エネルギーのゆくえ

エネルギーの保存の法則があるので、
エネルギーは形態を変えるだけで、なくなることはない。
エネルギーが不足するとか、枯渇するとか言っているのは、
熱を発する物質のことである。

熱を発する物質は次のものがある。
・化学エネルギーから熱に転換するもの。
  石炭、石油、天然ガスなどの化石燃料と言われるもの。
・原子核エネルギーから熱に転換するもの。
  ウランなどの核燃料。

これらは、消費されると自然には再生しないので、やがて、枯渇する。

元をたどれば、これらは恒星が作り出したものだ。
・化石燃料
  大昔の植物が地中に埋まって変化してできた物質である。
  植物は光合成をして、その体をつくるのであるから、
  エネルギーの大元は太陽の光である。
・核燃料
  恒星の寿命が尽きたときに起こる大爆発(超新星爆発)の
  ときに作られる。これも大元は恒星の持つエネルギーである。

燃料からのエネルギーの流れ
1)まず、熱エネルギーに変換される。
  熱エネルギーは、家庭では、暖房、給湯、調理などに使われる。
2)次に、熱エネルギーは運動エネルギーに変換される。
  (蒸気機関、エンジンなどで)
  運動エネルギーは乗り物、機械などの動力に使われる。
3)次に、運動エネルギーは電気エネルギーに変換される。
  (発電機などで)
  電気エネルギーは便利なエネルギー形態である。
  便利な点は次の通り。
   ・配給しやすい(電線を引けば、配給するのに労力がかからない)
   ・いろんな形のエネルギーに形態変換しやすい。
  なので、現代社会では、ほとんど電気に頼っている。
4)次に、電気エネルギーがいろいろな形態に変換されて使われる。
  ・電気 → 運動
    電動機(モーター)
  ・電気 → 運動 → 熱
    電気冷蔵庫
  ・電気 → 熱
    電熱器、電磁調理器、電気ストーブ
  ・電気 → 光
    電球、蛍光灯、発光ダイオード、電子レンジ
  ・電気 → 磁気
    電磁石、電磁ブレーキ
  ・電気 → 音
    スピーカー
5)最終的に、運動は摩擦熱に変わり、光は物質に吸収され熱になるなどで
  すべて、熱エネルギーに変わってしまう。

エネルギーの最終形態が熱エネルギーならば、
上記5の熱エネルギーを、上記1の熱エネルギーにまわしてやれば、
永久にエネルギーを使い続けられるように思われる。
しかし、1の熱エネルギーと5のエネルギーとは、同じ熱エネルギーでも、
違っているところがある。
1の熱エネルギーは形態変換しやすいが、
5の熱エネルギーは形態変換しにくいのである。

熱エネルギーを形態転換するには、熱エネルギーの差を作らなければならない。
たとえば、蒸気機関は、水の状態の熱エネルギーから、
水蒸気の状態の熱エネルギーに変化するという、熱エネルギーの差を利用している。
5の状態の熱エネルギーは、このエネルギー差を作れないため、使えないのである。

これを見ていると、確かに何かを消費している。
しかし、エネルギー保存の法則があるので、エネルギー自体は消費されていない。

使えるエネルギーは情報の高いエネルギーといい、
使えないエネルギーはエントロピーの高いエネルギーという。
ここでいう「情報」というのは、「知識」という意味ではなく、
「役立つ」という意味で使われている。
エントロピーというのは乱雑さをあらわす言葉である。
自然のままにしておくと、エネルギーは情報の高い状態から、
エントロピーの高い状態に変化する。

つまり、エネルギーは減らないが、情報は減るのである。
われわれはエネルギーを消費しているのではなく、情報を消費している。

参考

「情報」の英語は information である。
中に、form があることから分かるように、
元は、「形を与える」という意味であったようだ。
物に形を与えると「役立つ」ものになる。
「役立つ」言葉が情報である。


物理なんでも帳