても遂行するわ」 ドアが勢いよく開く。青髪のシャギーの女が赤髪の男を連れてきた。 「司令官、例の人物を連れてきました」 女は敬礼をする。 「うむ、ご苦労だった。レオナ」 「では、私はこれで…」 レオナと呼ばれた女が部屋から出る。 赤髪の男の方は乱れた服を直す。 目つきもとことん悪く、とても正義の味方には見えなかった。 キム、アテナ、拳崇も唖然としている。 だがそんな中、京だけは複雑な表情をしていた。まるでその男と以前に 会ったことがあるかのような感じで。 赤髪の男も京の方を見る。 すると、途端に表情を変える。そして、急に笑い出した。 「ククク、ハハハハハ、ハ〜ハッハッハッ!!何故ここにいる、京!!」 「それはこっちが聞きたいぜ、八神!!」 二人の間に戦慄が走る。
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