幸せの中に潜む漠然とした不安

それはきっと誰の中にもあるもので

満たされてるほど感じるもので

気のせいだよと



思っていたのに。




プラトニック  4   











「痛ェよ」

困ったように笑いながら俺の腕の中に収められたルフィが零す。
ゴムの体でも抱き締めすぎたら痛いもんか?
骨までやらかいんだから限界なんてないんじゃないかと思いながら更に力を込めた。

「なんだよサンジ?」

無言で抱き締める俺を不思議がって尋ねてくる。
こんなにすっぽり覆いかぶせる程お前は小さいのに。
その中身は計り知れないほど大きくて、こうして包み込んでも飛び出てっちゃうんじゃないかと思って。
溢れる水がこぼれそうって慌てるみたいに、俺は必死でルフィの体を抱き締めていた。


この前。

コソコソやってる恋愛をみんなに言っちまおうって言った俺に対してハッキリとまだだと答えたコイツ。
然るべき時に然るべき場所で公表するべし、という意味だろうと、そう捉えることにした。
…はずなんだが。

疑うワケじゃないけど、いや、結果疑ってるのだろうけどホントに俺のこと好きなんだよな?って。
好きだよな?
なあ、好きだよな?

うざいくらいに確かめたくなってる自分。そんなことばっか言うと却って嫌われそうで、そんな想いが抑えられずに最近の俺は二人になるとこうやってお前を抱き締めてばっかりだ。
力いっぱい抱き締めるなんてレディには出来ないよな。体当たりで伝えられるってのはなんかいい。通じてるか、はわからないが。
だってお前、いくら俺がこうしたっていっつも同じ質問ばっかり。

「どうした?」って。

「なんだ?」って。

それはお前が考えて理解することであって、俺に聞いちゃダメだろ。
わかってほしい。

…そう思ってる俺ってうざい奴だな。
でもどうしてもこれだけは。
俺が不安になってるから、もっと態度で示してほしいって思ってるってわかってほしい。

…ああ、ホント俺って厄介な男になってる。

ぼんやり自覚しつつも止められない。

誤魔化すように腕を解いて、キスを降らせやがて軽い愛撫へと変えていく。
そんな変化にもルフィは順応で。

そう、何の躊躇も抵抗も、疑問もない。

その黒い瞳は熱に潤んで。
紅潮した頬や汗ばむ体も甘ったるい声も、全部。

俺を好きなことの顕れなんだろうけど。

どうしてだろうな、それじゃ足りないんだ。
確実な何かがほしい。
お前がこの腕からすり抜けていくような、そんな感覚がするんだ。


今日も俺に足を開くお前はエロくて最高で見境なくサカっちまったけど


どうしてだろうな、心にポッカリ穴が開いてる気がするのは?



メシの支度の為にルフィを跡にする。


たくさんの材料をむいてむいて、切って切って。
調味料を施して煮込んで焼いて。

空虚を埋めるように夢中で調理に没頭した。

思いのほか早く支度が済んで。
みんなに声を掛けに外へ出て。

惰眠を貪る剣豪に蹴りでも入れてやろうと思って踏み出そうとした一歩。

でもそこで固まった。

傍らにルフィ。


じ、と愛おしそうに寝顔を見つめてた。