なぜ中性子は単独では崩壊し、陽子と一緒だと安定なのか

陽子、中性子の結合パターンごとの安定度は以下の通り。
p:陽子、n:中性子

  pのみ(水素の原子核)
    安定
  nのみ(モノ・ニュートロン、自由中性子)
    15分でβ崩壊
  pp(ヘリウム2の原子核)
    存在しない
  pn(重水素の原子核)
    安定
  nn(ダイ・ニュートロン)
    三重水素を発生させる原子核反応の過程で、
    極めて短い時間にのみ存在
  ppp(リチウム3の原子核)
    短時間で3つの陽子に分解
  ppn(ヘリウム3の原子核)
    安定
  pnn(三重水素の原子核)
    半減期12.32年でβ崩壊
  nnn(トリ・ニュートロン)
    存在しない
  pppp
    存在しない
  pppn(リチウム4の原子核)
    半減期は7.6×10-23秒で陽子放出崩壊
  ppnn(ヘリウム4の原子核)
    安定
  pnnn(水素4の原子核)
    半減期は1.4×10-22秒で中性子放出崩壊
  nnnn(テトラ・ニュートロン)
    ベリリウム14を壊す実験の過程で、
    極めて短い時間にのみ存在

これらの安定度は、ダウンクォークの崩壊する力(弱い力)と、
陽子同士が反発する力(電磁気力)と、強い力が引き付ける力との
バランスよって決まってくる。

ダウンクォークはアップクォークより質量が大きく、
エネルギーが高いので、崩壊して安定しようとする。
強い力があると、これが食い止められるようである。

例えば、これらの関係を次のように仮定しよう。
  陽子、中性子は、それぞれ、3単位の強い力を持つ。
  強い力2単位でダウンクォーク1つの崩壊を抑える。
  強い力4単位超でプラス電荷同士の反発力を抑える。

陽子1つが安定なのは。
  陽子1つで強い力が3単位。
  ダウンクォーク1つで2単位必要。
  強い力が十分足りているので、崩壊しない。

中性子1つが不安定なのは。
  中性子1つで強い力が3単位。
  ダウンクォーク2つで強い力が4単位必要。
  強い力が足りないので、1つダウンクォークが崩壊する。

陽子2つが存在しないのは。
  陽子2つで強い力が6単位。
  プラス電荷の2つで強い力が8単位超必要。
  強い力が足りないので、陽子同士が反発して結合しない。

陽子1つと中性子1つが安定なのは。
  陽子1つと中性子1つで強い力が6単位。
  陽子のダウンクォーク1つ、中性子のダウンクォーク2つ、
  合わせて3つで強い力が6単位必要。
  強い力がぎりぎり足りているので、崩壊しない。

中性子2つが不安定なのは。
  中性子2つで強い力が6単位。
  ダウンクォーク4つで強い力が8単位必要。
  強い力が足りないので、崩壊する。

間を飛ばして、
陽子2つと中性子1つが安定なのは。
  陽子2つと中性子1つで強い力が9単位。
  陽子のダウンクォーク2つ、中性子のダウンクォーク2つ、
  合わせて4つで強い力が8単位必要。
  強い力が十分足りているので、崩壊しない。
  プラス電荷が2つで強い力が8単位超必要。
  強い力が足りているので、陽子同士が反発しない。

陽子1つと中性子2つが長い時間で崩壊するのは。
  陽子1つと中性子2つで強い力が9単位。
  陽子のダウンクォーク1つ、中性子のダウンクォーク4つ、
  合わせて5つで強い力が10単位必要。
  強い力がぎりぎり足りてないので、長い時間で崩壊する。

間を飛ばして、
陽子3つと中性子1つが不安定なのは。
  陽子3つと中性子1つで強い力が12単位。
  陽子のダウンクォーク3つ、中性子のダウンクォーク2つ、
  合わせて5つで強い力が10単位必要。
  強い力が足りているので、崩壊しない。
  プラス電荷が3つで強い力が12単位超必要。
  強い力が足りないので、陽子同士が反発して結合しない。

陽子2つと中性子2つが安定なのは。
  陽子2つと中性子2つで強い力が12単位。
  陽子のダウンクォーク2つ、中性子のダウンクォーク4つ、
  合わせて6つで強い力が12単位必要。
  強い力がぎりぎり足りているので、崩壊しない。
  プラス電荷が2つで強い力が8単位超必要。
  強い力が足りているので、陽子同士が反発しない。

陽子1つと中性子3つが不安定なのは。
  陽子1つと中性子3つで強い力が12単位。
  陽子のダウンクォーク1つ、中性子のダウンクォーク6つ、
  合わせて7つで強い力が14単位必要。
  強い力が足りないので、崩壊する。

実際はもっと細かい計算が必要だが、
イメージをつかむには、これでいいだろう。

画像



画像

物理なんでも帳