君が僕を

好きになってくれたらいいな。





恋をした男   7







自分の事で精一杯でここ最近当の本人を見ているようで見ていなかったと思う。



見るのは夢の中で。

都合のいいステキな夢で。

それに満足してかなりイケるとこまでイケた時にはその日一日朝から上機嫌。
まるで雲の上の天使でも相手にしてるかのような子供じみたはしゃぎ具合。
俺はアイツが食卓にすら来なくなってることに気づかなかった。

道理でマリモだとかナミさんまでもが男部屋に甲斐甲斐しく足を運んでいると思った。
腑抜けた頭でそれを伺えたってことは相当行き交いを彼らが繰り返していたということでもあるのだろう。
ナミさん曰く俺にも何度も呼びかけをしたらしいのだが空返事だけでずっとキッチンに佇んでたそうだ。

落ち着いた今ならそんなアホ野郎に俺がなるかって逆ギレも出来るがほんの数日前の俺なら言葉もございません、てな感じで。
きっとそのときの俺は夢の続きでも想像して楽しくなっちゃってたんだろう。

それから毎日見続ける浅ましい欲望のありありと浮かんだそれらにも慣れて来た今日、やっと現実復帰したような。
と、言うことは。

目の前に居るコイツは何日メシを口にしてないのだろうか。
キッチンの脇に寝床を作られそこに寝かされてる我らが船長。
俺が目下虜になってる奴。

ハンモックと違ってシーツの上に臥す姿にはあらぬ想像を掻き立てられるのだけども。
一瞬よぎった妄想は酷く否定的な考えに打ち消された。

まるで今までの俺の幸せな夢を押しつぶすかのように。

だってあんなことが現実になる訳がない。
夢はやっぱり夢で。

お前がこうして絶好の機会を与えてもそれは見せ掛けで、ただの見せ掛けで、最後には玉砕して打ちひしがれる俺が待ってるに決まってるんだ。
きっと俺を拒むんだろう。間違いない。

だからこうして現実を突きつけるような真似はやめてほしい。

ちょと前の俺ならこんなガキ相手に何気ィ使ってんだ、って思うだろう。
今では違う。
こんな愛しい存在がいていいのだろうか。そう思うんだ。
だからこそとても大切で大事に扱いたいのに反面やたら激しく求めてしまう。

綺麗に日焼けた肌。

ついさっきまでは俺を求める夢の中のお前の方がいいって思ったけど、目の前にいるお前のほうが断然いい。
触れることは出来なくても。
求めることが出来なくても。

やっぱり生きてるお前を見てるのが一番。

やっと落ち着きを取り戻して俺は息を吐く。
煙草を吸おうとしたが寝てるルフィに良くないかと思いやめた。

焦点の合わない目を向けてたルフィはふいに視線を彷徨わせ俺を捉えた。
視線が絡んだことで俺の心臓は跳ね上がる。

ああ、眠ってるお前見るのもいいけどやっぱその黒い瞳が開いてる方がずっといい。
吸い込まれるように俺は近付きキスした。

これでも思っちゃいたんだぜ、急に盛ってアヤシイ行動しねえように気をつけようって。
だけどダメなんだ、その瞳で見つめられると。
なんてそんな俺の感情わかりゃしねえよな…
しまったと思っても止まらなくて。
感触の良い唇を2,3度啄ばんで名残惜しいが離す。

ああ…体が蕩けちゃいそうだ。
幸せに浸る俺の前で潤んだルフィの目からぽろりと雫が落ちた。

落ち出すと止まらなくて、ポロポロと流れルフィの顔を濡らす。

慌てて取り繕ったってもう遅い。
とにかくコイツが泣くなんてことにビックリして、どうしたらいいのかわかんねえし俺からのキスがそんなにヤだったのかとかショック受けたりもして動転した拍子に後ろにあったテーブルに頭ぶつけたりして

その時の俺はめちゃくちゃカッコ悪かったと思う。





君ガ俺ノ事ヲ好キニナッテクレタラ

本当ニドンナニ幸セダロウカ?










続