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もしも、クライヴが泳げないのを気にしたら……≪T≫
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「クライヴ、少し付き合って頂けませんか?」
夜、と言ってもクライヴにとっては活動時間である深夜2時。
特に珍しくもない時間の訪問だった。
突然付き合って欲しいと言われても何時ものことだろうとクライヴは思った。
「ああ……。」
だが、それがこれから起こる悲劇の始まりだった……。
「…(場所ぐらい聞いておけばよかったな…)…。」
クライヴがそう思うのは無理もない。
何故なら、今二人が歩いているのは海へ突き出している崖の上。
そう、崖っぷちを歩いているのです。それもギリギリのところを。
崖と言っても何十メートルも高さがあるわけではありません。
水面からほんの2メートル強と言ったところでしょうか。
水の苦手なクライヴにとってこれは気を付けないといけません。
足を滑らせて海に落ちたりでもしたら大変です。
しかし、クライヴの水嫌いをレゼーヌが知らないとはいえ、何故ここに連れて来たのかと言うと……。
ドン
「!?」
何か背中に衝撃を感じたクライヴですが、それ以上は理解する間もなく、海へ落ちて行きます。
崖の上には二人しかいなかったので、クライヴが落ちていると言う事は……。
必然的にレゼーヌがクライヴを海へ落とした事になります。
ドボン!
クライヴの身体が海の中に入って行った音がしました。
レゼーヌは海を覗き込みます。
「クライヴーどうですかー驚きましたかーー?」
そろそろ浮いてくるだろうと思い、呼びかけます。
「…………。」
……海は静まり返ってます。
海へ落ちた人物が浮いてくる形跡なんてまったくありません。
「……もしかして……沈んでます!?」
ようやく気付いたレゼーヌは仕舞っていた翼を出し、海へ飛び込みました。
ドボン
海は見た目よりも随分と深い事が分かります。
元の姿を取っていると言うことで水の抵抗をまったく受けないレゼーヌはクライヴを探します。
落ちたままの格好で沈んで行ったのでしょう、クライヴの姿はすぐに見つかりました。
「…(いました……クライヴ、漂ってます。)…。」
海の底でも波の影響は少しですが受けていて、それに合わせてクライヴが揺らいでいるのです。
しかし、今はそんな事気にしている場合ではありません。
レゼーヌはクライヴを抱えて水面を目指しました。
ザバッ!
水面から勢いよく出て来たレゼーヌはすぐさまクライヴを砂浜に寝かせました。
翼を仕舞い、回復をかけます。
「クライヴ…私が背中を押したりしてしまった所為で……。」
かけられるだけの回復をかけてしまったので、後はクライヴが目を開けるのを待つだけです。
「…ん……ここは…。」
「クライヴ!……よかった……すみません、貴方の驚いた顔が見たいが為に海へ落としてしまって……。」
謝るレゼーヌですが、クライヴには今の状況すらまだはっきりとは掴めていません。
「……………。」
暫し考え中。
しかし、それはクライヴが怒っているものだと取ったレゼーヌの顔は蒼白になりました。
「すみません!! 貴方が泳げないなんて知らなかったのです!!
すぐに上がってくると思って、本当にすみません!!」
下を向いて声を張り上げて謝罪します。
十分考え、理解をしたクライヴは押されたことに自分がかわせなかった事が悪いと思いました。
「いや。……また…情けなところを見せてしまったな……。」
「そんな事ありません!……ぷ…ふふふ………。」
「どうした?」
急に笑い出したレゼーヌ。その理由は……。
「クライヴ…頭に…海藻が……ふふふ…。」
頭に手をやって海藻を摘まむクライヴ。
「…………。」
「くすくす…ふふふ……。」
お腹を抱えて笑いを堪えようとしているレゼーヌですが、おさまっていません。
「何時まで笑ってる…。」
「……ですが…さっき真顔で言ったのも海藻がのっかているまま言ったと思ったら…ふふ…笑いが…。」
「…………。」
残っている海藻を頭から取り、未だに笑っているレゼーヌを見ます。
「あ! それより宿へ戻りましょう。このままでは風邪をひいてしまいます。」
先ほどまで笑っていたと思ったらすぐに行動です。
「そうだな……。」
宿に戻って来た早々、クライヴはレゼーヌに洗面所へ追いやられました。
早く体を暖めないと本当に大変ですから……。」
そう言ってから少し沈黙……。
いったい何を考えているのかが分かったクライヴは先手を取りました。
「しなくていい。……入ってくる。」
そう言い残し、風呂場へ入っていきました。
何故分かったのかと、不思議そうに風呂場を見ているレゼーヌを背に。
あの時ならまだしも今言われたらいったい何をするか…冗談では済まなくなる
彼女にまったくその気がないと分かっていても……
心配してくれているのは分かるがそれよりも……その言葉の意味を理解してくれ
言ったはずだ、絶対にその言葉を言ってはならないと……忘れているのか……?
違うな、覚えているはずだ
それにしても……まさか海に突き落とされるとは思わなかったな
……だからとはいえ、沈むとは自分でも予想していなかった……
本能的に水が苦手だと言う事しか知らなかった
情けない……日光どころか、水にも駄目だとは……
こんなのが世界を救う勇者だと言うのだから聞いて呆れる
もうこれ以上彼女にはこんな姿は見せたくない……
せめて泳げる様にだけは……
………もう上がるか……
洗面所のドアが開き、クライヴが頭にタオルをのせて出て来ました。
「まだ頭拭いてないのですか?」
「……ああ、今から拭く。」
「でしたら、私に拭かせてください。こうなってしまったのは私の所為ですから。」
クライヴが断ろうとした時にはタオルはレゼーヌの手の中に。
そして何時の間にかクライヴは椅子に座らされていました。
「…………。」
クライヴの後ろに回り、わしゃわしゃと拭き始めます。
「痛かったら遠慮なく言って下さいね。」
「ああ……。」
こうなっては逃げられない、そう思いなすがままに……。
「……明日からまた移動か?」
「いいえ、明日からはここで待機してて下さい。今この地方には誰もいないので何かあった時の為に、
お願います。」
「……分かった。」
二人が話さなくなると、レゼーヌがクライヴの頭を拭く音だけが聞こえます。
わしゃわしゃわしゃ
ただ拭かれているだけのクライヴにとっては単調なリズムと言うものは眠気を誘うのです。
わしゃわしゃわしゃわしゃ
何時しかうとうとし始めたクライヴ、しかし拭いている方としてはまったく気付かないものです。
「終りました♪」
パッとタオルを取り、クライヴの顔を上から見るレゼーヌ。
クライヴは目を開けずにそのままいるのです。
「……寝てしまったのですか…?」
耳をクライヴの口に近づけてみると……。
「スー…スー…スー…。」
聞こえてきたのは規則正しい寝息でした。
「……どうやってベッドまで運びましょう……。」
このまま椅子に座らせたまま寝かせておいては起きた時にあちこちが痛いでしょう。
手に持っているタオルをテーブルに置き、クライヴを背負いました。
「……重いです……でも運ばないと………きっと疲れているのですね。」
身長から言って、レゼーヌが背負うとクライヴの足は床を引きずります。
それでも何とかしてベッドまで運ぶ事に成功しました。
「ふぅ……気持ちよさそうに眠っていますね。」
布団をかけ、クライヴの顔にかかっている髪を手で退かしました。
「おやすみなさい、クライヴ。……せめていい夢を。」
祝福をかけて去って行きました。
continue...
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(コメント)
if...NOVEL第一弾♪
自分の中では大体三分の一……と言うことは短くて二、長くて三になると……。
流石に本編では崖からは落とさないでしょうと言うことで番外編と言う形にしました。
溺れているクライヴは見たくないので、じゃあせめて沈むクライヴにしようと。
レゼーヌがクライヴに何を言おうとしたのか分からない方は想像してみてください(^^)
分かる方は……よく止めた、クライヴ! と思って頂けると嬉しいです。
……反対の人はいませんよね〜何故止めたクライヴ! と……。
初めての【もしも〜】だったので感想聞かせてもらえると嬉しいです♪
同盟のチャットで生まれた話なので同盟にお届け〜。
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