アイツのこと考えると苦しくて。

なんで苦しいのか考えると、さらに混乱して。

そんなときにするりと差し出された手があったら

縋るようにその手を取るのは、仕方ないだろ?

しかもその手に最高の待遇をされたりしたら。

…溺れてしまうのも無理ない話なんじゃないだろうか。









秘密 2  






サンジとの関係は順調だった。

ただ、何かが物足りない…


サンジに触れられる度に片隅によぎる影がある。
快楽に溺れたい気持ちとは裏腹に膨れ上がる疑問の渦。
中をのぞいたら、最後。
そんな気がして的確に愉悦へと導いてくれる魔法の様な手に神経を集中させる。
もっとと言うように体を寄せて、息を詰めるサンジに、そう、もっとだと行為をねだり。
白濁の欲望を吐き出すとこまで昂ぶらせて。
もやもやした想いを昇華する。
サンジと体を繋いで、大きなアレで揺さぶられれば思考は完全に飛ぶ。

その時はいい。
でも消しても消しても、ひっかかる何かはすぐ浮上してきて。
おれはそれの消去方法は、サンジと体を重ねる以外に見つけられなかった。
熱を放出するのと同時に想いは端からなくなってくんだと信じて疑わなくて。

なのに一向に変わらない物足りない、ひっかかった感じにおれは頭を捻るより他になかった。
自分の体と自分の頭にズレが生じてるような。

目の前のこの男に、
その疑問をぶつけたならば。
頭のいいコイツはまた簡単に答えを見つけてくれるんじゃないだろうか。

そんな考えがよぎったこともあるけど、おれはそれをしないままにした。
中をのぞいたら最後って思うのと一緒で、答えを見つけられてもおしまいってこと。
その先にあるものはぼんやりとしてわからないんだけど、そうはなりたくないってのはわかる。

こんなにもやもやした気持ちになったことなかった。
ぐずぐずする自分に苛立つけど決定打も打てない。

だから

だから

このまま、とばかりに。
おれは優しく差し伸べられる手に また、縋った。

二人っきりになる滅多にないチャンスに、一日中とも言えるほど長く抱き合った。
おれとしては好都合。
それだけもやもや考える時間が減ってくれるし
すごく 気持ちいいし?

…とはいえ、さすがに初めての長期戦にぐったりしてしまった。

無理さしちまったな、なんて苦笑して横抱きにおれを運ぶサンジ。
こんな関係になってから、たまに女みたいにおれのことを扱うけど、嫌というよりなんだかこそばゆい。
だるいのもあるしありがたいとばかりにその腕に体を預けた。
元々マメなサンジだけど、こういう時はさらに甲斐甲斐しくて、
頭のてっぺんからつま先まで、懇切丁寧に洗いあげてくれた。

まさに至れり尽くせり。
行為の最中の熱に浮かされた感じとは違う、まどろむような浮遊感にうっとりしていると、
サンジが、二人でフロ上がりって怪しくないか?って何気ない一言。
バレちゃわない?ってカオで悪戯っぽくおれに笑いかけてくる。

それは、無理やり答えを引きずり出される感覚にも似た。

冷水を浴びさせられたような。

固まるおれにサンジは途端におれを安心させようと試行錯誤し始めた。
びっくりしたけど、心配するほどでもない、ただの何気ない、ひとことだと。

少し時間を置くことで、サンジのフォローを聞くことで落ち着いてきたおれは。
動揺したみたいだ、とおどけて言うと狼狽したサンジも安堵の表情になった。


どこまでも優しい、サンジに。

胸が締め付けられた。