〜会報によせて〜

「ホスピス運動に『死への準備教育』を生かす」 
原口 勝 会長


 「ホスピスとはどういうものですか?」「大分県にはまだホスピスがないんですが、ホスピスのような関わりをしてくれる先生や病院を紹介して下さい」平成9年まではこういう声が会に多く寄せられました。そこで平成9年11月からホスピス分科会「ホスピスケアを学ぶ会」を定例会とは別 に月に一回開催しました。その企画は
(1)実際にホスピスや緩和ケア病棟で働いている県外の医療者に講演してもらう 
(2)ターミナルケアに関する書籍やビデオで学ぶ 
(3)末期癌患者とよい関わりをしている県内の医療者を推薦してもらい話を聴く 
(4)末期癌のご家族を看取られた方の体験を聴く 
(5)ホスピスを見学する 
 というものでした。この分科会は平成11年3月まで続け、以後は月一回の定例会の中でホスピスケアに関する講演会を企画しました。  
 末期癌患者さんとよい関わりをしている県内の医療者としてお招きした藤富豊先生、田畑正久先生、佐藤俊介先生が発起人となり平成12年11月に「大分県緩和ケア研究会」が発足しました。県内の医療者が集い、よりよい終末期医療を研修する場ができたことは画期的なことでした。さらに佐藤俊介先生が平成13年11月に大分ゆふみ病院を開院され、ホスピスケアの実践の場ができました。患者として入院できるだけでなく、医療者が研修できる場として大変価値あることです。  
  「大分県緩和ケア研究会」では、末期癌患者の種々な苦痛の中でも主に身体的苦痛の緩和を主題に講演・発表が行われていますが、やがて精神的サポートの内容も増えてくると思います。いずれ大分県内のどこの医療機関でも癌の終末期にホスピスのような心と技が施されるようになることと期待されます。 
 死を前にした方々は、身体的苦痛に対する恐れ、愛する家族との別離の悲しみ、残される家族に対する心配、一人旅立つことの孤独に対する不安、自己自身の消滅への不安、人生を不完全のまま終えることへの不満、体験したことのない未知なるものを前にしての不安、死後の審判や罰に関する不安、など様々な不安を持たれています。(『死と向き合う瞬間』高木慶子著より引用)しかし医療者として力が及ぶのは、身体的苦痛の緩和や一部の社会的・経済的問題の援助、本人・家族への慰めであり、不安を十分に和らげらることはできません。
 
 それらの不安を和らげるには患者になる立場での準備が必要なようです。家庭の中で日頃から「自分が病気になったり死を迎える時にはどうしてほしい」ということを話し合い、よい家族関係を保チておく。「死んだらどうなるのか?」「自分は過去にこういうことを行チてきたけど許してもらえるのだろうか?」「自分の生き方はこれでよかチたのだろうか?」など生と死の問題を常日頃から機会を作チて考えておく。これらの答えは個々で異なり模範解答はありませんが、共に考えをめぐらし慰めることは患者の家族・友人だけでなく、医療者にも望まれることです。 
 当会の役割は死への準備教育をホスピス運動に生かすことだと考えています。今後ともご支援をお願い致します。