2003/1/19開設
上の公式を証明する。
[証明]
いまf(x)は、マクローリン展開したとき収束半径がrである関数とする。
このとき、f′(x)、∫f(x)、∫f′(x)、∫∫f(x)、∫∫f′(x)、∫∫∫f(x)、∫∫∫f′(x) ・・・・のベキ級数の収束半径も
すべてrとなることを帰納法的に証明できる。以下では、これら全ての関数が項別積分可能であることを利用して
証明していく。
なお∫はすべて0-->xの定積分であり、xは収束半径内に属す実数である。∫fdx、∫∫fdxdx・・のdx、dxdxは略す。
また(∫+∫∫+∫∫∫+・・・)yは、(∫+∫∫+∫∫∫+・・・)y=∫y+∫∫y+∫∫∫y+・・・である。
さて、f(x)のマクローリン展開は、 f(x)=f(0)+f′(0)x/1!+f′′(0)x^2/2!+・・・ ------@ である。 上の@式を一回微分したものを(項別微分可能)、0〜xまで積分すると(項別積分可能)、 ∫f′(x)=f′(0)x/1!+f′′(0)x^2/2!+・・・ -----A となり、@とAより、次のBが成り立つことは容易にわかる。 f(x)−∫f′(x)=f(0) --------B つぎに、@の両辺を0〜xまで積分すると(項別積分可能)、 ∫f(x)=f(0)x+f′(0)x^2/2!+f′′(0)x^3/3!+・・・ ------C となり、またAの両辺を0〜xまで積分すると(項別積分可能)、 ∫∫f′(x)=f′(0)x^2/2!+f′′(0)x^3/3!+・・・ -------D となる。CとDより、 ∫f(x)−∫∫f′(x)=f(0)x -------E となる。 以下、同様にして、 ∫∫f(x)−∫∫∫f′(x)=f(0)x^2/2! --------F ∫∫∫f(x)−∫∫∫∫f′(x)=f(0)x^3/3! -------G ・ ・ が成り立つ。 これらすべての式の導出過程において、収束半径r内のxで項別積分を行っていることに注意して頂きたい。 まとめて書くとB、E、F、G・・・・は次のようになる。 f(x)−∫f′(x)=f(0) ∫f(x)−∫∫f′(x)=f(0)x ∫∫f(x)−∫∫∫f′(x)=f(0)x^2/2! ∫∫∫f(x)−∫∫∫∫f′(x)=f(0)x^3/3! ・ ・ これらを、上から下まで足し合わせていくと、次のようになる。 [左辺を足し合わせたもの]
={f(x)+∫f(x)+∫∫f(x)+・・}−{∫f′(x)+∫∫f′(x)+∫∫∫f′(x)+・・}
=f(x)+(∫+∫∫+∫∫∫+・・・)f(x)−(∫+∫∫+∫∫∫+・・・)f′(x) =f(x)+(∫+∫∫+∫∫∫+・・){f(x)−f′(x)} [右辺を足し合わせたもの]
=f(0)+f(0)x+f(0)x^2/2!+f(0)x^3/3!+・・・
=f(0)(1+x+x^2/2!+・・・) =f(0)e^x (注意:1+x+x^2/2!+・・・=e^x であることを用いた)
当然[左辺を足し合わせたもの]=[右辺を足し合わせたもの]となるから、
f(x)+(∫+∫∫+∫∫∫+・・・){f(x)−f′(x)}=f(0)・e^x -------H となる。よって、公式1が証明された。
なお、念のため、注意しておくと、例えば、Hでx=πとすると、
f(π)+[(∫+∫∫+・・・){f(x)−f′(x)} の最終的な関数形にπを代入した値]=f(0)・e^π
であり、
f(π)+(∫+∫∫+∫∫∫+・・・){f(π)−f′(π)}=f(0)・e^π
ではないので、くれぐれも勘違いしないよう注意して頂きたい。
証明終わり。
現時点では、関数の定義域は実数の領域しか考えていないが、おそらく複素数の領域までも自然に
拡張できると思われ、その方面への拡張も目指していきたい。
2003/1/26追加 公式1の別証明
公式1の別証明もあります。
[別証明]
いまf(x)は、マクローリン展開したとき収束半径がrであるとする。この条件を”条件1”と名付けよう。
このとき、f′(x)、∫f(x)、∫f′(x)、∫∫f(x)、∫∫f′(x)、∫∫∫f(x)、∫∫∫f′(x) ・・・ のベキ級数の収束半径も
すべてrとなる。これら全ての関数がその収束半径内において項別積分可能であることを利用して証明する。
∫はすべて0-->xの定積分。∫fdx、∫∫fdxdx・・のdx、dxdxは略す。
これから、条件1のもとで、
f(x)+(∫+∫∫+∫∫∫+・・・){f(x)−f′(x)}=f(0)・e^x ------------@
が成り立つことを証明しようというわけである。
いま、@をf(x)=・・と書きかえると、
f(x)=f(0)・e^x+(∫+∫∫+∫∫∫+・・・){f′(x)−f(x)} -----------A
となる。
また、f(x)のマクローリン展開式も書いておく。
f(x)=f(0)+f′(0)x/1!+f´´(0)x^2/2!+f´´′(0)x^3/3!+・・・ --------B
Aの右辺を変形していき、それが最終的にf(x)に一致することを示すという方針でいく。
右辺=f(0)・e^x+(∫+∫∫+∫∫∫+・・・){f′(x)−f(x)}
=f(0)・(1+x+x^2/2!+x^3/3!・・・)+(∫+∫∫+∫∫∫+・・・){f′(x)−f(x)}
=f(0)・(1+∫1+∫∫1+∫∫∫1+・・・)+(∫+∫∫+∫∫∫+・・・){f′(x)−f(x)}
=f(0)+f(0)(∫1+∫∫1+∫∫∫1+・・・)+(∫+∫∫+∫∫∫+・・・){f′(x)−f(x)}
=f(0)+(∫f(0)+∫∫f(0)+∫∫∫f(0)+・・・)+(∫+∫∫+∫∫∫+・・・){f′(x)−f(x)}
=f(0)+(∫+∫∫+∫∫∫+・・・)f(0)+(∫+∫∫+∫∫∫+・・・){f′(x)−f(x)}
=f(0)+(∫+∫∫+∫∫∫+・・・){f(0)+f′(x)−f(x)}
=f(0)+(∫+∫∫+∫∫∫+・・・){f′(x)−f(x)+f(0)}
=f(x)−f′(0)x/1!−f´´(0)x^2/2!−f´´′(0)x^3/3!+・・・
+(∫+∫∫+∫∫∫+・・・){f′(x)−f(x)+f(x)−f′(0)x/1!−f´´(0)x^2/2!−f´´′(0)x^3/3!+・・・}
(注意:Bより、f(0)=・・としたものを代入した)
=f(x)−f′(0)x/1!−f´´(0)x^2/2!−f´´′(0)x^3/3!+・・・
+(∫+∫∫+∫∫∫+・・・){f′(x)−f′(0)x/1!−f´´(0)x^2/2!−f´´′(0)x^3/3!+・・・}
=f(x)−f′(0)x/1!−f´´(0)x^2/2!−f´´′(0)x^3/3!+・・・
+(∫+∫∫+∫∫∫+・・・)A ------C
上の最後で(∫+∫∫+∫∫∫+・・・)にかかっているf′(x)−f′(0)x/1!−f´´(0)x^2/2!−f´´′(0)x^3/3!+・・・
をAとおいた。Aを変形すると(Bを用いて、f′(x)を消す)、
A=f′(x)−f′(0)x/1!−f´´(0)x^2/2!−f´´′(0)x^3/3!+・・・
=f′(0)+f´´(0)x/1!+f´´′(0)x^2/2!+・・・・
−f′(0)x/1!−f´´(0)x^2/2!−f´´′(0)x^3/3!−・・・ -------D
となることに注意して、
(∫+∫∫+∫∫∫+・・・)A
=∫A+∫∫A+∫∫∫A+・・・
における∫A、∫∫A、∫∫∫A、・・・をDを利用して順番に具体的に計算していく。
∫A=f′(0)x/1!+f´´(0)x^2/2!+f´´′(0)x^3/3!+・・・・・・・
−f′(0)x^2/2!−f´´(0)x^3/3!−f´´′(0)x^4/4!+・・・
∫∫A=f′(0)x2/2!+f´´(0)x^3/3!+f´´′(0)x^4/4!+・・・・・・・
−f′(0)x^3/3!−f´´(0)x^4/4!−f´´′(0)x^5/5!+・・・
∫∫∫A=f′(0)x^3/3!+f´´(0)x^4/4!+f´´′(0)x^5/5!+・・・・・・・
−f′(0)x^4/4!−f´´(0)x^5/5!−f´´′(0)x^6/6!+・・・
・
・
これらを、上を上から下まで足していくと、うまい具合に項が消しあって、
∫A+∫∫A+∫∫∫A+・・・
=(∫+∫∫+∫∫∫+・・・)A
=f′(0)x/1!+f´´(0)x^2/2!+f´´′(0)x^3/3!+・・・・・・・ --------E
となることがわかる。
EをCに代入すると、
右辺=f(x)−f′(0)x/1!−f´´(0)x^2/2!−f´´′(0)x^3/3!+・・・
+f′(0)x/1!+f´´(0)x^2/2!+f´´′(0)x^3/3!+・・・・・
=f(x)
となる。よって、最終的にf(x)と一致することが示せた。
以上より、条件1のもとで、A式つまり@式が成り立つことが示せた。
証明終わり。
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