ブックレビュー
読書ブームが(今のところ)長引いてる管理人が読んだ本をレビューするコーナーです。





川柳侍 小松重男(新潮文庫)

巷では川柳こと五七五の万句合(まんくあわせ)が大流行。夢中なのは町人ばかりではないらしい。
なんと、どこぞの大名の御隠居まで吉原でネタを仕込んで密かに万句合に投稿しているって?
おかげで江戸に居続けで、帰国を促す忠義の家臣に耳もかさず、御家のことをなんとする。
武家に職人、公事師(くじし)、無宿人と、身分を越えて川柳の取り持つ奇妙な縁で結ばれた人々が繰り広げる文庫書き下ろし時代長編。(カバーより)



今で言う、投稿職人達のお話といったところでしょうか。文は難しいんだけど、それでも内容は十分に伝わるものでした。
特に、優秀作を作り、江戸中の人々を唸らせる事に快感を覚えた、無宿人の政吉の気持ちは、ネットラジオに投稿を続けている私にとって、多分に共感できた。

一時期、米太郎侍と成り行きで改名しては、ネットラジオの川柳コーナーにも投稿してた身として、他人事とは思えぬこのタイトルに、何かの運命を感じた(笑)。






人生学校〜幸せを呼ぶ生き方の秘訣124人の提言〜 宇野千代(集英社文庫)

だんな様が浮気したかな、と感じたら、めちゃくちゃにヤキモチをお焼きなさい。……結婚して初めてした浮気のときにこれを実行することです。/自分を責めたり、ひたすら頑張らせないで、眠たくなったら、さっさと眠る。その時の体の状態と、仲良くしながら生きていくことです。
―――夫婦、挫折、仕事、嫉妬、嫁姑、失恋、老い等々、宇野千代流生き方が学べる、人生学校。12講座。(カバーより)



何か、読みたい気分がしたんですよねぇ。別に病んでるわけじゃないんだけど、それでもストレスってないわけじゃないから。
で、読んでみたら引き込まれました。何か、モノって考えようだなぁって思い知らされました。
当たり前の事なのかもしれないけど、物事を別角度から捉えることによって、ストレスに感じる事も感じなくなる。人によってはプラスにすら変える事もできる。そんな事を感じた一冊です。
私もちょっとだけ、この本に書いてある事を、ほんのちょびっとだけ実行してみたら、何か、気持ち、いつもよりストレスを感じにくくなったような気がする。

ちょっとした事でつまずいた時に、是非読んでもらいたい一冊ですね。






おかしなおかしな大誘拐 阿久悠(集英社文庫)

森と湖の都市・久羅々市にヨーロッパのミニ王国ケント・クララからリン王女がやってきた。張り切った警察は水も洩らさぬ警備体制を敷く。しかし、普通の女の子のような自由や冒険に憧れる王女は、密かに宿舎を抜け出した。そこに登場する悪いヤツ……楽しい夢を見たい人の為の奇想天外スラップスティック小説。(カバーより)


実はこのカバーに書いてある内容は小説の中の小説のものでして。主人公は小説家の3人。ハードボイルド系を得意とする達磨駿介、官能小説(カマトト)を書く長者丸くに子、メルヘン作家の巨漢、風祭圭太だ。
ひょんなことで逮捕された3人が、留置所内で自分の得意分野をそれぞれ盛り込んだ合作小説を作る。その主人公こそ、ケント・クララのリン王女。

小説内の小説では、部分部分によって書き方が変わるので、そこはとても新鮮に感じた。
終わり際に、いろんなことが立て続けに起こるのもドタバタ小説らしい。

また、作家3人のいる小説内でも最後に意外な結末が待っており、一冊で二度おいしい本とも言える(と思う)。





所ジョージの私ならこうします〜世直し改造計画〜 所ジョージ(角川文庫)

もしも、一億円をもらったら……。
もしも、UFOを見たのなら…。
想像力のない人生なんてもったいない。右脳を鍛えて意識すれば何かが生まれてきます。
だけども、便利な世の中、自分の資質を考え、けっして背伸びだけはしちゃいけましぇ〜ん。
コギャルのことから地球環境問題、人生問題にいたるまで、特別書き下ろしを含んだ、最新版、トコロ流、世直し改造計画!(カバーより)



良くも悪くも(?)所さんらしさがいっぱい詰まった本。自らのスタンスを崩すことなく、いろいろな問題について、こう考えるか!とある種、感心させられるものばかり。

考えとかは現実的なものは少ないながらも、こういうのができたらいいなぁ…と、この本を通して想像するのはアリかと。






医療少年院物語 江川晴(ちくま文庫)

窃盗で捕まり、ノイローゼに悩む少年、無知のまま売春に走り妊娠した少女。家庭の愛を断たれ、犯罪をおかし、心も体も傷ついた未成年者を収容する場所「医療少年院」。
青少年による凶悪犯罪で注目されるが、現在取材は許されないその施設を調査していた著者が、それをもとに描いた作品。
院内で働き、少年達の更生に尽くすひとりの看護婦の目を通して描く、職員と少年達の愛のドラマ。(カバーより)



病院の一看護婦(看護士)から、医療少年院の法務教官という職業に転職した女性、夏川凛子が主人公の話。

心身込めた看護や心のケア、教育に対し、一筋縄ではいかない少年少女達の無慈悲な行動に裏切られようと、自らの信念を曲げる事無く、なおも心身込めて彼らに接する凛子の姿が非常に印象的。

思春期の少年少女達の心は非常に繊細。そんな彼らへの接し方のヒントがこの一冊に込められているのかもしれない。






ニッポン奇人伝 前坂俊之(現代教養文庫)

ボードレール流にいえば、人生など一行のエピソードにしかすぎないし、それ以上のものではない。
……そのエピソードがどこまで本当か、的を射たものなのか、なかには誇張されたものもあるだろうし、デマもあるだろう。
しかし、こうした傑作なエピソードや、おもしろい奇行、笑い話のほうが、より生命力を持ち、伝説となり、歴史の一部を形成していくことも事実なのである。人々は一冊の伝記よりも、一行のエピソードに魅せられる。(文庫版のためのあとがきより)


明治、大正、昭和に生まれた数十人の奇人達の奇行ばかりを取り上げた本。
今に換算すれば、何百億という金を一代で使い切ったり、気でも狂ったかの方法で借金取りを追い返したり、進んで貧乏になったり…。
とにかく、奇人達の奇行ぶりは、今では考えられないスケールの大きいものばかり。
世の偉人達というのは、ズレたところから生まれ出るのだろうか…と、この本を読んで思わずにはいられない。

さらに、奇人達の知り合いは、やはり奇人で、平気で互いに素っ裸になったりしてしまう。
類は友を呼ぶってこの事なんだろうなぁ、と感じてしまったり。

ただ、やはり奇人達の行動の数々は、私には到底真似できないし、したくもないとも思いますけどね(何)。





プロ野球よ! 日本経済新聞運動部(日経ビジネス人文庫)

スターはみんなメジャーへ流出、そして広がる球団格差……子供の憧れ、サラリーマンの娯楽の王様であったプロ野球がどっかおかしい。
その”球界裏”最新事情を日経新聞担当記者が総力取材。ファンが胸躍るプロ野球の姿をズバリ直言します。
愛するが故の叱咤激励の書。(カバーより)


野球界の裏事情を紹介すると共に、これからのプロ野球はこうあるべき、という意見をまとめた一冊。

本拠地をなくしたり、契約金を完全後払い制にする…など、現実的ではなくても、採用されれば面白そう、といった意見もある。
中には、既に実現されてるセパ交流戦の事も意見に書かれてるので、もしかしたら、プロ野球の今後の姿がここで描かれる可能性が無きにしもあらず!

私は日本ハムファンではあるんですが、この本ではあまりよく書かれてないのがちょっと残念か…(何)。






ジャッキー、巨人を退治する! チャールズ・デ・リント(創元推理文庫)

こんな都会に妖精郷が存在する? ジャッキーだって最初は信じていなかった。でもあの晩、暴走族に追い回されていた人影は人間にしては小さすぎた。小男は目前で轢かれ、あとに残るは灰と赤い帽子のみ。
そこで彼女が恐る恐るかぶってみると……見慣れていたはずの町は妖精たちで一杯! おまけにその別世界で巨人退治の大役を命ぜられてしまうなんて!
元気な現代ファンタジー。(カバーより)


何もとりえのない少女、ジャッキーが彼氏にふられ、半ば自棄気味で巨人退治を引き受けてしまったのが、物語の始まり。
別世界といってもいる所は、自分らの住んでる場所と何ら変わりない。だから、巨人の魔の手がジャッキーの親友にも普通に襲い掛かってくるわけですが…。

住んでる次元が違うわけでもなく、現実世界(?)で起こるファンタジーは、普通のファンタジーとはまた違った味わい。

これこそが現代ファンタジー? ファンタジー好きの人にはこれも読んでもらいたいかも。






紅龍よみがえる午後 嬉野秋彦(集英社スーパーファンタジー文庫)

大きな欠伸のあと、赤茶けた蓬髪を掻きむしりつつ、ゆっくりと起き上がる偉丈夫。その名は敖熾亮。ひとたび怒りだせば大洪水を引き起こし、剣を取っては並ぶ者のない荒ぶる龍神――のはずだが、かつての素行と狼藉に思うところあってか、いまや呑気ささえ漂わす温和な性格。従者の少年、咬仁とふたり、住む場所も定まらない生活を送っている。
しかし、昔の因縁から彼を追い回す者達がいた。班虎と名乗る美貌の剣士は己の技量を試すために。貞淋と名乗る女道士はある復讐の為に。(カバーより)


ジャッキー、巨人を退治するが現代ファンタジーなら、これはスーパーファンタジー…いや、それは文庫の名前ですが。
普段は呑気な主人公が、実は超がつくほどの実力者で、しかも業も背負ってる。これを見て、私は即座に緋村剣心を思い浮かべてしまったんですが、これはNGでしょうか(何)? 髪も赤茶だし…。

とはいえ、話自体も面白く、普通に引き込まれます。主人公の熾亮と美形のライバル班虎が、適度な距離を置いた関係てのがまたいい!

ん? そういや、龍の熾亮と美形の虎、班虎。密かに龍虎の拳要素も混じってますか? 嬉野さん!?

嬉野さんがシナリオ担当しているKOFマキシマムインパクト2もよろしく!!
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