電子の角運動量


運動量は直線運動の場合、角運動量は回転運動の場合の運動量である。
直線運動の慣性と同じように、回転運動にも慣性はある。

運動量(kg∙m/s) = 質量(kg) × 速度(m/s)

角運動量(kg∙m2/s) = 運動量(kg∙m/s) × 軌道半径(m)
  プランク定数の単位と同じになっている。

電子の角運動量には、2種類ある。

・原子核の周りを公転する角運動量(軌道角運動量)  
   値はディラック定数(ħ)の整数倍

・電子の自転(スピン角運動量)
   値はħ/2

電子の公転速度と自転速度を計算してみる。

電子の公転速度
  ħ = 質量 × 速度 × 公転半径
  速度 = ħ / 質量 / 公転半径
  = 1.05×10-34 / 9.11×10-31 / 10-10
  = 1.15×106 (m/s)
  光速の260分の1

電子の自転速度
  ħ/2 = 質量 × 速度 × 電子の半径
  速度 = ħ / 2 / 質量 / 電子の半径
  = 1.05×10-34 / 2 / 9.11×10-31 / 2.82×10-15
  = 2.04×1010 (m/s)
  光速の68倍

電子の自転(スピン)は光速を超えてしまう。
光速以下にするなら、電子の半径は10-13m以上でなければならない。
しかし、これは陽子の大きさの100倍以上である。
これにより、電子のスピンと思われているものは、
実際は自転ではないとされている。

しかし、自転と考えた方がわかりやすい現象がある。
鉄が磁石になる原因は、電子のスピンとされている。
電子のスピンによる円電流により磁力が生じると
説明できるのである。



* 参考 *

プランク定数(h)
  6.6×10-34 ジュール秒 (kg∙m2/s)
  周波数(回/s)を掛けるとエネルギーが求まる。
  E = hν ジュール(kg∙m2/s2)

ディラック定数
  ħ = h/2π
  1.05×10-34

光速(c)
  3×108 m/s

h (kg∙m2/s) > 運動量 (kg∙m/s) × 長さ (m)
h (kg∙m2/s) > エネルギー (kg∙m2/s2) × 時間 (s)

電子の質量 9.11×10-31 kg

電子の公転半径  10-10 m

電子の半径
  古典半径 2.82×10-15 m
  電磁的上限半径 1.0×10-18 m
  実験による上限値 1.0×10-22 m
  理論値 1.0×10-32 m

電子の大きさは、現在のところ、測定できていない。
陽子の大きさの 10-15 m より小さいことは確かである。
現在の物理学では、電子の大きさは0、つまり、点として扱われている。

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