粒子の磁気スピン

・スピンは粒子の磁石的性質を示す値である。
 この性質は磁気モーメントとも言う。

・直線運動する粒子を磁界の中を通すといくつかの方向に曲がる。
 粒子が磁石的な性質(N極とS極)を持つと考えられる。
・また、光線を磁界に通すと複数のスペクトルに分かれる。
 これも、同じような性質から来る。

・スピンという名になったのは、粒子が自転していること
 によって、磁気が生まれていると考えられたからである。
・しかし、自転速度を計算すると、光速を超えてしまうため、
 実際は粒子の自転ではないとされている。
 粒子が磁石的性質を持つ仕組みはよくわかっていない。

・スピンの値の単位は「ħ (=h/2π)」である。
 hはプランク定数

・粒子の種類別のスピンの値
  ・光子、ウィークボソン、グルーオンは1
    スピン1の粒子が力を媒介するとき、
    同じ荷を持つもの同士は反発しあい、
    反対荷を持つもの同士は引き付けあう。
  ・重力子は2
    スピン2の粒子が力を媒介するとき、
    同じ荷を持つもの同士は引き付けあい、
    反対荷を持つもの同士は反発しあう。
  ・ヒッグス粒子は0
  ・レプトン、クォークは1/2
  ・中間子は0か1
  ・バリオンは1/2か3/2

・各スピンの値ごとの取りうる状態
  スピン  状態の数  状態の種類
  0      1   0
  1/2    2   -1/2, +1/2
  1      3   -1, 0, +1
  3/2    4   -3/2, -1/2, +1/2, +3/2
  2      5   -2, -1, 0, +1, +2
  *ただし、光子などの非物質の粒子は、
   0の状態を持たない。

・回転の対称性の表現
  スピン  表現
  1/2  2回転して元の状態の戻る。
       (波動関数が2周してようやくつながる)
       1回転では、反対の性質になる。
  1    1回転して元の状態の戻る。
  2    半回転して元の状態の戻る。

・スピンの状態の表現
  ・スピンの値が1/2のとき、取りうる状態が2つある。
   それぞれの状態を「右巻き」「左巻き」と表現したり、
   「上向き」「下向き」と表現したりする。
  ・磁石のN極に引かれる場合、「上向き」「右巻き」「+1/2」
   と表現される。
  ・S極に引かれる場合、「下向き」「左巻き」「-1/2」
   と表現される。
  ・「巻き」と「向き」の関係は右ねじの関係である。
   右ねじを右まわり(時計まわり)にまわすと、
   先に進む。それがスピンの向きである。
   だから、上向きとは、進行方向の向きになる。
  ・向き方向がS極に相当する。

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・1/2の値のスピンの粒子同士は、同じ向きだと反発する。
 つまり、両方ともN極が上向きの磁石を近づけると
 反発するのと同じ。
 上向きと下向きの対は一緒に居られる。
 Nが上の磁石とSが上の磁石が引き付くのと同じ。
 つまり最大、2つまでは一緒に居られる。
・一方、1の値のスピンの粒子同士は、いくらでも一緒に居られる。

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・ニュートリノは左巻きのみ存在する。
 反ニュートリノは右巻きのみ存在する。
・観測が難しいニュートリノは、そのスピンはどうやって計るのか。
  ・ベータ崩壊のときに出る、電子は、進行方向に向って、
   後から見ると、左巻き(反時計まわり)、
   つまり進行方向とは逆のスピンの向きのものだけが
   観測される。
  ・反対の方向に放出される反ニュートリノは右巻き
   つまり進行方向と同じ向きのみと推測される。
  ・両者とも崩壊前の粒子のスピンの向きと量を保存している。
   つまり、崩壊前の粒子のスピンの向きと逆方向に
   電子は放出され、正方向に反ニュートリノが放出される。

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・電子と陽電子の対のスピン
  ・電子の陽電子のスピンが平行か反平行かによって、スピン1と
   スピン0の状態ができる。
  ・スピン1の状態をオルソ・ポジトロニウム、
   スピン0の状態をパラ・ポジトロニウムと呼ぶ。
  ・オルソ・ポジトロニウムは約100ナノ秒の寿命で、
   奇数個の光子に崩壊する。
  ・パラ・ポジトロニウムは約0.1ナノ秒の寿命で、
   偶数個の光子に崩壊する。

・スピンの量子的性質
  ・スピンをもつ荷電粒子は、その磁極の向きがあらゆる方向を向いている
   はずだが、磁界の中を通ると、2つの一定方向にしか行かない。
   この2方向の間の方向には行かない。
  ・たとえば、上にN極、下にS極がある磁界を電子が通る場合。
   上がN極の電子が通ると、100%の粒子が下に曲がる。
   上がS極の電子が通ると、100%の粒子が上に曲がる。
   ここまでは、普通にイメージできる。
  ・磁力線と垂直方向にN極がある電子が通ると、
   曲がらずにまっすぐ通るのではなく、
   50%の確率で、下に曲がる粒子と、下に曲がる粒子がでる。
   2方向しかなく、間の方向を通らないということが量子的性質である。
  ・一度、磁界を通って曲がったものはスピンの向きが確定する。
  ・X方向に磁界をかけ、上と下に分かれたもののうち、
   上になったものに、もう一度、X方向に磁界をかけると、
   100%が上に行く。
  ・上に行ったものにY方向に磁界をかけると、
   50%の確率で、右に曲がる粒子と、左に曲がる粒子に分かれる。
  ・さらに、右に曲がったものを、もう一度、X方向に磁界をかけると、
   50%の確率で、上に曲がる粒子と、下に曲がる粒子に分かれる。
   これは、先ほど、X方向に磁界をかけたときに、上に曲がったもの
   だったが、Y方向に磁界をかけたことによって、そのときに得た
   方向は失われたということである。

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・光子のスピン
  ・光子は電荷がないので、磁界を通して分けることで確認することはできない。
  ・光子のスピンは円偏向であらわる。
   (電磁波の振動の向きが、回転するように変わること)


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