オペラ「トリスタンとイゾルデ」第2幕第2場より 

<夜の歌>

      

O sink hernieder, Nacht der Liebe,
gib Vergessen, daβ ich lebe;
nimm mich auf in deinen Schoβ,
lose von der Welt mich los!
Verloschen nun die letzte Leuchte;
was wir dachten, was uns deuchte;
all Gedenken, all Gemahnen,
heil'ger Dammrung hehres Ahnen
loscht des Wahnens Graus  
welterlosend aus.
Barg im Busen uns sich die Sonne,
leuchten lachend Sterne der Wonne.
Von deinem Zauber sanft umsponnen,
vor deinen Augen suβ zerronnen;
Herz an Herz dir, Mund an Mund;
eines Atems ein'ger Bund;
bricht mein Blick sich wonnerblindet,
erbleicht die Welt mit ihrem Blenden: 
die uns der Tag trugend erhellt,
zu tauschendem Wahn entgegengestellt,
selbst dann bin ich die Welt:
wonnehehrstes Weben,
liebeheiligstes Leben,
Nie-wieder-Erwachens
wahnlos holdbewuβter Wunsch.


[歌詞:Richard Wagner(1813-1883)]
  おお 降りて来るがいい 愛の夜よ
  私に生きることを忘れさせておくれ
  おまえの懐に私を抱き上げ
  私をこの世から解き放っておくれ!
  今や最後の明かりも消えてしまった
  私達が考えたこと 私達が思ったこと
  すべての考え、すべての思い
  聖なる黄昏の気高い予感が
  恐ろしい妄想を消し去り
  この世から解き放ってくれる
  太陽は 胸のうちに隠れ、
  歓喜の星は 輝き微笑む
  あなたの魅力に優しくつつまれ
  あなたの眼差しに甘く溶け
  胸と胸、口と口を重ねて
  ひとつの息に心かよわせ
  歓びに光をさえぎられ 何も見えず
  幻惑に満たされたこの世は色あせる
  昼が私達を欺いてこの世を照らし
  いつわりの妄想に対峙するとき
  その時、私こそが世界であり
  いとも気高い歓びに高鳴り
  かくも至上なる愛に生きる
  二度と目覚めないことこそ
  妄想のない胸に宿る優しき望み


        (日本語訳:み〜)

オペラ「トリスタンとイゾルデ」第2幕第2場
マルケ王の城にあるイゾルデの館の庭で人目を忍んで逢瀬を重ねる二人が
一緒に歌いながら愛の世界に陶酔している場面です。
ドラマの第8話、死の危険から逃れた「ユーリと理得」がお互いの中に生を見出し
総てから解き放たれたように過ごしたであろう幻の「愛の夜」を連想しました。


ちなみにドイツ語はウムラウトを外してありますのでご了承ください。