漢詩(ohba)
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大峡先輩とは、入社以来職場もすぐ近くで、アンプの設計など技術の講義を受けたこともあり、古くからの顔見知りでした。 1968年のこと、アメリカの衛星通信会社コムサットの大きなプロジェクトで、大峡先輩は総合工事長、私はメイン州アンドーバー局の工事長、(他に現場が4局あり大峡先輩はウエストバージニア州エタム局の工事長も兼ねていた)という立場で、運命的なおつき合いが始まりました。
今にして多少オーバーな表現をすれば、NHKスペシャルの「プロジェクト X」から取材があってもいいくらいな、関係者悲喜こもごもの青春をかけた一大イベントでした。
先年何十年ぶりかで関係者有志が集まったときも、瞬間的に当時にタイムスリップし、いろいろな出来事が頭の中と瞼の裏を駆け巡りました。
大峡先輩とは、その後ずうーっといろいろなところで遭遇するたび、時節のあいさつと近況の報告を交わすくらいでしたが、なにかのひょうしに私が墨絵を描いていて展覧会にも出していることがわかり、以来展覧会のたびに見に行っていただくようになりました。
その内、一度ゆっくり話そうということになり、時間を見つけて職場を表敬訪問しました。 その時、近々カミさんを連れて銀婚記念に、出張以来25年ぶりにアメリカ大陸に上陸しますといって、昔話をしたものでした。
そのすぐ後「渡したいものがあるから、ちょっと来てくれ。」と連絡があり、出かけていきました。 その時頂戴したのが「祝足立氏銀婚」と題した七言絶句でした。
さらに、その後私が定年退職した年「祝還暦」の漢詩が直筆でしたためられて届いたのです。
(ここの読み下しは横書きとなります) 足下の泉流七海に連ねんと 立望すれば天地の景無辺なり 征風萬里双飛の翼 一路青山あり二五年 (大峡さんの秘書の方がワープロで作ってくれた) |
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(ここの読み下しも横書きです) 足跡明明たり竹帛の功 立てし三千の志悉く終わり佳し 征帆萬里華甲を迎え 一世栄栄たり好夢の中 (大峡さんの揮毫によるもの) |
銀婚の漢詩を頂戴したとき、カミさんから「“双飛”というのは“仲のよい夫婦”という意味だ。唐詩選にも出ている。」と教えられたことを大峡先輩に伝えたところ、「そうか、そこまでわかったか。」といたく喜んで頂きました。
還暦の詩にある、竹帛というのは“歴史が書いてある書物”のことだそうで、私の足跡が歴史書にも載るほど、というとんでもない意味となります。 竹も布(帛)も繊維が紙の原料になりますので、紙=書物となるわけです。 コミックなどは書物ではなく、中国で書物といえば四書五経を代表とする代々の文化遺産のことになるのでしょう。
“三千”というのは、私が3000もの志を立て、すべて成功させてきたことの数をいっているわけですが、これまたとんでもないことで、李白の「白髪三千丈」の表現の通り、漢詩作りのルール上で「三千」にしないと平仄が整わないということがわかりました。
このようなことがあって、最近「漢詩」に大変興味がわき、まずは「唐詩選」あたりから読み始めてみようかと思うようになりました。
とはいうものの、さすが中国4千年の歴史で、一つ一つにとてつもない重みを感じるのではないかと思います。 ぼちぼちとあせらず楽しんでみようと思います。
再見!
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