聖母の謙遜

 

主は聖母を隠された

 

 

 

ルカ1・38

 

マリアは言った。「わたしは主のはしためです。お言葉どおり、この身に成りますように。」そこで、天使は去って行った。

 

 

 

ルカ1・47−49

 

わたしの魂は主をあがめ、わたしの霊は救い主である神を喜びたたえます。

身分の低い、この主のはしためにも目を留めてくださったからです。

今から後、いつの世の人もわたしを幸いな者と言うでしょう、

力ある方が、わたしに偉大なことをなさいましたから。

 

 

 

ルカ9・48

 

あなたがた皆の中で最も小さい者こそ、最も偉い者である。

 

 

 

ルカ18・14

 

言っておくが、義とされて家に帰ったのは、この人であって、あのファリサイ派の人ではない。だれでも高ぶる者は低くされ、へりくだる者は高められる。

 

 

 

天界と地獄267

 

 天使たちはかくも大いなる知恵を受けることが出来るのは、彼らの内部は開かれており、知恵は凡ゆる完成のように、内的なものになるにつれて増大し、かくて内部が開かれるに従って増大するからである(*2)。各天使には三つの度の生命が在って、その度は三つの天界に相応している(29−40参照)、その最初の度の開かれている者たちは最初の、または最低の天界におり、第二の度の開かれている者たちは、第二の、または中間の天界にいるが、しかし第三の度の開かれている者たちは、第三の、または最も内なる天界におり、諸天界の天使たちの知恵はこれらの度に従っている。ここから最も内なる天界の天使たちの知恵は中間の天界の天使たちの知恵に無限にまさり、中間の天界の天使たちの知恵は最低の天界の天使たちの知恵に無限にまさっている

 

 

 

アグレダのマリア/神の都市/P318

 

 いつも書きますように、私は聖母のなさったあまりにもたくさんのことを全部書き記すことはできません。福音書の成立にあたり、聖母が取り計らって下さったこと、福音書に記されるべきあらゆる神秘について聖母は良く知っておられたことは特筆に値します。この知識を聖母は何度も頂きましたが、特に御子の御昇天の時に頂きました。その日以来、聖母は何度も主の御前に平伏し、使徒たちや福音史家たちに神の光を与え、時期が熟した時、書くことを命令して下さるようにお願いしました。

 前章で述べたように、聖母は天に挙げられ、主より教会を委託された後、高間に戻り、割礼などに関する討議、決定すべき会議の前に祈りに入られました。その時、主は聖福音を書く時が来たので、教会の女主人としてそれを取り計ることを聖母にお命じになりました。聖母は深い謙遜から、主の代理者兼教会の頭である聖ぺトロがそれをすべきことで、そのように重要なことに関して神の啓示を頂くべきことを主から同意していただきました。会議が割礼の問題を解決した後、聖ぺトロは我らの救世主にして師なるキリストの御生涯の神秘を書き記す必要性について参会者たちに提案しました。書物ができれば、使徒たち、弟子たちは、信者たちに相違しない同じことを説教し、古い律法を廃止し、新しい律法を樹立できます。

 

 

 

 

アグレダのマリア/神の都市/P320

 

 聖マテオは二、三日後に最初の福音を書き始める前に、高間の奥の部屋で祈り、主の歴史の初めについて啓示を願っていると、偉大な威厳と光輝の玉座に腰かけられた聖母が、ドアが閉められているのに入って来られます。聖母は彼に立ち上がるようにおっしゃいます。彼は立ち上がり、聖母に祝福を願います。聖母は申されます、「私の僕なるマテオよ、あなたが福音を書くという幸運を頂き、神の祝福により福音を書き始めるようにいと高き御方が私をお遣わしになりました。あなたは聖霊の御助けを頂きます。私の全心からそれを請い願います。しかし、人となられた御言葉の受肉と他の神秘を現すため、そして、主の教会の基礎として世界に主の信仰を確立するために絶対必要なこと以外は書かないで下さい。この信仰が樹立された後で、主の強力な御手が私になさった神秘と祝福を信者たちに示す他の人々を、後ほど主は見つけられるでしょう。」聖マテオは聖母の指示に従う意志を明らかにし、福音を作成するとことを聖母と話していると、聖霊が目に見える形で降りて来られます。聖母のそばで聖マテオは書き始めます。聖母が去られた後、書き続け、ユダヤで書き終えます。ヘブライ語で書き、完成したのが我らの主の四十二年目です。

 福音史家マルコは、主の生誕後四十六年目に自分の福音をヘブライ語でパレスチナで書きました。書き始める前に自分の書き始める意図を聖母に知らせ、神の啓示を得て下さるように聖母に願うことを守護の天使に頼みました。聖母はお聞きになり、主は直ちに天使たちに、最も美しい光輝く玉座に聖母をお乗せし、聖マルコの許にお連れするように命じました。聖母の前に平伏し、聖マルコは言いました、「救世主の御母なる全被造物の女主人様、私は御子と御身の僕であり、御身の御来訪の価値がない者です。」聖母はお答えになります、「あなたが仕え、愛するいと高き御方は、あなたの祈りが聞き届けられ、聖霊があなたの福音を書くにあたってお助けになることを保証するため私をお遣わしになったのです。」聖母は聖マテオにおっしゃったように、聖母御自身のことは書かないようにおっしゃいました。即座に聖霊が目に見える輝く姿となり、聖マルコの上に御降りになり、お包みになり、内的啓示により満たされました。聖母のおられる間に聖マルコは書き始めました。その時、聖母は六十一歳でした。後に、聖マルコはローマの信者たちのためにもラテン語で書きました。

 聖母が六十三歳になられた年、聖ルカはギリシャ語で福音を書きました。聖ルカが書き始めようとした時、聖母が出現されました。人となられた御言葉の受肉やキリストの自然な母としての威厳について書くことになりました。聖霊が聖ルカの上に御下りになり、聖母のそばで聖母から直接事実を教わりました。聖母が玉座に腰かけておられる姿を書くことは、聖母の御要求通りしませんでした。その時、聖ルカはアカイアに住み、長い間、聖母と一緒でした。

 最後で四番目の福音史家、聖ヨハネは主の暦で五十八年の時、聖母の被昇天の後、ギリシャ語で、異端や誤謬に対し書きました。聖母の被昇天の後、ルシフェルたちは御言葉の受肉の信仰を弱めるため異端の種を撒いたのです。この信仰は過去において彼らを征服したからです。このため聖ヨハネは我らの救世主キリストの真で疑うことのできない神性を論証したのです。

 聖ヨハネが書き始めようとした時、聖母は天から降って来られました。全階級の何千もの天使たちがお供しました。聖母はお話しになります、「ヨハネ、私の息子、いと高き御方の僕よ、全人類が御子を永遠の御父の御子として、真の神として、そして真の人間として認めるようにあなたが書く時が来ました。私の神秘や秘密を書く時はまだ来ていません。世の中は、私を偶像崇拝するかもしれませんし、ルシフェルは救い主や聖三位の信仰を頂く人々を混乱するかもしれません。聖霊があなたを助けるでしょう。」聖母は聖ヨハネを祝福し、聖ヨハネを生涯守ることを約束し、天にお昇りになりました。聖母が神の知識と神の知的幻視により高められるにつれ、教会に対する世話と気配りも多くなりました。日々、信仰は地上に広がりました。真の御母なる先生として、使徒たちのことを心から気遣いました。聖ヨハネと聖小ヤコボ以外は全員、会議後エルサレムを離れました。聖母は使徒たちが外国で苦労することを心配しました。司祭として、御子の使徒として、教会の創立者として、教義の説教者として、いと高き御方の光栄に仕える者として選ばれた者としての使徒たちに最高の崇敬の気持ちを持っていました。聖母は天使たちに、使徒たちや弟子たち全員の世話をし、苦労している時は慰め、困難に当っては助けるように指名しました。使徒たち、弟子たちが今何をしているか、着物が不足していないか、天使たちに報告してもらいます。聖母は、彼らがエルサレムを出る時、着ていた物と同じ着物をいつも着れるように手配されました。これは御子の着ておられた物と同じ形と色の着物です。天使たちの手を借り、御自身の手で上着を織り、天使たちに、旅に出ている使徒たちに届けてもらいました。使徒たちは主と同じような格好で、主の御教えや御生涯について説教しました。食物に関しては、彼ら自身で托鉢するか、自給するか、施し物をもらうか自分たちで決めさせました。

 異邦人、ユダヤ人や、悪人たちをいつも唆す悪霊たちによる迫害から、使徒たちは天使たちにより助けられます。聖母の御名により、天使たちは人の姿になって彼らに現れ、慰めます。時には心の内部に働きかけます。牢獄から救い出したり、危険や罠について警告したり、旅に付き添い、場所や人に応じて何をすべきか教えたりします。天使たちは全てを聖母に報告します。聖母は、大変な労働をされ、使徒たちの全労働よりももっとされます。聖母が使徒たちや教会のために奇跡を行なわない日も夜もありません。これら全ての他に聖母は使徒たちに手紙を何回も書きます。天からの勧告や教義、慰めや力づけのための手紙です。

 

 

 

 

アグレダのマリア/神の都市/P326

 

 聖母はこの徳業において、御聖体の秘蹟を特に祝うように強く望まれました。主を崇め奉る聖母に、守護の天使たちや最高天の天使たちが参加するようにお望みになりました。いと高き御方は天使の大軍をお遣わしになり、キリストが聖母の中に秘蹟的に留まり給う不思議をお見せになります。聖母の中にキリストがおられるため、聖母はどの天使よりも、セラフィムよりもっと純粋でもっと聖であることがわかり、天使たちは光栄と讃美を神に唱えます。

 聖櫃に御聖体を安置するように、聖母が御自身の中に保有するに値すること以上に素晴らしいことは、聖母が聖体拝領の準備を毎日なさったことです。拝領の前日の夕方から祈祷部屋に入り、神の不変の真髄を拝み、御自身が卑しい身であるにも関わらず聖なる秘蹟における御子を頂くことを許してくださるように祈られます。秘蹟の内に教会内に留まり給うが故に、教会を愛する主に訴えられます。主に対し、御自身の御受難と御死去、主の人性と神性の一致、主の御生涯中の功徳、天使の徳と過去、現在、未来の義人の徳を捧げます。次に最も厳しい謙遜の業を行なわれます。神の無限に比べれば、塵と灰に過ぎない自分であることを公言されます。主を秘蹟の内に拝領することを黙想し、心から感動し、天に昇り、セラフィムやケルビムを越えて高く上り、御自身は全被造物中最下等であると判断され、守護の天使たちおよび他の全天使たちに、御自身を聖体拝領を受けるに値するように準備できるよう、主に嘆願することをお願いします。天使たちは聖母の言いつけに喜んで従い、聖母の嘆願にお供します。

 ミサの終わり近く、聖体拝領台に近づくにあたり、三度も恭しく跪き、愛に燃え、秘蹟の中の御子を拝領し、心から歓迎されます。拝領後、引きこもり、大事な用事のない限り、三時間一人きりでおられます。この時間、聖ヨハネは聖母から光が太陽光線のように照射しているのを見ることがしばしばありました。

 

 

 

アグレダのマリア/神の都市/P338

第六章

乙女マリアの光栄ある移行

 

 聖母の至高なる御死去の三日前、使徒たちや弟子たちはエルサレムの高間に集まりました。聖ぺトロが一番最初で、天使によってローマから連れて来られたのです。高間におられて聖母は、神に対する愛の力により、御体が少し衰弱しておられました。御死去が大変間近であったからです。御自分の祈り部屋の入口の所まで出て来られ、我らの救い主キリストの代理者を迎え、彼の足許に跪き、彼の祝福を請い、申されました、私はいと高き御方に感謝と讃美を捧げます。神が臨終の私を助けるため、聖なる父(教皇)を送って下さいました。次に聖パウロが到着しました。聖母は同じ出迎えの態度を示されました。使徒たちは聖母を神の御母、彼らの女王と呼んで挨拶しました。この尊敬と同じくらいの悲しみがありました。聖母の臨終に立ち会うために高間に集まったからです。他の人たちも集合しました。三日後、一堂に会した人々全員に聖母は深い謙遜、畏敬と愛をもって接し、一人一人の祝福を願われました。一人一人、聖母の御要望に応じ、感嘆すべき畏敬の挨拶をしました。聖母から色々受けた御指示に聖ヨハネは従い、聖小ヤコボの助力で人々は歓迎と宿泊のもてなしを受けました。

 

 

 

 

アグレダのマリア/神の都市/P339

 

室内では、使徒たち以下全員が秩序を保っています。聖ぺトロと聖ヨハネが長椅子の頭の所にいます。聖母は皆に敬意を表し、申されます、「私の最も親愛なる子供たちよ、あなた方の召し使いである私に一言話させて下さい。」 聖ぺトロは、聖母に皆が傾聴すること、何でもおっしゃるように答え、跪くのをやめ、長椅子に腰掛けるように御勧めしました。聖ぺトロは、聖母が長時間跪きながら主にお祈りされて、お疲れになられたであろうと思ったのです。この時、聖母は死に至るまで謙遜と従順の師としてこの二つの徳を実行されました。聖ぺトロの許可を得た後、長椅子を離れ、聖ぺトロの前に跪き、申されました、「私の主人、全宇宙の司牧者である聖なる教会の頭に、私は私的公的祝福を下さるようにお願いします。私は生涯にわずかな奉仕しかしませんでしたので、この婢をお許し下さい。聖ヨハネが私の着物や二着の上着を、私の世話をして下さった二人の婢に与える許可を下さい。」平伏し、キリストの代理者としての聖ぺトロの足に接吻し、たくさん涙を流し、使徒たちやそばにいる人たちに涙以上の感嘆を起こさせました。次に聖ヨハネのもとに行き、跪き、申されました、「私の息子、私の主人よ、主が十字架からあなたを私の息子として、私をあなたの母として任命されたのに、私は母としての義務を遂行できなかったことを許して下さい。あなたが息子として示して下さった御親切を心より感謝申し上げます。私をお造りになった神のおそばにいるため、あなたの祝福をお願いします。」

 

 

アグレダのマリア/神の都市/P340

 

 一人一人の使徒たちと何人かの弟子たちにお別れの挨拶をした後で、立ち上がられ、参集者全員に話されました、「最も親愛なる子供たちである御主人様、私は絶えずあなた方のことを思い、私の心の中に書き記しました。あなたは御子の選ばれた友だちであり、あなた方の中に御子を見ます。御子が私に下さった優しい愛情と愛徳をもってあなた方を愛しています。御子の聖なる永遠の御意志に従い、永遠の住いに参ります。その住いにおいて、神の最も透き通った光により、あなた方を母として見守りましょう。あなた方に私の母なる教会、いと高き御方の御名の讃美、福音の律法の公布、御子の御言葉の名誉と尊敬、御子の御受難と御死去の記憶、御子の教義の実施をお任せします。私の子供たち、教会を愛し、愛徳の結びによりお互いを愛しなさい。あなた方の主がいつも教えられた通りです。聖なる教皇のぺトロよ、あなたに私の息子ヨハネと他の全ての人々を宜しくお願い申し上げます。」聖母の御言葉は神の火の矢のように全員の心を貫きました。聖母が話し終えられた時、全員はらはらと涙を流し、慰め切れない悲しみにうち沈み、地面に倒れ、嘆き、うめき、大地を震わせました。全員が泣き、聖母も泣かれました。しばらくして聖母はもう一度話され、黙祷するようにおっしゃいます。全員の黙祷中、輝く王座におられる御子が諸聖人や無数の天使たちに付き添われてお出でになりました。高間の家は光栄で満たされました。御母は主を崇め、主の御足に接吻しました。平伏して地上最後の最も深い信仰と謙遜の態度を示されました。全人類が自分たちの全ての罪のために謙るよりももっと深く御自身を低くされました。主は仰せになりました、「私の最も親愛なる御母、この死に至る生命から、御父と私の光栄の中に、御身がお移りになる時が参りました。私の力により、私の御母として、御身に触れる権利も許可も持っていません。もしも、御身がこの世の出口を通過されたくないならば、私と共に来られ、御身の功徳が獲得した私の光栄に参加して下さい。」聖母は御子の足許に平伏し、喜ばしい御顔でお答えになります、「私の御子にして私の主よ、私もアダムの他の子供たちと同様に、自然の死の共通の門を通って永遠の命に入らせていただきたいと思います。私の真の神である御身は、何の恩義も負っておられないのに死の苦しみをお受けになりました。私が生きることにおいて御身に従ったように、死においても御身に従うことは当然と思われます。」 救世主キリストは御母の決意、犠牲を承認され、その成就に賛成されました。そして、全天使たちはソロモンの雅歌や新しい歌を合唱しました。救い主キリストの御出現について啓示されたのは、聖ぺトロと聖ヨハネだけでした。他の人々は神からの強力な効果を内心に感じました。天使たちの歌声は全員が聞くことができました。神の芳香は広がり、外の通りにも達しました。高間の家は素晴らしい光に満たされ、誰にも見えました。主は街路に集まったエルサレムの住民たちがこの光景の証人となるように望まれました。

 

 

 

 

グリニョン・ド・モンフォール/聖母マリアへのまことの信心/山下訳/P62

 

50.そんなわけで、神はご自分のみ手の傑作であるマリアを、世の終り頃、人びとに見せよう、マリアの美と使命を全世界の前に展開しよう、とお望みになるのです。その理由は次のとおりです。

@マリアは、一生のあいだ、まったく人目にかくれておいでになり、その深い謙遜によって、ご自分をチリあくたよりも、もっともっとひくくされたからです。ご自分のことを絶対に人前に表わさないようにと、神にも、使徒にも、福音記者にも、お願いしてそれが聞きとどけられたのです。

 

 

 

天界と地獄271

 

第三の天界の天使たちは聞くことにより知恵を完全にされるが、視覚によっては完全にされないことは記すに価しよう。彼らが説教から聞くものは彼らの記憶に入らないで、直接彼らの認識と意志とに入って、彼らの生命のものとなるが、目で見るものは記憶に入り、彼らはそれについて論じ、または話すのである。このことから聞く道は彼らには知恵の道であることが明らかである。これも同じく相応から起こっている、なぜなら耳は服従に相応し、服従は生命のものであるが、目は理知に相応し、理知は教義のものであるから。