| もしも、レゼーヌとズィックの立場が逆だったら……≪ III ≫ |
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今宵は満月。雲一つない空に丸い月が淡い光を放っていた。 「♪〜〜〜。」 「……どうして分かった。」 何がどうしてなのかと言うと、酒場を出る直前にクライヴが思った事に対し、 「さあな。」 「それで済まされる事なのか。」 「……仕方ねえだろう?ただ何となく分かるってだけなんだからよ。」 「…………。」 「あ、そう言えば…。お前が分からなかった符号の答え教えてやるな♪」 「いらん。」 ズィックは分かっていた。クライヴが、自分では口にしたくないから分からないと言った事を。 「何でだ?分からなかったのは知っておいた方が良いぞ。」 「いらんと言っているだろう。」 しかし、そんな事を言われても、ズィックはお構い無しに答えを口にする。 「…お前がいらないと言っても俺は言うぞ。そうでないと気が済まないからな。《俺は闇の王子だ》《RABENLUFT LOVE》これがお前の分からなかった二つの答えだ。っておい、先に行くなよ!」 「…………。」 「お…見てみろよ上。月が綺麗だぜ。……今度は月見酒ってのも良いな♪」 手を頭の後ろへ持って行き、上を見上げそう言う。 「貴様、あれだけ飲んでおいてまだ酒の話をするのか。」 「話すだけならただだろう。それにしてもよ〜あのおっさんも懲りねえよな。」 「…………。」 二人はまた歩き出した。ズィックは相変わらず上を向いたままである。 「あのセーターってよ……おっさんが編んだんだろうな………………こえ〜。めっちゃ怖くねえか?」 同意を求めるかのようにクライヴの方を向き、返答を待つ。 「……考えたくもない。」 「考えてみろって。あのおっさんが王座に座って編み物してんだぜ… 今度は手を顎へ持って行き、考えるポーズを取る。と言う事は、自問自答だった。 「……出来たからああやって持って来たのだろう。」 「ま、そうだけどよ…。ああ…じゃあ、あれもそうか。あのお前の服に似たのもあのおっさんの手作りって事か…。それにしても服といい、マスコット人形といい、セーターといい…あまつさえ自分の顔の刺繍……見かけによらず器用だな。」 「そんな事で感心してどうする。」 「確かにそうだけどよ…。なあ、お前もなんか無いのか?」 ズィックは、話しの途中で微妙に話題を可笑しな方向へ変えるのが得意である。 「なんかとは何だ。」 「だからよ、見かけによらないような何か得意な事とか。」 「……マジックだな。」 あまりにも予想外の返答に、ズィックは反応が数秒遅れた。 「…………ってお前達のマジックってインチキなやつだよな。」 「ああ、だがここではマジックだ。」 ある程度自分なりの答えと言う物はあったが、確認の為聞く。 「ちょっと聞くけどな、そのマジックって誰から教わったんだ?」 「アーウィンだ。」 『やはり』と思う半面『ちょっと待て』と言う考えも…。 「…………お前さ、アンデッドどもを倒す術とかどうしたんだ?」 「教わった…ついでにな。」 「…ついで……。あ!!!」 「!?」 いきなり大きな声を出したズィックは、立ち止まり、荷物からある物を取り出した。 「もしかしてよ、これってお前とアーウィンか?」 出した物とは、一枚の写真だった。 「……貴様、これを何処で見つけた。」 「この前お前の部屋に行った時にお前の荷物に躓いて転がしちまってな、そこから出て来たのを思わず持って来ちまったと。…やっぱそれお前だったんだな…。く……はははははははははははは!!」 今日は良く笑うズィック。決して、箸が転がっても可笑しい年頃などではない。 「…………。」 静かに刀を抜き、斬りかかるがいともあっさりと避けられ、笑われ続ける。 「ははははははははは!シルクハットにひげまで付けて…はははははは…しかも笑ってるしよ!!何だってそんな写真まだ持ってんだよ。」 「…呪われているからだ。」 「……この写真がか?」 『呪』と聞き、笑うのを止めたズィック。 「…………。」 無言で頷くクライヴ。 「ふ〜〜〜〜〜ん。大切にしろよ♪」 最後に、にぱっと笑い、飛び立とうとするズィックをクライヴは、 「待て。」 と、思い切りズィックの羽を掴んだ。 ブチ 「ってーー!!」 クライヴの手の中には抜けた羽が数枚…。 「……済まない。」 「済まないじゃねえよ!いて〜。あのな、羽を抜く時はコツがあるんだぜ。 「まさか抜けるとは思わなくてな。」 「普通分かるだろう。飛び立とうとしている時に羽掴めば抜ける事ぐらい。いてぇ〜。」 本当に痛かったのだろう。ズィックは地べたに座り込み、羽が抜けた辺りをさすっている。 「で?何か用あるのか?」 痛みが引けたのを確かめてから立ち上がり、ちょいと不機嫌そうな顔を作って聞く。 「…あ、ああ。貴様ならこの呪いを解けるだろう。」 「呪いの度合いにもよるけどな。ところでよ、その写真にどんな呪いがかかってんだ?」 「…………。」 「分かんねえと解ける呪いも解けられねえぞ。」 「知らん。」 「……は?……知らんって……だったら捨てろよ。」 目を思い切り細め、片眉を上げて言う。 「捨てても戻ってくるから言っているのだ。」 「んなもん初耳だぜ。…呪いってそれだろう。 「…………なに?」 意味が分かってないクライヴ。そんなクライヴを見、大きな溜息と共に詳しく教える。 「だーかーらー。その写真にはただ持っていて欲しいって呪いがかかってるだけだって。俺が持ってても何も起きなかったのは俺が天使だからだろうな。」 「…………。」 「お前もしかしてさ、捨てると戻って来る他にも何か呪いがかかってると思ったのか?」 「…………。」 こくり。 「ま、戻って来るって呪いがかかってるからな、ずっと持ってるしかねえけどな。良い思い出だろう。」 どうやらズィックは、呪いを解こうと言う気は皆無らしい。 「良くない。これの所為で俺は…………。」 写真を握り締め、苦虫を噛締めたような顔で言う。 「あ? 何かあったのか?」 「……いや、良い。」 これ以上余計な事を言うと、昔の事を根掘り葉掘り聞かれそうなので、呪いの解除は諦める事にした。 「ふ〜ん……あっそ。じゃ、もう用ねえな。」 「ああ。」 あまり食い下がって来ないクライヴを面白くなさそうに見ながらも、帰る用意をした。 「じゃあな♪」 ばっさばっさと翼を羽ばたかせて戻って行く。 宿へ戻って来たクライヴは、その写真をテーブルの上に置き、自分は椅子に座った。 ……この時の出来事の所為で、俺がどれだけの思いをしたか…… Ende
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