ブログ記事 単語家族 |
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単語家族 (2008/11/24) |
単語家族説は音が似ている語は意味に関連性があるという考え方である。
たとえば、人間の顔の部分である「目」「鼻」「歯」「耳」「頬」と、
植物の部分である「芽」「花」「葉」「実」「穂」とは、
「め」「はな」「は」「み」「ほ」という音が共通している。
これらの語源は共通のものである。
文字を見てしまうので、その共通性がわからなくなっている。
単語家族説では、文字よりも、発音と意味の結びつきに重点をおき、
単語のグループ化をしている。
単語家族は、全ての言語に見られると思う。
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男女対の和語 (2009/07/21) |
和語の単語家族を調べて解った意外な男女対の単語。
| こ(男子) | め(女子) |
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おと(若い) | おとこ(男)=若い男子 | おとめ(乙女)=若い女子 |
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むす(産む) | むすこ(息子)=産まれた男子 | むすめ(娘)=産まれた女子 |
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ひ(立派な) | ひこ(彦)=立派な男子 | ひめ(姫)=立派な女子 |
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ち(男) | は(女) |
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ちち(父) | はは(母) | じい(爺) | ばあ(婆) | おじ(叔父) | おば(叔母) |
お(男) | め(女) |
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おす(雄) | めす(雌) | おおしい(雄雄しい) | めめしい(女々しい) | おっと(夫) | め(妻):め(妻)おと(夫)の「め」 | おい(甥) | めい(姪) |
これらは、漢字がじゃまして、単語の同士のつながりが分かりにくく
なっている例ですね。和語の中には、そんなのがいっぱいあります。
その他の単語家族を知りたいかたは、以下のサイトへどうぞ。
単語家族 和語編 男女
http://www5b.biglobe.ne.jp/~shu-sato/kanji/family-wa.htm#danjo
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単語家族 「かく」「かける」「かかる」編 (2009/10/12) |
「かく」「かける」「かかる」の単語家族の基本の意味は、
「指、手の動作」である。
「掻く」は指で皮膚を掻く動作である。
「欠ける」は指で削り取ることで欠けるのである。
「書く」は指で土器の表面を削って模様を書くことだったが、
後に紙に筆で字を書くこともあらわすようになった。
「掛ける」は手で物を取って別の物の上に乗せること。
「懸ける」は手で物を取ってある場所にぶら下げること。
「架ける」2つの物の間に手で物を架け渡すこと。
「掛ける」ことで結果的に物と物が付くことから発展し、
「係る」は2つの物がつながりを持つことを表す。
「繋ける」はひもで物をつなぐこと。
「賭ける」は金品で関係を持つことから、賭博を表す。
「罹る」は病気につながること、すなわち、病気になること。
このように、基本的な意味から、どんどん、意味が転じて、
新しい意味の単語が生じ、単語家族が作られる。
「掛ける」は、意味が発展し、いろんな使われ方をする。
「会議に掛ける」「火に掛ける」「お目に掛ける」
「椅子に腰を掛ける」。
「掛ける」の「物をある場所に乗せる」意から、
ある場所に物を置く意になる。
会議の場に議題を置く、火の場所に置く、目の前に置く、
椅子の上に腰を置くなど。
「掛け算」。
「掛ける」の「乗せる」意から、左側の数を右側の数の
回数分、乗せると言うことであろう。
「医者に掛かる」。
「掛ける」の「乗っかかる」の意から、「たよる」の意で使われる。
「アイロンを掛ける」「掃除機を掛ける」「電話を掛ける」
「鍵を掛ける」「エンジンを掛ける」「CDを掛ける」。
「掛ける」の「乗せる」という意からは分かりにくい。
基本儀の「手の動作」まで立ち返らなくてはならない。
「手を使う」意が、「手を使って物を作用させる」意に発展し、
道具を使う場合に用いるようになった。
「迷惑が掛かる」「期待が掛かる」「声が掛かる」。
「掛かる」の場合は、逆に、他から作用が及ぶことを表す。
「仕事に掛かる」「気合を入れて掛かる」。
この「掛かる」の場合は、他からでなく、自分から、
何かに取り組むことを表す。
「手間を掛ける」「時間を掛ける」「金が掛かる」。
「掛ける」の「手を働かせる」意が、「労力を費やす」意に発展し、
手間、時間、金などを費やすことに使う。
「掛ける」は動詞の後に付く事がある。この場合は、
「掛ける」の「少しだけ引っ掛かっている」イメージから、
「少しだけ~する」「~しはじめる」「~している途中」の
意味を持つ。
例)「見掛ける」「話し掛ける」「食べ掛け」
また、「はじめる」前の段階である「~する準備」の意味に
まで発展する。
例)「仕掛け」
「汗をかく」「恥をかく」「いびきをかく」「べそをかく」
「あぐらをかく」で使われる「かく」は、漢字では「掻く」と書く。
指の動作ではないのに、なぜ、この言葉を使うのだろうか。
それは、指の目立つ動作の意味から転じて、表に目立って出ると
いう意味を持つようになったためだ。
「かく」「かける」「かかる」の、その他の単語家族は
以下のサイトへどうぞ。
単語家族 和語編
http://www5b.biglobe.ne.jp/~shu-sato/kanji/family-wa.htm#kaku
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単語家族 「ひく」編 (2009/10/12) |
「ひく」の単語家族の基本の意味は、
「自分の方へ寄せる」である。
「引く」は「自分の方へ寄せる」「抜き取る」意。
「曳く」は「引っ張る」「引きずる」意。
例)船を曳く。
「牽く」は「引っ張って前進させる」意。
例)車を牽く。
「惹く」は「関心をひく」意。
例)人目を惹く。音楽に惹かれる。
「退く」は「後ろに引き下がる」意。
それから発展して、「その場を去る」「引退する」意。
例)兵を退く。身を退く。手を退く。早びきする。
「挽く」は鋸を手前に引くことから、「切り割る」意。
例)鋸を挽く。かんなを挽く。コーヒー豆を挽く。
「碾く」は引きまわすことから、
「ひき臼で回してすりくだく」意。
例)小麦を碾く。
「弾く」は琴や琵琶などで、爪を手前に引くことから、
「弦楽器を演奏する」意。
例)琴を弾く。三味線を弾く。
バイオリンを弾く。ピアノを弾く。
「轢く」は車輪が物に引っ掛かることから、
「車輪が人や動物の上を通る」意。
例)トラックに轢かれる。
「引く」はいろんな使われ方をする。
「引き算」「辞書を引く」「風邪を引く」
「線を引く」「水道を引く」「電話を引く」
「引っ掛かる」
「引く」の「抜き取る」意から、
「引き算」は左側の数から右側の数を抜き取ることで、
「辞書を引く」は辞書から意味を抜き出すこと。
「引き入れる」意から、「風邪を引く」は風邪を引き入れること。
「引く」の「線状の運動」の意から発展して、
「線状の軌跡を作る」意ができ、その意味で、
線、水道、電話などにも用いられる。
線状の運動をしているときに、途中に突起物があって、
それに掛かって、動きを止めることが「引っ掛かる」。
「ひく」の、その他の単語家族は以下のサイトへどうぞ。
単語家族 和語編
http://www5b.biglobe.ne.jp/~shu-sato/kanji/family-wa.htm#hiku
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単語家族 「こそあど」編 (2009/12/11) |
「こそあど」とは、指示名詞、指示形容詞、指示副詞を
表にまとめたもの。
これ | それ | あれ | どれ | この | その | あの | どの | ここ | そこ | あそこ | どこ | こちら | そちら | あちら | どちら | こっち | そっち | あっち | どっち | こなた | そなた | あなた | どなた | こいつ | そいつ | あいつ | どいつ | こんな | そんな | あんな | どんな | こう | そう | ああ | どう |
「こ」は近いものを示す。
「あ」は遠いものを示す。
「こ」と「あ」が対になっている。
「そ」は話し手と聞き手が共通に知っているもの、
つまり、特定できるものを示す。
「ど」は疑問(例、どれ)、不定(例、どれも)のもの、
つまり、特定できないものを示す。
「そ」と「ど」が対になっている。
次のような説明も見られる。
「こ」は近くのもの、
「そ」は中程度の距離のもの、
「あ」は遠くのものを指す。
「こ」は話し手の近くにあるもの、
「そ」は聞き手の近くにあるもの、
「あ」はどちらからも離れているものを指す。
これらは、物の場合の説明には向くが、事の場合までを含めると、
「そ」は「特定できるもの」という説明が、一番適切と思われる。
たとえば、「先週の日曜日はどこに行きましたか」という問いには、
「その日は買い物にいきました」と「その」を使って答えるのが
普通である。「あの」や「この」は使わない。「この日」という
場合は、カレンダーの日付を指差しながら答えるときぐらいである、
「あの日」という場合は、明らかに遠い過去について語るときだけ
である。「この」は近いもの、「あの」は遠いものという意識で
使われている。このことから、「その」は、聞き手と話し手との
共通の事項を語る場合に使われることがわかる。
「こそあど」の、その他の単語家族は以下のサイトへどうぞ。
単語家族 和語編
http://www5b.biglobe.ne.jp/~shu-sato/kanji/family-wa.htm#kosoado
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単語家族「いろ」編 (2010/01/21) |
古代の日本語では、固有の色名は、「あか」「くろ」「しろ」
「あお」の4つしかなかったという。
「あか」は「明るい」を、「くろ」は「暗い」を、
「しろ」は「はっきり」を、「あお」は「ぼんやり」を
表すものだったらしい。
現在では、白と黒が対、赤と青が対のイメージだが、
古代では、赤と黒が対、白と青が対だったようだ。
「赤」は、本来、「明るい」を表す語であった。
「明るい」「明らか」「証し」「空く」「飽きる」「秋」は、
同系の語である。
「赤」の色の範囲は、暖色系全体を含み、赤色だけでなく、
橙色、黄色、桃色、茶色までが含まれる。
「赤の他人」「赤恥」の赤は「あきらか」という意味で用いられる。
「黒」は、本来、「暗い」を表す語であった。
「暗い」「暮れる」「眩む」は、同系の語である。
「白」は、本来、「はっきり」を表す語であった。
「知る」「印」「調べる」は、同系の語である。
「青」は、本来、「ぼんやり」を表す語であった。
「青い月」「青い顔色」などは、ここからくる。
「青」の色の範囲は、寒色系全体を含み、青色だけでなく、
緑色、藍色、灰色までが含まれる。
たとえば、「青りんご」「青野菜」は、緑色である。
「蒼き狼」「青毛の馬」は灰色の毛である。
4つの固有色名以外の色名は、他の意味の言葉からの転用である。
「緑(みどり)」は本来、「若々しい」を表わす語であった。
「みどりの黒髪」とか「みどりご」などは、ここからくる。
それが、若々しい葉っぱの色に転用されることになった。
「黄色」の「黄」の字は「火矢」の象形で、火矢の黄色い光を表わす。
訓読の「き」は「木(き)」が由来で、木の色を表わす。
「橙(だいだい)色」はミカン科の果実の色である。
オレンジ色ともいう。
「藍(あい)色」は、タデ科の草から作った染料の色である。
「あい」の語源は、「あお」から来ている。
「紫(むらさき)色」は、ムラサキ科の草から作った染料の色である。
「むらさき」の語源は、群れで咲いていることから来ている。
「朱色」は硫化水銀で作った顔料の色である。明るい赤色。
「緋色」は茜(あかね)から作った染料の色である。濃い赤色。
「あかね」の語源は、「赤根」である。
「紅(くれない)色」は紅花(べにばな)から作った染料の色。
鮮明な赤色。「くれない」の語源は「呉藍」である。
「茶色」は炒った茶葉の色である。
「灰色」「桃色」「水色」は、文字通り、そのものの色である。
古来からある色名の「赤」「青」「白」「黒」は、
「い」をそのまま付けて、形容詞になる。
「赤い」「青い」「白い」「黒い」は、なじみのある言葉である。
転用された色名は、「い」をつけても形容詞にはならない。
「緑い」「紫い」「灰い」という言葉はない。
ただし、「黄」「茶」は特殊で、「黄色い」「茶色い」がある。
「黄い」「茶い」にしなかったのは、形容詞の語幹が2音節以上
ないとシックリ来ないので、「色」を付けたのであろう。
「いろ」のその他の単語家族は以下のサイトへどうぞ。
単語家族 和語編
http://www5b.biglobe.ne.jp/~shu-sato/kanji/family-wa.htm#iro
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