第4話 一人でお留守番(平成5年11月19日〜21日)

 かあさんと父さんには子供がいないので2人で合唱にハマッています。2人が所属している合唱団は岐阜県のアマチュアの一般合唱団で、その頃は毎年のように全国大会に出場していました。その年は大阪のフェスティバルホールで全国大会が開催されることに。かあさんはボクを2晩も一人っきりにするのは心配だったけれど、例の猫の育児書に「2泊までなら猫はイイ子で留守番できます!」と書いてあったので、思い切ってボクに留守番をさせることにしました。

早速ホームセンターでプラスチック製のトイレ2個とプラスチック製の餌入れ3個を買ってきました。勿論、トイレの砂とドライの餌もね。猫用のトイレの紙砂はよく出来ていて濡れると固まるんです。固まりは燃えるゴミとして出せるし消臭効果もあるしね。プラスチック製トイレにまず新聞を敷いて、さらにその上にペット用トイレシーツ(つまり紙おむつのデカイの)を張り付け、その中にトイレの紙砂を深さ5pくらい敷き詰めてもらうととっても気持ちいいんだ。おっとトイレの話じゃなかったね。どこまで話したっけ。そうそう、かあさんはボクの留守番の用意がととのうとアタフタと大阪へ出かけて行きました。その時食卓の上に近所の手作りパン屋さんで買った2色パン(カスタード&アンコ)を忘れて行きました。

コンクールの結果ですか?
かあさん達の合唱団はモンテヴェルディというイタリアの作曲家のマドリガーレ「愛する女の墓に流す恋人の涙」という曲を歌って金賞だったそうです。順位としては2位でしたが次の年の全国大会へも出場できるシード権ももらったそうです。ア〜アッ、また来年もお留守番なのね。お父さんはその頃東京の合唱団にも入っていて翌日がコンクールの出番でしたので、かあさんは翌日も大阪に残ってお父さんの合唱団(実はかあさんも独身の頃その合唱団にいたんだって)の演奏を聴きました。曲は細川俊夫さんの「アヴェ・マリア」でした。結果は見事1位の金賞! かあさんは曲の途中で「洞窟の中で波が打ち寄せるような音が聞こえた」と言ってました。母なる胎内の音?

2人は打ち上げに出た後、ボクの事が心配だったので、新幹線で急いで帰って来ました。玄関のドアを開けてかあさんはまずボクを呼びました。「ケン太、ケン太!」。いつもは迎えに出てくるボクの姿が見えません。そのかわり暗がりのテーブルの上と床のカーペットの上に黒い固まりが・・・。かあさんは一瞬友達の猫の話を思い出しました。その子は気に入らないと所構わずソソウをするのです。かあさんの胸はドキドキ。<あ〜やってしまった!>。でも電気をつけてよーく見ると、なんとアンコの固まりではありませんか。テーブルの上にあったパンをボクが食べたんだよう。「美味しかったよ、カスタードクリーム! でもアンコはチョットね。」と鳴きながらボクはお迎えに出ていきました。本当は・・・ウワァーン、寂しかったよう!

写真はベランダから公園で遊ぶ子供を見ているボクです。肩が・・・。