失われた原稿

これはわたしの民の歴史を残らず述べる版では決してない。わたしの民に
ついて残らず述べる版には、ニーファイという名を付けておいた。したが
って、それはわたしの名にちなんでニーファイの版と呼ぶが、この版もま
たニーファイの版と呼ぶ。にもかかわらず、わたしは、民に対する務めに
ついての話を刻むという特別な目的のためにこの版を造るように、主から
命令を受けた。ほかの版には、もろもろの王の統治と、わたしの民の戦争
や争いに関する話を刻むことになっている。したがって、この版はおおよ
そが民に対する務めについてであり、ほかの版はおおよそがもろもろの王
の統治と、わたしの民の戦争や争いについてのものである。さて、主はあ
る賢明な目的のために、わたしにこの版を造るように命じられたが、その
目的はわたしには分からない。しかし、主は初めからすべてのことを御存
じである。したがって、人の子らの中で御自身のすべての業を成就するた
めに、ある方法を備えておられる。それは見よ、主は御自分のすべての言
葉を成就する一切の権威を持っておられるからである。まことにそのとお
りである。アーメン。
(1ニーファイ9:2−7)

以前にわたしの手に渡されたいろいろな記録を調べてみたところ、ヤコブ
からこのベニヤミン王の治世に至るまでの預言者たちの短い話と、ニーフ
ァイのたくさんの言葉が載っているこの版が見つかった。わたしはこれら
の預言と啓示の載っているこの版を取って、わたしの記録の残りの部分と
一緒にしよう。わたしは、ある賢明な目的のためにこのようにする。わた
しの内にある主の御霊の働きによって、わたしにそのようなささやきがあ
るからである。わたしはすべてのことを知っているわけではないが、主は
将来起こることをすべて御存じである。したがって主は、御自分の御心ど
おりに行うように、わたしに働きかけられるのである。
(モルモンの言葉1:3−7)


ニーファイは2つの版を作った。これらは小版と大版と呼ばれている。モ ルモンはニーファイ人の歴史記録からまとめた記録(モルモンの版)を作 ったあと、ニーファイの小版を見つけ、自分の作った版といっしょにした。 ニーファイ第1書からオムナイ書までは、ニーファイの小版から訳された ものである。モーサヤ書以降は、モルモンの版から訳された。モルモンの 版にはリーハイがエルサレムを出てから、モーサヤの時代までのこと(リ ーハイ書と呼ばれている)も記されていた。この記述はニーファイの小版 と重なるものだった。ニーファイはなぜ2つの版を作るように主に命じら れたかわからないと言い、モルモンもなぜ自分の版にニーファイの小版を つけるように御霊に促されたのかわからないと言っている。 実は、モルモンの版のリーハイ書の翻訳原稿は、マーティン・ハリスが家 族に見せるために持ち出したときに、紛失した。(恐らく盗まれた。) 主はもう一度リーハイ書から翻訳してはいけないと命じられた。それは、 盗んだ連中が、翻訳の原稿を改ざんし、ジョセフ・スミスが再度翻訳した ものを発表したときに、改ざんした原稿を公にし、その内容が違っている ことで、ジョセフ・スミスのでたらめさをでっち上げようとたくらんでい ることが主により明らかにされたためである。そこで、ジョセフ・スミス は、同じ時代を記した記録であるニーファイの小版を翻訳したのである。 教義と聖約3章10章参照

モルモン書・エピソード集

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