運動エネルギーが速度の2乗になるのが納得できない
・直線運動の運動エネルギーの方程式
(1/2)mv2
m:質量 v:速度
質量 m と速さ v の2乗に比例する。
・たとえば、1kgの物質が毎秒1mの速度で運動するとき、
その運動エネルギーは0.5J(ジュール)である。
2倍の毎秒2mの速度で運動するときは、
運動エネルギーは2Jである。
速度が2倍になると、エネルギーは4倍になる。
・しかし、これが腑に落ちない。
感覚的には、速度0m/sから1m/sにする仕事量と、
1m/sから2m/sにする仕事量とは同じ感じがするのである。
・でも、式から導かれる結果は、0m/sから1m/sで増えたエネルギー
は0.5Jで、1m/sから2m/sで増えたエネルギーは1.5Jであり、
3倍の違いがある。
・これは、エネルギーの定義が、力を加えた時間でなく、
力を加えた距離であるからだろう。
エネルギー = 力×距離
力=質量×加速度
・0m/sから1m/sにするときも、1m/sから2m/sにするときも、
加える力が同じ1N(ニュートン)ならば、加える時間は同じ1s(秒)
である。
しかし、力を加えている間に移動している距離は違ってくる。
0m/sから1m/sのときは0.5m、1m/sから2m/sのときは1.5mである。
この違いが増えたエネルギーの違いに比例する。
・エネルギーの定義を「力×時間」に変えてしまった方が分かり易
いのではないかと思えてくる。そうすると「質量×速度」という
もっと単純な式になる。こっちの方が感覚に合っている。
・しかし、物理学はうまくできていて、「力×距離」でやった方が
全体として辻褄が合う。
・重力による位置エネルギーとの整合性を保つためには、
「力×距離」にする必要がある。
・重力による位置エネルギーの方程式
mgh
m:質量 g:重力加速度 h:高さ
質量 m と高さ h に比例する。
重力加速度は、9.80665m/s2。
以下では計算しやすくするため、10m/s2として計算する。
・たとえば、1kgの物質を5m持ち上げたとき、
その位置エネルギーは50J(ジュール)である。
2倍の10m持ち上げたときは、位置エネルギーは100Jである。
高さが2倍になると、エネルギーは2倍になる。
これは、感覚に合っている。
・しかし、5m落下したときの速度と、10m落下したときの速度を
比較すると、比例関係になっていない。
5m落下したときの速度は約10m/s、
10m落下したときの速度は約14.1m/sである。
√2倍になっている。
ちなみに、20m落下したときの速度は約20m/sになる。
高さ4倍で、速度が2倍の関係になっている。
・結局、運動エネルギーは速度の2乗で計算した方が都合がよい。
・でも、やはり、感覚的につかめない。
・たとえば、静止した状態で1kgの球を1m/sの速度で放出する場合と
1m/sの速度で移動する自動車から、進行方向に球を1m/sの速度で
放出する(合わせて球は2m/sの速度で運動する)場合を考えてみ
よう。どちらも同じエネルギーを与えたと感じられる。
・しかし、計算上は、球に加わったエネルギーは0.5Jと1.5Jという
違いがある。この違和感はどこから出てくるのだろう。
・実は、運動エネルギーは見る立場によって変わってくる。
自動車と同じ速度で運動する立場でみると、球に加わったエネル
ギーは0.5Jである。しかし、地上に静止する立場では1.5Jになる。
・球を放出する場合は、その反作用を考えないといけない。
球を放出したあとの自動車は、その反作用で減速する。
・分り易くするため、球と自動車の質量を1kgとする。
(実際はそんな軽い自動車はないが)
・静止した自動車から球を1m/sの速度で放出した場合、
自動車も反対側に1m/sの速度で運動するので、
0.5J+0.5Jで、合わせて1Jの運動エネルギーである。
静止しているときは0Jなので、1J増えたことになる。
・1m/sの速度で移動する自動車から、球を放出した場合、
放出する前の運動エネルギーは、自動車の0.5Jと球の0.5Jで、
合わせて1Jである。
放出後は、球の速度は2m/sで、車の速度は反作用で0m/sになる。
放出した後の運動エネルギーは、自動車の0Jと球の2Jで、
合わせて2Jである。
1J増えたことになる。
・球と自動車を合わせた場合、1Jから2Jにというように比例関係が
見られる。球だけを見てみると、0.5Jから2Jというように2乗の
関係になってくる。
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