Looking for...≪後編≫


 その事件から、3日が経過した。久々の自由な身に、彼はゆっくりする事に した。
 例の事件が済んで、早々にラビエルは天界に戻った。
 結局彼女の言葉の意味がわからないが、それも既に忘れかけていた。
 夜に目覚め、寝室から出る。ドアを開いて外の空気を吸う。珍しく散歩をする気になって、
 目の前の並木道まで歩いた時、1本の老木の側で俯く人物を 見つけた。
  「あれは…。」
 そこまでやって来て、間近で相手を見て声をかけるのを一瞬ためらった。
 彼がためらうくらい、彼女の…ラビエルの姿はいつもと違っていた。
  「その格好は、どうしたんだ?」
  「クライヴ…。」
 活気のない顔で、彼女が彼を見た。その顔はとても落ち込んだような、悲しそうな顔色で。
 ラビエルの服にはあちこち小枝がついていて、腕や足には擦り傷が出来ていた。

 そして数日前負傷した翼の辺りに、今にも外れそうな包帯が見える。

 そんな姿も気にせず、天使は言った。
  「あの日、どうやら落としてしまったんです…。」
  「落とした?何をだ?」
  「もうすぐと思って、ずっと持ち歩いていたばかりに…。」
  「何か大事な物なのか?」
 肩にかけていた鞄を開いて、クライヴの上着が出てきた。気付いた彼は、それを受け取る。
  「貸して下さったこれと、一緒に渡すつもりだったんです…。」
 今にもラビエルの顔は、泣きそうだった。
  「多分、あの魔物がいた時に、破れた服…ポケットがあったんですが…そこか
   ら落ちたのだと思います。」
 未だに何をなくしたのか言わないラビエルに、困惑したように彼が問う。
  「俺の上着と渡すつもりだったとは、俺に何か関係のある物なのか?」
  「今日…渡したかったのに。肝心な日にそれがないなんて…。」
 俯いたままの髪に、小枝が絡まっている。それを取りながら、彼はラビエルの格好に
 合点が行くのか、確信したように尋ねた。 
  「まさか、それを探すために…。あの森を駆け回ったのか?」
 彼女のボロボロの姿が、それを肯定するように物語っていた。
  「バカな…いくら事件が解決したからといって、辺境の場所だぞ。一人であんな所
   に行くなんて…。そして何故そんなに、今日にこだわる??」
  「あの日貴方に…もうすぐ分かります、と言ったのに…。誕生日のプレゼントを、なくすなんて…」 
  「何…。」
  3日前の彼女の言葉が甦る。もうすぐ何かがあるといいかけた彼女の言葉。
  「今日は貴方の誕生日です、クライヴ。なのに…プレゼントをなくしてしまって…。
  ずっと探したのですが…見当たらないんです。」
 大きな溜息を漏らし、途切れそうな声で彼女は言った。その姿を見ながら、
 彼女の言った台詞を頭の中で繰り返した。

  ―― 俺の、誕生日…。

  「日も暮れて、暗くて見えないので諦めてここまで来たのですが…でも。手ぶらで貴方を
  訪ねるのも気が引けて、ここで途方にくれてたんです。」
 ぽん、と軽く頭に触れられる。驚いて見上げると、いつも通りの表情のクライヴがいる。
  「羽を、隠してくれるか?」
  「え…あっ?…」
 温かい彼の腕は、ゆっくりラビエルの体を包む。ふわりとラビエルは、彼の胸元に抱えられた。
  「クライヴ??」
  「宿屋に戻る。その傷の手当てが必要だろう?…天使の姿は、他人に見られては困るのだろう?
  窮屈だろうが、羽を隠してしばらく我慢してくれ。」
  「…はい。」
 大人しく、彼の言う通りに羽を閉まって人の姿になる。無言で進むクライヴの顔を見た。
  「3日前から言っていたのは、誕生日の事だったんだな。」
 暗がりの中、静かな声で言った。
  「…言われるまで、気が付かなかった。」
  「えぇ!?誕生日を忘れていたのですか!?私はてっきり、あの日に何となく
  分かったのではないかと…。」
  「いや。ラビエルが何を言っているのか、全くわからなかった。」
  「そ、そうなんですか?…」
  「ここの所、誕生日がどうとか、側で言う奴はずっと居なかったからな。」
  「あ…。ごめんなさい。」
 過去の背景が複雑である彼を思い出して、ラビエルが謝った。
  「気にしなくていい。それより、やっといつもの君に戻ったな。」
  「はい?」
  「会った時…泣き出すのかと、思った。」
  「!!」
 図星なだけに、言葉を返せない。そんな彼女を見て、一瞬だがわずかにクライヴが笑った。
  「…ありがとう、ラビエル。」
  「そ、そんな…。プレゼントをなくした上に、お祝いも出来ないのに…」
  「祝ってもらった。」
  「え?」
  「君が、今日来てくれた。…こんなにまで懸命になって。」
  「クライヴ。…来年は。」
  「来年?」
  「来年はお祝いを、しましょうね。」
 こくん、と頷いた彼を見届けて安心したように、ラビエルが体を預けた。
 夜空は澄んでいて、彼らの周りに星が降り注いだ。


-END-




 (NO.38 あるぐれ 様からのコメント)


  …やりすぎましたでしょうかね。(汗)
  うちのラビエルさんはドジなんです。
  そしてクライヴは優しい人です。別人!?
  うちのSSは毛色が違って何だか…
  ともあれ、おめでとうクライヴ!!(退散)
                            


Looking for...≪前編≫へ クライヴ誕生日企画室へ