ゲーデルエッシャーバッハ
この本の中には、階層的システム及び自己言及に関する話題が、数学(ゲーデル)、 美術(エッシャー)、音楽(バッハ)の3つの観点から、同型的に語られている。 特に、「不思議な輪」ということで、エッシャーの「滝」とバッハの「無限に上昇するカノン」が対比的に述べられているのが面白い。この「無限に上昇するカノン」というのは、「Musical Offering(音楽の捧もの)」(J.S.BACH)の中の、「2声の螺旋カノン」のことであろう。(本書では「諸調によるカノン」と書かれてある) CDのライナーノーツを見ると次のように書かれている。 「コール・アングレーの主題の変形にからむカノンは、1回ごとに1全音高い調に転じて、ハ短調から、ニ、ホ、嬰ヘ、変イ、変ロと各短調を終過してハ短調に終始する。”また転調ののぼりゆくごとく、王の栄えものぼりゆくことを”と書き込まれているカノン」 バッハは、このカノンによって、エッシャーの「滝」「上昇と下降」の絵と同様に、無限を表現しているのである。 Simomacci エッシャーの滝を真似て描いてみました。へたですが雰囲気はわかりますよね。 今度は、筒井康隆のショートショート集「夜のコント冬のコント」(新潮社)に納められている作品『「聖ジェームズ病院」を歌う猫』からの話題。 「二八六次元の世界に飛び込んだ俺は、√24000人もの敵を倒しやっと扶枇の城にたどりついた」という出だしで始まる。これは実は夢で、その夢の中で、野良猫が歌うのが「聖ジェームズ病院」。 この曲は実は2次方程式の解の公式になっているというのがオチ。 この「聖ジェームズ病院」の歌詞は 「扶枇の士(さむらい)が今後の備えに四つ足を引いて割ったらにゃあと鳴く」 といったもの。どこに解の公式が隠されているかわかりますか。ギターを弾きながら歌ってみましたが自分で歌いながら爆笑してしまいました。 ディオニシウスの耳 数学好きにはなんともたまらない推理小説、ディオニシウスの耳(徳間書店)。いたるところにちりばめられた数学の話題に思わずにんまりしてしまう。作者は理学博士でもある湯川薫氏。 さて、この小説の中にでてくる音楽の話題は、モーツアルトの、あのk516f(ハ長調)←クリックすると曲が流れます。ちょっと違うところもあるかもしれませんが・・・これの各小節の並べ替えでいくつもの音楽ができるのです。 この曲に潜む暗号を利用した内容であるが、これ以上書くとさしさわりがあるので、後は読んでもらうしかない。尚、モーツアルトのk516f(ハ長調)については、「モーツアルト研究オンライン」(野口秀夫さん) http://www.asahi-net.or.jp/~rb5h-ngc/index-j.htm のホームページが凄い。興味のあるひとはぜひご覧になってください。 また、湯川作品のもう1冊、「虚数の眼」も面白い。巻末に公開鍵暗号について、非常にわかりやすい講義もついている。
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