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「…誰だ、てめぇは?」
 男が暗闇の中で話し掛ける。男の眼前にいたのは神々しい光を放つ女であった。
「私は軍神アテナ。草薙京、汝は選ばれし者。間もなく世界は邪悪なる蛇により破滅の危機を迎える。汝はこの事態から世界を救うのだ」
 突然の事に何が何だかわからない京。
「ちょっと待てよ。何で俺じゃなきゃいけねぇんだ!?理由を聞かせてもらおうか!」
 京が軍神アテナに詰め寄る。彼女の返事はこのようなものであった。
「理由…、それは後々汝にもわかることだ。今は迫り来る危機に備えるのだ」
 彼女が答え終わるや否やまわりが光に包まれる。
「待て!待ちやがれっっ!!」

「…京、京!」
「…ん、ユキ!?そうか、夢か」
 目を覚まし、飛び起きる京。
 ここは京の通う高校。彼はここで授業を受けるわけでもなく、一日中屋上で寝て過ごしている。
「全く授業にも出ないで。そんなんじゃ、また卒業できなくなっちゃうわよ」
「大きなお世話だ」
 京の彼女、ユキも日課と化している彼の行動に少々呆れ気味だ。
「しかも、かなり大きい声で寝言言ってたわよ。待て!待ちやがれって。みんな驚いてこっち見たものだから恥ずかしくなっちゃったわよ、私」
 その時、京は先程見た夢を思い出した。
「そうだよな。夢…だよな」
 一人つぶやく京。そして屋上から街の景色を眺める。
「世界の危機だって!?冗談じゃねぇ。そんなんで自分の運命振り回されてたまるかってんだ!」
 静寂。しかしそれも一人の男の叫び声により壊される。
「草薙さ〜ん!!」
「し、真吾!!」
 屋上まで全速力で来た真吾。おかげでかなり息が切れていた。
「どうしたの?」
 ユキが聞く。
「ハァハァ…、実は学校中の人達が次々と何の前触れもなく暴れて…」
「何!?」

 謎の暴走のおかげで校庭、校舎とも荒れ放題。怪我人もあとを絶たなかった。
「ちっきしょう!どうなってんだよ、こりゃ!?」
 その時、暴走をしている者の一人がこちらに気がついた。それにつられるように仲間達も次々とこちらを向く。
「京!」
 ユキが叫ぶ。
「下がってな。ユキ、真吾。こいつらは俺が倒してやる」
 京に敵達が襲いかかる。
「チッ、敵とはいえ学校の奴らだからな。下手に炎は出せないぜ」
 敵の攻撃を難なくかわす京。
「草薙流古武術を甘く見んじゃねぇぜ!」
 敵の攻撃の隙にカウンターを入れる。京は草薙流古武術という炎を操る武術の使い手で、その腕前たるや、すでに師である父親を超えた程である。そんな彼を真吾は尊敬し、自ら弟子入りを志願している。当の本人はあまり面白くなさそうだが…。
 京が戦い始めて数分が経過した。状況は京の圧倒的優位なのだが敵は倒しても倒しても立ち上がってくる。そのうち、京もだんだん体力が持たなくなってくる。
「くそっ。炎は使えないわ、倒しても立ち上がるわ、どうしろってんだよ!」
 敵達が一斉に襲いかかる。
「チッ、やっぱ使うしかねえのかな…」
 京が右手に炎を集める。
「悪く思うなよ!!」
 そして、その炎を一気に放とうとした瞬間だった。
「半月斬!!」
「超球弾や!!」
「サイコボール!!」
 三人の攻撃が敵を襲う。敵の体から黒い気体のようなものが抜け出た瞬間、今まで暴走してた人達はそのまま気絶してしまった。
 京は一体どうなっているのか状況がつかめなかった。京の前にいる人達は全身それぞれ青、黄、ピンクに身を包んでいた。そして、青に身を包んでいる者が京に近づく。
「君、大丈夫か?」
「ああ、まあな。それより今の攻撃大丈夫かよ?相手は一般人だぜ。ダメージがあるんじゃ…」
「その点なら心配いらない。このコスチュームには軍神の力が宿っており、邪悪な気のみにダメージを与える事が出来るのだ」
 軍神。またしてもあの夢の事を思い出す。
「なぁ、その軍神って女か?」
 京が青の人物に聞く。
「ああ、そうだが。何故それを?」
 その時、青の人物が京の腕についているブレスレットを発見する。
「君、それはどこで手に入れた?」
 京も今、初めて気がついた。少なくとも学校に行く時はついていなかった。ユキや真吾からももらった覚えはない。

 だとしたらどこで…

 京は気がついた。あの夢の中だ。あの軍神が自分の腕にブレスレットをつけたのだ。
「やってくれるじゃねぇか、あいつ…」
 京がつぶやく。
 その時、青の人物が思わぬ言葉を発した。
「君も、選ばれし者か」
 その言葉に反応する京。
「どういうことだ!?」
 青の人物が急に姿を変える。今度は普通の人間で、髪の毛を中分けにしている好青年であった。
「どうも。私の名はキム・カッファン。見たまえ。私も、そして今戦ってるあの二人も君と同じブレスレットをしているのだ」
 キムがブレスレットを京に見せる。それは紛れもなく京と同じものであった。
 そしてキムが京に言う。
「君も我々と共に世界を救う仲間なのだ」

 急に訪れた運命。少しの間、京はまともに考えることすら出来なかった。
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