「お前が気になってしょうがねえんだ」

「どうやら俺は、お前のことが好きらしい」

「…その、仲間としてじゃなくて、普通男女の仲で言う、好き、…っつーか」

ナミやロビンやビビその他モロモロの女一筋の男からの信じられない告白。
らしくなく照れくさそうに視線を泳がせながらぼそぼそと綴られていくおれへの気持ち。
そんなサンジの姿を見て。



ああ

おれと、同じだ


そう思った。






秘密 1  






他のみんなと違う、特別な何か。
雑踏の中、船の中、無意識に探している。
そう、気になるんだ。

見つけて何かするってわけじゃない。いつも用事があるんでもない。
ただ、その姿をひたすら確認したい。





なんでゾロだけ気になるんだろう?



最近になって気づいたこの気持ちを、サンジが今、代弁してくれた。


男とか女とか、そんなの関係なしに。


好きなモンは好き、なんだ。





出会った時から惹かれていた。
その鋭い双眸、圧倒的な威圧感。力、信念。
魔獣と称されるのも頷ける凶暴な面持ちのその男を、手に入れたいと、思った。

自分の夢の為には必要不可欠だ。
そう思った俺の直感は間違いなくて。
今やかけがえのない、仲間。

いつからかただ横にいるだけじゃ、物足りなくて。
物足りないって言ってもさ、だからどうしたいんだってのもわかんなかったけど。
きっとこういうことだったんだ。



しどろもどろに告白を続けるサンジを前にして、おれは。

自分の気持ちに納得すると共に、身体の奥底に仕舞い込んだ。

そして、目の前の男にしてやれることを、した。

ゾロにしたかった、ことを。
いいよって言ってなんでだか目を丸くしてるサンジに口づけて。


やがてみんなに隠れて体を寄せ合うようになって
そして体を重ねるようになるのに時間は掛からなかった。

まさかサンジとおれが、こんな関係になるなんて思ってもみなかったけど。
いざなってみると違和感もなくすんなり受け入れられてしまうのが不思議だ。
それどころかそーいうトコが長けてるサンジはエッチがすんげえ上手くて。
何もかも初体験のおれをとろっとろにさせて、虜にさせちまった。

みんなが寝静まった夜に、部屋を抜け出してキッチンへ行くのが日課になった。

約束してるわけでもないけどサンジも必ずそこにいて。
おいしい夜食と一緒に甘い時間を過ごした。
料理とタバコの混じった香りを纏う胸に体を預けると、ふわりとその腕がおれを包んでくれる。
顔をあげれば優しい瞳と目が合って。その深い青の瞳がじっと見詰めてくると何も考えられなくなる。
頬が熱くなってくるのが分かる。いつもハート飛ばして女追っかけてるけど本気になったら口説けない相手なんていないんじゃないだろうか。

サンジが、手慣れてるから。
だからなんだ。
こんなに夢中になってしまうのは。

そんな風に理由をつけて、サンジと過ごす時間におれは溺れていった。



熱が冷めいくらか落ち着いた頭の中、浮かんでくるのはゾロのこと。
意識して思い出してるわけじゃない、必ずサンジとした後はあの顔が思い浮かんでくるんだ。
こんな感情持ったことないからどういうことだか良くわからない。
良くわからないなりに考えてみたけど、多分ゾロとこういうことしたい、って思ってるってことなんだろうと、いうことにした。

そこでおれの気持ちはサンジに告白された、あの日に戻る。

サンジがおれを好きだって思ってたように、おれもゾロのことそういう好きって目で見てた。

ゾロのこと考えるとたまらない気持ちになるんだけど。
それ以上にどうしようもないというか。


こうやってぺったりサンジにくっついてるのにそれよりももっと深い下のところでゾロとはくっついてるってゆーか。
堂々巡りな言い訳みたいな想いに思考を凝らしてると、ふいにサンジの声が耳に響いた。
お前もそう思うか?って。
サンジもおれのこと頭に浮かんでばっかだって。
はっとしてその問いに頷いた。
おれも、おれもさ、いつもゾロのこと考えちゃうんだ。

だけど…

あの真っ直ぐな男にこんな想いぶつけちゃいけない気がして。
怖気づく、なんて弱虫みたいで嫌だけど。
踏み込みたくない気持ちの手前に、優しく手を広げるお前がいるから。
おれは逃げたままでいる。

サンジのせいにして、全部サンジに押し付けて、甘えてる。


いけないことなんて思わなかった。

サンジにとってもおれにとっても、いい関係だって思ってた。

それが、サンジの真剣な想いを裏切ってるなんて、馬鹿なおれはわからなかったんだ。