ドレミの順列 2

〜メルセンヌの仕事〜 <音楽&数学らんどへ>

 ドレミ・・・を一列に並べてできる順列の話のルーツはメルセンヌ(1588〜1648)のようである。

メルセンヌはフランスの聖職者で、優れた学者を集め、いわゆるサロンといわれる科学や数学

に関する交流組織を作った人物である。このサロンには、フェルマーやデザルグなどそうそうた

る数学者が出入りしていたが、とりわけ、エチエンヌパスカル(あのパスカルの父親)の学識を高

く評価し、より深い交流があったようである。エチエンヌは数学だけでなく、音楽について優れた

才能を有していた。

 また、メルセンヌ自身、音楽の研究家であり、音楽理論を数学的に研究して、12音階などを

最初に紹介したとされている。   

 講談社学術文庫から出版されている「パスカル伝(田辺保)」によると、『当時の科学者達にと

って音楽は数学の応用部門であって、楽器の構造に通じていることも、力学、和声学の知識と

の関連から、相応に評価されていた』とある。

 さて、このメルセンヌは、1636年に「調和の本」「普遍的調和:音楽の理論と実際」を著した。こ

の本によると、メルセンヌは現在の階乗表のようなものを、何と64まで作り、1オクターブの8度

音程の並べ替えが40,320種類であることを記している。また、ヘクサコード(hexachord 6音音

階)vt,re,mi,fa,sol,laを使ってできる720種類の音列を総て列挙している(下図参照)。

       ちょっとみえにくいのですが、メルセンヌの著書からの1〜64までの階乗表と、ヘキサコード

   による6!=720通りの音列の一部です(「高校数学史演習(安藤洋美)」(現代数学社)より

   抜粋)

 このメルセンヌの、数論と音列を関わらせるせるという手法に端を発して、以後アナグラムに

よる作曲(サイコロの音楽)などが流行したといわれているが、この辺の詳しい話はよくわからな

い。(野口さんのサイトにいけばよくわかると思う)例えば、このホームページでもとりあげている

モーツアルトのk516fもそのような流れの中で作られたのではないかと思う。

 というわけで、今、高校で教えている順列や組み合わせも、実は、発祥時は、音列との関係で

研究されていたということが大変興味深い。なお、前述のメルセンヌ著の「調和の本」によると、

例えば、A,B,C,D,E,F,G,Hの8文字を一列に辞書式に並べたときに、CBDFEHAGは何番目にく

るかなどといった、高校の数学では「よく出る」問題も紹介されているようである。こんな問題を

生徒に行うときは、是非、メルセンヌと音列の話をしたいものですね。

<参考文献など> 

 私はこの話を、「高校数学史演習(安藤洋美)」(現代数学社)で知りました。とてもわかりやす

い、いい本です。なお、上に紹介した、メルセンヌの階乗表と、ヘクサコードの音列の表はこの

本から取らせていただきました。

 また、17世紀の数学シーンについては、前述の「パスカル伝(田辺保)」が役に立つと思いま

す。また、メルセンヌはいわゆる「メルセンヌ数」で有名ですが、完全数とメルセンヌ数を求めて

いく歴史的流れは、数学史上とても興味があり、生徒にも教えたいところです。

これは、「フェルマーの最終定理に挑戦(富永裕久・山口周)」(ナツメ社)が面白いしわかりやす

いと思います。

 また、メルセンヌと音楽の話になると私には難しいので、リンクにある音楽関係のサイトをご覧

になればよいと思います。