物理量の保存則
「保存則」または「保存の法則」とは、ある物理量について、
個々には変化しても、全体の合計値は変化しないという法則である。
・保存する物理量には次のものがある。
・質量+エネルギー
・運動量
・角運動量(スピン)
・電荷
・レプトン数
・クォーク数
・色荷
・質量+エネルギー
・かつては、質量の保存の法則と、エネルギーの保存の法則は、
別々だったが、相対論以降、質量とエネルギーは相互に転換
することが分かり、1つにまとめられた。
・質量の保存の例
水素1グラムと酸素16グラムを反応させると、
17グラムの水ができる。反応前後で、それぞれの
元素の質量は変わったが、全体の質量は変わらない。
・エネルギーの保存の例
高い所にある石が落ちて、地上に当たって止まる。
高い所にあるときは、位置エネルギーであり、
落ちている途中は、運動エネルギーなり、
地上に当たったときは、熱エネルギーになる。
それぞれの形態別にはエネルギー量は変化するが、
エネルギーの総量は変わらない。
・運動量
・質量×速度で表す。
・ベクトル量なので、反対方向はマイナス値になる。
・たとえば、1キログラムの鉄の玉を持ち、
50キログラムの人が、50キログラムの舟に乗って、
静止している。
鉄の玉を右方向に秒速10メートルで投げれば、
反作用で人と舟は右方向に秒速0.1メートルで動く。
投げる前は、静止しているので、運動量は0。
投げた後は、玉が10kg・m/s。人と舟は反対方向なので、
-10kg・m/s。合わせて運動量の総量は0となり、
運動量は保存されている。
・角運動量(スピン)
・回転する物体の運動量。
・回転軸からの距離×質量×速度で表す。
・回転軸からの距離を短くすると、速度が増すのは、
この角運動量の値が変わらないようにするため。
・例えば、回転するスケート選手が、腕を横に伸ばすと、
回転速度が遅くなり、腕を引き戻すと、回転速度が
速くなる。
・素粒子の持つ磁気的性質(スピン)も、ここに含める。
(実際は素粒子の自転ではないらしい)
・電子、ニュートリノ、クォークなどの物質粒子は、
1/2,-1/2の値をとる。
光子などの力を媒介する粒子は1,-1の値をとる。
(単位はh:プランク定数)
・クォークが3つで構成されている粒子の場合、
1/2 (1/2 + 1/2 - 1/2)のものと、
3/2 (1/2 + 1/2 + 1/2)のものがある。
・クォークと反クォークで構成されている粒子の場合、
0 (1/2 - 1/2)のものと、
1 (1/2 + 1/2)のものがある。
・電荷
・電気量を表す。
・電子は-1、陽子は1、中性子は0、ニュートリノは0。
・レプトン数
・電子、ミュー粒子、タウ粒子、ニュートリノのこと。
・それぞれの粒子1つの値を1とする。
・反粒子の場合は値を-1とする。
・クォーク数
・アップ、ダウン、ストレンジ、チャーム、ボトム、トップの
クォークのこと。
・それぞれの粒子1つの値を1とする。
・反粒子の場合は値を-1とする。
・陽子や中性子など、クォーク3つで、できている粒子は、
クォーク数は3。
・中間子など、クォーク1つと反クォーク1つで、できている粒子は、
クォーク数は0。
・色荷
・クォークを互いに結びつけている力に関係する。
・赤、緑、青の値がある。
反赤、反緑、反青の反値がある。
・赤+緑+青=0。
赤+反赤=0。
緑+反緑=0。
青+反青=0。
・陽子や中性子など、クォーク3つで、できている粒子は、
赤クォークと緑クォークと青クォークで、できているので、
色荷は0になる。
・中間子など、クォーク1つと反クォーク1つで、できている粒子は、
赤クォークと反赤クォークまたは、
緑クォークと反緑クォークまたは、
青クォークと反青クォークで、できているので、
色荷は0になる。
素粒子の物理量の保存の例
・中性子が崩壊して、陽子と中性子と反ニュートリノになる。
・質量+エネルギー
・中性子は940MeV、陽子は938Mev、
電子は0.5MeV、反ニュートリノはほぼ0。
・崩壊前後の差の約1.5MeVは粒子が飛び去るときの
運動エネルギーになる。
・運動量
・崩壊前の中性子が静止しているとすると運動量が0。
・崩壊後の陽子が左に、電子は右上に、反ニュートリノは
右下に飛び去る。
運動量はベクトル量だから、反対方向の運動はマイナス
で足されるので、結果、運動量の総和は0になり、
全体として変化しない。
・スピン
・中性子は1/2、陽子は1/2、電子は1/2、
反ニュートリノは-1/2。
・崩壊後の総和は1/2になり、全体として変化しない。
・電荷
・中性子は0、陽子は1、電子は-1、反ニュートリノは0。
・崩壊後の総和は0になり、全体として変化しない。
・レプトン数
・中性子は0、陽子は0、電子は1、反ニュートリノは-1。
・崩壊後の総和は0になり、全体として変化しない。
・クォーク数
・中性子は3、陽子は3、電子は0、反ニュートリノは0。
・崩壊後の総和は3になり、全体として変化しない。
・ミュー粒子が崩壊して、電子とミューニュートリノと
反ニュートリノになる。
・質量+エネルギー、運動量については説明を省略する。
・スピン
・ミュー粒子は1/2、ミューニュートリノは1/2、
電子は1/2、反ニュートリノは-1/2。
・崩壊後の総和は1/2になり、全体として変化しない。
・電荷
・ミュー粒子は-1、ミューニュートリノは0、
電子は-1、反ニュートリノは0。
・崩壊後の総和は-1になり、全体として変化しない。
・レプトン数
・ミュー粒子は1、ミューニュートリノは1、
電子は1、反ニュートリノは-1。
・崩壊後の総和は1になり、全体として変化しない。
・クォーク数
・ミュー粒子は0、ミューニュートリノは0、
電子は0、反ニュートリノは0。
・崩壊後の総和は0になり、全体として変化しない。
・π+粒子がμ+粒子とνμ粒子に崩壊。
・質量+エネルギー、運動量については説明を省略する。
・スピン
・π+粒子は0、μ+粒子は-1/2、νμ粒子は1/2。
・崩壊後の総和は0になり、全体として変化しない。
・電荷
・π+粒子は1、μ+粒子は1、νμ粒子は0。
・崩壊後の総和は1になり、全体として変化しない。
・レプトン数
・π+粒子は0、μ+粒子は-1、νμ粒子は1。
・崩壊後の総和は0になり、全体として変化しない。
・クォーク数
・π+粒子は0、μ+粒子は0、νμ粒子は0。
・崩壊後の総和は0になり、全体として変化しない。
・電子と陽電子が対消滅して、光子になる。
・電子の陽電子のスピンが平行(1/2と1/2)か、
反平行(1/2と-1/2)かによって、
発生する光子の数が変わる。
・平行の場合、奇数個の光子に崩壊する。
スピンの総和は1になる。
光子1個の場合、スピンは1のもの1つ。
光子3個の場合、スピンは1のもの2つ、-1のもの1つ。
・反平行の場合、偶数個の光子に崩壊する。
スピンの総和は0になる。
光子2個の場合、スピンは1のもの1つ、-1のもの1つ。
光子4個の場合、スピンは1のもの2つ、-1のもの2つ。
・電荷
・電子は-1、陽電子は1、光子は0。
・崩壊前後共に総和は0になり、全体として変化しない。
・レプトン数
・電子は1、陽電子は-1、光子は0。
・崩壊前後共に総和は0になり、全体として変化しない。
物理なんでも帳