君に会えたものだから
僕は計算外の人生を歩むはめになったんだ。
恋をした男 1
うるさい声が聞こえる。
男にしちゃちょいと高くて、
女にしちゃありえないぐらいの低さ。まあ、男の声なんだがな。
うるさいうるさいと思いつつも
俺はその声が自分に向かって大きくなるのを安堵感と期待感で待ち侘びる。
人のにおいというのは
鼻というより
感覚で決めているのだろうか。
あいつのにおいはオヒサマのにおいがする。
…あと、ちょっとした雌のにおい。
俺のダイスキなにおい。
体中がワケわかんねー幸せに満たされてもうなりふりかまわず突っ走っていきてーにおい。
なんでテメェからそんなにおいがすんだよ?!
ああ、わかってんだ、てめえにそんな文句言ってもしょうがねえんだけど。
信じらんねえ。
信じらんねえ。
どうしてお前を抱き締めたくなんだよ?!
頼むから来んな。
そのドアを開けるんじゃねェ。
「サンジぃっ!!飯ィ!!!」
待ってました。
…じゃねェ。断じて違う。
アレだ、俺様の腕を揮う機会がまた出来たから嬉しいだけだ。
「ったくてめェは俺にはそれしか言えねぇのか。」
苦し紛れに一言呟く。
わかったよと待ってろよと
抱き締めたくなるのを必死に堪える。
なんでだよ
俺が ドウシテ コンナヤツニ
「なあなあなにつくってくれんだ?甘いモン?しょっぺえモン?」
相変わらず漢字変換出来てなさそうなアホっぽい声で騒ぐガキ。
はしゃぎついでに背中に抱きつく。
「っ!」
俺がビックリして硬直してても構いもせず。
「まあサンジのつくんのだったらなンでも美味いんだけどな!!」
と賞賛の言葉を手向けながらすりすりと体を寄せてくる。
だから言ってんだろ。
声と においと お前の全部
俺は感じちまうんだって。
巻き付く細い腕をぐと押さえ込む。
「?」
ルフィは少し違和感を覚えつつも別段気にしない。
ただ少し、
サンジの手ってこんなにいっつも熱かったかな?
と思ったくらいで。
「限界なんだ」
絞り出すように言った男の言葉も、理解が出来なかった。
アア ドウシテコンナヤツニ
オレハムクワレナイコイゴコロヲイダカナケレバナラナイノデスカ
続 >
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