テレホンショッピング?【U】




  暗いはずの闇の中に、明かりが見える。よく見れば数人の人影も見受けられる。
  「王よ…本当に、このようなことで王子をおびき出せるとお思いか?」
  心底疲れたような声で1人のヴァンパイアが目の前で偉そうに椅子に座る男に話しかける。
  「当然だ。ヤツは来る。絶対にな。」
  自信満々で王と呼ばれた男は答える。その姿は、露天で物を売っている商店主のそれで
  あった。
  「レイブンルフト様、スタンバイ出来ました!」
  「こっちもOKですぅ〜」
  そう、ここにいるのは、アンデットの王、レイブンルフトと、その僕達である。そして、
  レイブンルフトに“ヤツ”と呼ばれているのは天使の勇者にして、アンデットの王、
  レイブンルフトの血を引くクライヴ・セイングレントの事である。
  「良し。始めるぞ!」
  「「ハイッ!!」」
  軽快な音楽と共に今夜もまた、夢の中のテレビショッピングが始まる。
  『王よ…いくら王子が相手をしてくれないからと言って、これではあまりにも王が哀れです…』  
  心の中で、滝のような涙を零しながらブラスは楽しそうにセールスをするレイブンルフトを
  見つめていた。

  「さぁ、今夜も始まりました!レイブンルフト様のテレビショッピング!今晩も、この、
  ゾンビパウダーをご紹介したいと思いマスッ!」
  美しい女性の姿をしたサキュバスが楽しそうにTVカメラに向かって話しかける。
  「TVの前の貴方、殺したいほど憎い相手はいませんか?いない?そんなことは無いはず
  です。誰でも、1人や2人、殺したいほど憎いと思う相手はいるはずです。さぁ、胸に手を当
  ててよく考えてみて下さい。ホラ、浮かんできたでしょう?」
  軽快な調子でレイブンルフトは喋る。その様子は、すでに、“クライヴをおびき出す”と言
  う当初の目的を忘れ去っているようにも見受けられる。
  「確かに…でも、女性には無理ですよ。どんなに憎い相手でも、殺すなんて…力の差があり
  すぎです。」
  そんなレイブンルフトに合わせるようにサキュバスが相槌を入れる。そんなサキュバスの
  言葉を待ってましたとばかりにレイブンフルトは喋り出す。
  「そんな貴方にお勧めなのがコレ!ゾンビパウダーです。」
  そう言って、徐に小瓶を取り出す。中には、怪しい色をした粉末らしき物が入っている。
  「この中に入っている粉を、ほんの少し、憎い相手に飲ませるだけ。それだけで、貴方は
  憎い相手と永久におさらば出来るのです!」
  言って、その小瓶を振る。
  「何と、このゾンビパウダーは、飲んだ相手をゾンビ化させてしまうのです。ゾンビ化させて
  しまえばもう、こちらの物。ヴァンパイアハンターや、騎士、聖職者などを呼び、後は塵へと
  還してもらうだけ。貴方の手は一切汚れません!犯罪者にすらなりません。」
  「わぁ、それはすごいですね!でも、それだと自分もおそわれる可能性がありません?
  せっかく憎い相手が死んでくれるのに、自分まで死んでしまっては意味がないように思うん
  ですけど…?」
  不安そうにサキュバスが言う。そんな相手に笑いかけ、レイブンルフトはなおも言い募る。
  「その心配も有りません!このゾンビパウダーが効果を現すのは、飲ませた翌日の晩です。
  その間に、貴方は何処か遠くへと逃げることが出来ます。更に、もし、相手が旅に出る様
  ならば、相手の飲み水などに混ぜておけば安全性は倍増します。」
  「それなら、安心ですね!でも、お高いんでしょう?」
  一瞬、レイブンルフトの笑顔に見とれかけたサキュバスが、慌ててお決まりの文句を告げる。
  「いえいえ、ご心配なく。こんな素晴らしい薬がたったの500G!今なら更にこの、グール
  パウダーにオーガパウダー、更に更に、スケルトンパウダーもお付けしましょう!」
  そう、にこやかにレイブンルフトが言ったとたん、
 「そんな物付けんでも良いわぁっ!
 つか、売るなぁぁぁぁっ!!」

  スッパァァァァァァンッ!!!!
  と、凄まじい怒声と共に巨大ハリセンがレイブンルフトの後頭部を直撃した。
  「キャァァァァッ!」
  「オイ、カメラ、回すの止めろ!」
  にわかに周囲が騒がしくなる。そんな中で、レイブンルフトはハリセンの直撃を受けた後頭部
  をさすりながら立ち上がる。
  「久しぶりに会ったというのに随分な挨拶だな。息子よ。今のは痛かったぞ?」
  よく見れば、うっすらと瞳に涙が浮かんでいる。よほど痛かったのだろう。
  「誰が息子だ、誰が。」
  心底いやそうにクライヴが言う。その横ではセレスティナがゼイゼイと肩で息をしながら
  浮かんでいた。
  「それと、勘違いをしているようだから一応言っておく。今のは俺じゃなくて、セレスが
  やったことだ。」
  そう、ここに着くなり、いつものように何処からともなくハリセンを取り出した彼女は、
  思いっきりレイブンルフトの後頭部目掛けてそれを振るったのだ。彼女の息が上がっ
  ているのは、その時、肺活量の全てを使って叫んだからだった。
  「大体にして、何やってんのよ?こんな処で。」
  何とか呼吸が整ったらしく、セレスティナがもっともな質問をする。
  「決まっているだろう?お前をおびき出すためだ。」
  当然のことを聞くなとばかりに胸を張ってレイブンルフトが言い放つ。
  「ハタ迷惑なヤツ。」
  セレスティナがボソリと呟いた言葉にレイブンルフトが反応した。
  「天使よ、貴様に用は無い。さっさと帰れ。」
  「そーゆーワケにも行かないんだよ。大体にしてクライヴだけ置いて行く訳にいかないし。」
  そう言って、セレスティナはクライヴに抱き付く。
  「ええいっ、離れんかっ!クライヴ、お前もそんな凶暴な男か女かも分からないような天使
  の何処が良いというのだ!」
   ピキッ!
  その言葉に、セレスティナがキレかかる。その様子をいち早く察したクライヴは、宥めるか
  のように軽く髪を撫でる。その様子に全く気付かないレイブンルフトは更に言葉を続ける。
  「私と共に来い。息子よ。そんな凶暴な天使よりもずっとキレイで大人しい娘も大勢居る
  のだぞ?」
  「息子じゃないと言っているだろう?大体にして、何でわざわざおびき寄せようとしたんだ。」
  迷惑極まりないと言わんばかりの表情でクライヴが問う。すると、
  「暇だったからに決まっているだろう。」
  これまた、さも当然と言わんばかりの顔でレイブンルフトは答える。
  「じ…じゃぁ、今までの事件がアンデットばっかだったのは…」
  「当然、この薬のせいだ。」
   ピシッ!
  胸を張って答えるレイブンルフトに、2人は思わず凍り付く。それもそうだろう。
  今まで戦ってきた敵が、レイブンルフト自身の手によって、レイブンルフト自身の暇つぶしの為
  だけに生み出された者だったのだから。
  「へぇ、ほぉ、ふぅぅぅぅん………つまり私達は、アンタの暇つぶしに付き合わされていた
  だけなのね?」
  セレスティナの声が冷たい。今までも十分冷たかったが、今は、その倍以上の冷たさと、
  毒と棘とが含まれている。
  「そうなるな。」
  それに気付いて居るのか居ないのか。レイブンルフトはアッサリとそれを認めた。周囲に
  いたはずの僕達は、セレスティナのその声に身の危険を感じたのか、非情にもブラス1人
  を残しすでに逃げ出している。
  「ふぅぅぅぅぅん………そぉなんだ…………」
  ニッコリと笑いながらも目が笑っていない。その時になって、流石のレイブンルフトも身の
  危険を感じたが、時、すでに遅し。
  「ちょ…ちょっと待て…お前、その、手に持ってるのは……」
  セレスティナの手に、特大のハリセンが握られているのを見て、思いっきり引きつりまくっ
  た顔でじりじりと後ずさりをする。セレスティナの隣では、クライヴも刀を構えて居る。
  「ま……待て、話せば分かる。話せば。な?な?」
  「問答」
  「無用ッ!」
  ザシュッ!!
  バッシィィィィィィンッ!!
  「ウワァァァァァァァァァァァァァァ…………………………………」
  クライヴの剣とセレスティナの特大ハリセンによって、レイブンルフトはドップラー現象と
  供に、何処か遙か彼方へと飛んで行った。
  「王よ……だからお止め下さいと申し上げましたのに……(シクシク)」
  その場で見ていたブラスは滝のような涙を流しながら飛んでいったレイブンルフトの後を
  追っていった。

  こうして、一部の人間に多大なる迷惑をかけたナゾのアンデット大量発生事件は解決された
  のだった。

  <おまけ>
  遙か彼方へと飛ばされたレイブンルフトがその後、どうなったかと言うと…
  「待っていろ、息子よ。私は必ずお前をこちら側に引き込んでみせるからな!さて、今度は
  どんな手を使おう…?」
  「王よ…おびき寄せ作戦はもうお止め下さい……(シクシクシクシク)」
  ちっとも懲りてなかったようで、また、新たなるおびき寄せ作戦を考えていた。


  END








  (コメント)

 パパ様、結局格好良く書けなかった…所詮、私の実力なんてこんな物…。
 本当は、もう少しまとも(?)だったんですが…ハリセンがいけなかったらしい…何処から取 
 り出したんだろう。特大ハリセンなんて……(爆)
 くだらないですね。ハイ。終わり方もいまいちですし。でも、書いててすごく楽しかったです。
 営業用スマイルを浮かべてセールスするパパ様…想像すると、なんか、
 可愛いカモです。(爆)
 では。いきなりこんなの送ったりしてすいませんです。
 また、お喋りしてやって下さいね。
                 


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