ファンタジー小説革命

ゴッド・オブ・ソード

――― 第1章 「食欲編」 ―――
《 前回までのあらすじ 》

 アスパが倒した1匹目の悪魔の名前が、『ベンジャミン』であることが判明した!
 …が、まぁ、そんなことはどーでもよかった。
 そして、お次の相手は紳士的なものごしの悪魔『ビェネッタ』!!
 そろそろエクソシスト・キシリィの出番か…!?



 第9話 魔法絶縁状態!


 「ワタシの名は、ビェネッタ。 さぁ、始めましょうか――…」

悪魔の両腕が、弧を描くように開かれた。
その動きを警戒し、瞬時にアスパたちも戦闘態勢に入る…!
―――が、次の瞬間!

 しゅるるるるっ

 「うげっ!!」

アスパが悲痛なうめき声を上げた。
なんと、彼の足元から黒く細長い物体が飛び出し、体に巻きついて一瞬で拘束したのだ!
それが、地中をもぐりアスパの足元の地面を突き破って現れた悪魔の尻尾だと理解したのは、彼の思考回路が3秒ほど巡った後だった。
さらに次の瞬間、巻きついた尻尾が赤褐色に発光し、アスパの体に電流が駆け抜けるような衝撃が走った!

 「何じゃコリャ―――ッ!!? あいてててててて! いてえよ、バカ…!!」

激しく五体を震わせて、アスパは激痛に悶絶した。
            ホーリーエッジ
 「秘密技 その二、聖刀断!」


とっさの判断で、キシリィが技を出した。
キシリィの右の二の腕から指先までが白い炎のような闘気につつまれ、燃える手刀となって地面から出た悪魔の尻尾を一刀する!

 ズバッ!

…ってかんじの鋭い音とともに、尻尾が切断された。
途端に尻尾の力が失われ、アスパは魔のムチの束縛から解放されて、その場にひざをつく。

 「あ…ありがとよ、キシリィ! 助かったぜ…! そして、今の技名 29点……」
 「……29点…って……」

礼を言いながらも、いらんことを口にするアスパだった。
内心「助けなきゃよかった」と、キシリィは思う。

 「ホゥ。 瞬時に私の尻尾を切断するとは、ますます おやりになりますな、お若い方。
  …しかし、すでに 『呪い』 は、かけさせて頂きましたぞ」

尻尾を切られたことなど、痛くもかゆくもない様子で悪魔は言った。

 「…の…呪い……だと…?!」

 「おれだって、まだ若いぞ」と、思いながらアスパは『呪い』という言葉に反応した。

 「そう、呪いです…。 かけられた者は、魔法が使えなくなるという不思議な呪いですよ…」
 「魔法が使えなくなるゥ…!?」
 「ええ。 どうやらアナタは、魔法がお得意のようだから…封じさせて頂いたのです。 ごらんなさい、自分の体を」
 「んへ?」

悪魔に言われるままに、アスパは自分の体を見た。
…確かに、変化はあった。
いつのまにか、両手の甲に奇妙な模様が浮き出ていた。

 「げぇ…! 手になんか浮き出てる!?」
 「額にも…!」

町長が、額にも同様の模様があることに気づいて告げた。

 「衣服で隠れていて見えないが、両腕の肘、両足のひざ、そして胸と背中ににも1つずつ…それがついているハズですよ」
 「…てて、てんめぇえ〜っ!! 人の体にへんな模様つけやがって…!! 消せ! こんなんじゃ、恥ずかしくて銭湯にも行けんわ!!」

本気で怒ってわめくアスパだったが、敵である悪魔が模様を消してくれるわけもなく、アスパはよけい発狂した。
一方その頃、その後ろでは、キシリィと町長が「怒るべき点がちがうんじゃ……」と、話し合っていた。

 「もうゆるさん! ゆるさんぞ!! 貴様は跡形も残らんほど焼き尽くしてやるからな…!!」

完全に頭に血が上ったアスパは、「魔法を封じた」と言われたばかりにもかかわらず魔法を放つ体勢に入った!
足を大地に踏ん張り、両手をビェネッタの方向にかざし、呪文を唱える!

 「マジホンキ・マジホンキ・マジホンキ? ニッポン全国・マジ本気? エ? まじまじほんき? まじほんき?
 マジまじマジまじ MAJI−HONKI? ハイッ!」

ワケわからん呪文が唱えられると、大気が揺れはじめ、アスパの両手に見えない何かが集結しはじめた…!
その異変を、キシリィが敏感に察知した。

 「…水素と酸素が集まってる…!!?   やばい! 町長さん、伏せてッ…!!」

彼が言うには、空気中の可燃性のある気体である水素と酸素がアスパの両手に集結しつつあるらしい…。
すげーな。
なんでわかんだよ、そんなコト。
いや、それより、たしか水素と酸素が化学反応を起こすと爆発して水ができるんだっけ。
…てことは、これは爆発系の魔法か!?
そうなのか、アスパよ!!
危険なムードが辺りを支配するなか、アスパは魔法を発動させた!

   はじ                H2・エクスプロージョン
 「弾け飛びやがれ! 水素爆発波ッ!!」

かけごえとともに、大爆発が巻き起こる!……かと思いきや、何も起こらなかった…。

 「…んな?! アレ?」

予想外のことに、アスパは我を忘れた。

 「バカな! おれの手の先で水素爆発が起きて、悪魔めがけて爆発の衝撃波が追撃するハズなのに……?!!」

…我を忘れているわりには、事態を冷静に説明していた。

 「言ったでしょう? アナタの魔法は封じたと…」

ビェネッタが言った。

 「くっ! ハッタリじゃなかったんか!?」
 「失礼なコトを言う御仁だ。 私の呪いをハッタリなどと…。 ならば、説明してさし上げましょう。 アナタは今、私の呪いの力によって魔力を絶縁された状態にあるのです」
 「ゼツエン? 魔力を…? どーいうこった!?」

チョットむずかしそうな話になったので、アスパはいやな顔をした。
…が、ビェネッタは容赦なくうんちくをはじめた。

 「魔法とは、体内の魔力を体中に駆けめぐらせ、発生・蓄積されたエネルギーを一気に放出させて発動させるものです。 しかし、今のあなたの身体は呪いによって魔力を通さない性質に変わっている。 したがって、魔力を身体に疾走させて超自然的エネルギーを発生させることができない。 つまり、魔法が使えないのです」

 「………!!」

電流を流さない絶縁体のように、アスパの身体は魔力の流動を禁じられた状態になってしまったらしい。
…なにやらゴチャゴチャした説明が続いたが、とにかくアスパお得意の魔法は、悪魔の呪いによって封じられたらしい。

 「魔力の流れない体では、魔法は使えない。 せっかく空気中の水素と酸素を手先に集めても、発火させる火打ち石の役割を果たすはずの魔力を放出できなければ、意味はないのですよ」

さらに説明くさいセリフを言うと、ビェネッタは、ひとさし指をアスパに向けた。

 「アスパ! あぶない! 伏せろォオッ!!」
 「もう、おそいですよ!」

キシリィの叫び声とビェネッタの笑い混じりの声が、ほぼ同時に聞こえたかとおもうと、次の瞬間、アスパは爆炎につつまれていた…。


                      つづけ!



<次回予告!>

 なんてこった!
 “剣を極めし者”を自称するくせに魔法が専売特許のアスパは、魔法を封じられた上に水素爆発をモロに……!
 こいつぁヤベーぜ! 銭形のとっつぁん!!
 とっつぁー――ん!!

――― 次回 ゴッド・オブ・ソード ―――

第10話 「絶叫フルスロットル」




御伽の間にけえる