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 手のひらから紅い炎を出す京。
「炎が、お前を呼んでるぜ!!」
 対する赤い髪の男、八神庵も手のひらから炎を出す。だが、それは京のそ
れとは違い、蒼く染まっていた。
「ならば燃え尽きろ。潔くな!」
 両者、炎を消す。
お互い、構え始める。その時だった。
  二人の間にキムとアテナが割って入った。
「あなた達は今日から仲間です。ここで喧嘩は許しません」
「もし、やるのであるなら先に私達を倒してからにして下さい!!」
 沈黙が流れる。だが、後に構えを解く二人。
 庵が口を開く。
「フン、命拾いしたな。京」
 拳崇はこの二人の関係にいささか疑問を感じた。
「なあ、京。お前、こいつと知り合いなんか?」
「まあな。こいつとはガキの頃から知ってる」
 拳崇の質問に京が答える。
「え!?じゃあ、幼馴染みなんですか?」
 アテナが驚く。
「いや、そういうわけでもないんだけど…」
 京が返答に困る。
「俺と奴の一族が昔から敵対関係にあるだけだ。まあ、俺にとってはそん
なこと関係ないがな…」
 庵が代わりに答える。
「さて、そのぐらいでいいかな?八神庵君」
 ハイデルンが口を開く。
 庵はハイデルンの方を向く。
「貴様か、俺をこんなところに呼んだのは…。一体、何が目的だ!?」
「草薙君、八神君。『オロチ』というのを知っているかね?」
 ハイデルンの問いに表情が変わる二人。
「そういや、学校でチョイが『オロチ』がどうだ…とか言ってたっけ」
 庵は喋らない。だが、この豹変ぶりから明らかに知っている事が見て
とれた。
「実はその一族が、またこの世界で暴れ始めたのだ」
「『オロチ』…」
 京がつぶやく。
「『オロチ』はその昔、草薙君・八神君・それに神楽という者の一族によ
って封じられたらしい」
「な、なんやて!?お前らの一族ってそんなに凄かったんかいな」
 拳崇が驚きの目で二人を見る。
「だが、その封印がある日、何者かによって解かれたらしい。もしこのま
ま奴らを野放しにすれば、世界は壊滅の危機を迎えることになろう」
「で、その軍神に選ばれた俺達が再び封印してくれってわけかい?」
 京が聞く。
「いや、我々の任務は『オロチ』の封印ではなく、討伐だ」
「フン、『オロチ』討伐か。確かに奴らは俺にとっても目障りな存在
だ。本来はこんな奴らとは組みたくない所だが、今回は特別に受けて
やろう」
 庵が承諾する。
「そうか。頼んだぞ、八神君」
「但し、契約期間は『オロチ』討伐までだ。その後は俺の好きに行動
させろ」
「わかった。約束しよう…」
 ハイデルンも庵の約束を呑む。
「草薙君もいいかね?」
「いいもなにも、もう狙われてんだろ?俺達。ならやるっきゃねぇ!!」
 京もハイデルンの依頼を受ける。
「よし。それではこれより『オロチ』討伐作戦、本格実行に移る。わ
かったな!?」
「はい!!」
 庵以外の四人が大きく返事をする。
「八神君、返事は…」
 キムが注意を促そうとする。
「フン、勘違いするなよ。あくまで、貴様らは『オロチ』討伐の手駒と
しか思っておらん。貴様らも仲間だとか、そんな風に思わない事だな」
 そう言うと、庵はそのまま部屋を後にする。
「ちょっ…、八神君!!」
「気にしないでくれ、キム。あいつは、もともとああいう奴なんだ。こ
ういう団体行動を極端に嫌ってな…」
 京が呆れたように言う。
「全く、前途多難ですね…」
 キムがつぶやく。
 その時だった。基地内のサイレンが鳴る。
『事件発生、事件発生。B−3地区にて鉄球を抱えた大男とカギ爪を装
着した小柄の男が一般庶民達を襲ってるとの通報あり。繰り返す…』
「小柄の男、カギ爪。まさか…」
 京は放送を聞き、先程、倒し損ねたチョイを思い浮かべた。
「こうしている時間はありません。行きましょう!京君!!」
「お、おう!!」
 キムに促され、現場に向かう京。
 五人になってからの初仕事である。

 ハイデルンは戦士が揃ったとはいえ、団結力が皆無である事に一抹の
不安を覚えていた。特にその不安の一番の原因である草薙京・八神庵に
対し…。

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