(「STRAY DOG」感想の続き)

 犬と人間との魔法による合成生物・軍用犬。その外見と知能は人間と変わらず、戦闘力は人間を凌駕し、そして飼い主を決して裏切ることはない。
 一匹狼の野盗で賞金首でもある主人公のフォンドは、襲って殺した商人たちの荷物だったひとり/一匹の少女/軍用犬を飼うことになった。ジョカと命名された彼女は、軍用犬であるにもかかわらず何の役にもたたないが、フォンドにまとわりついてはなれない。
 そんな二人を、賞金目当ての魔導士と、彼に飼われている軍用犬が襲う。自らの力を過信した魔導士をフォンドは苦もなく倒すが、魔導士に飼われていた軍用犬は、飼い主が死ぬとなすすべを知らないのが軍用犬の常であるにもかかわらず、なぜか自らの意志でジョカとフォンドに襲いかかる。そして‥

 軍用犬という生き物を作り出す人間の傲慢。どんな相手であっても、どんな命令であっても、飼い主であれば逆らうことのできない軍用犬という存在のむごさ。物語が展開するにつれてその両方が浮き彫りにされる。
 物語に救いはある。あるけれど、それは最後に主人公に許されたささやかな救いであり、登場人物たちに対する作者の態度は酷薄ですらある。「ぼくは‥ぼくにだってやりたいことがあるんだい!」的な、凡庸なファンタジーまんがにありがちな情に流された展開は一切ない。だから読んでて気持ちいい‥というのはうそで、読んでいてつらく悲しい。でも、こうでなくてはいけないのだ。
 これがデビュー作であるというから、先がとても楽しみ。とりあえずもう2、3作読切が読んでみたい。(1999.7.17)

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